人生は10段変速の自転車みたいなもの

人生は10段変速の自転車みたいなもの

2012/03/30
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カテゴリ: 読書

久々に村上春樹を読み返しました。これまでに一番引っ掛かりのあった作品です。どのページを見ても村上春樹作品であることは間違いないのですが、釈然としない作品の一つでした。



本は読む時期、読者の精神的な背景で受取り方がずいぶん違うものだと思いました。この話は後にして先ずは簡単に内容紹介から。。。
ネタがバレバレですからご注意を!

wonderland 街の地図(世界の終わり)

内容は「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」に分かれており、この2つの物語が章ごとに交互に進行する、いつもながらの村上流の構成。

「世界の終り」の物語は世界の終わりであるワンダーランドに入る主人公の話。ここは一角獣の住む越えることの出来ない壁で囲まれた街。ここの住人は影を切り落として心をなくした人々。影が切り離されても、影の生きているうちは心がある。やがて影は死に心がなくなる。過去の記憶は影の方が持っており、本人は殆ど記憶は失っている。主人公もこの街に来て、影を切り落とし心を失ってゆくひとり。そこの住人は「心を捨てれば安らぎがやってくる」と言う。心がなくなれば争いも何の欲望も存在しない。誰も傷つかないし、誰も傷つけない。勝利もなく、敗北もない。ここは心をなくした人々だけが淡々と暮らす街である。ここで主人公の葛藤が、影の死ぬ寸前まで続き結末を迎える。

「ハードボイルド・ワンダーランド」の方はよりSF活劇的で暗号を取り扱う「計算士」として活躍する男が主人公。「計算士」とは潜在意識を利用した暗号化(シャフリング)を実施する特殊技能を持つ職業である。「計算士」の組織とそれに敵対する「記号士」組織があり、さらに「記号士」と手を組む「やみくろ」と呼ばれる東京の地下に巨大な巣を持つ生物群が登場する。ある時、主人公はこの暗号化を開発した老博士から依頼を受けたことをきっかけに「計算士」と「記号士」の両組織から追われることになる。さらに、シャフリングを実行するに当たり、主人公の脳には装置が組み込まれており、老博士から20数時間後に回路が切り替わり、すべての思考が潜在意識に閉じ込められてしまうと知らされる。これは現在の表層にある意識が切断されることで、死んだと同然の状態となることである。そして、主人公は双方の敵から逃れながら最後の時を迎える。

この様に平行して2つの物語が進みますが、「ハードボイルド」の結末が、「世界の終わり」の始まりに繋がることが容易に分かります。即ち「ハードボイルド」の主人公の頭の中の回路が切り替わり、何故か閉ざされた街「世界の終わり」に辿りついたと考えられます。個人的には「世界の終わり」だけの長編にした方がシンプルに纏まったものになったと思います。

村上春樹さんの作品は多分に読者の判断に結末を任せるものが多いので、受け取り方は様々で好きな人が自分の解釈で好きに読めばよいと思っております。しかし、読み返してこれだけ印象が違った小説は初めてです。それだけに、以前は何故面白いと思わなかったのだろうかと考えてみました。たぶん自分の精神状態の違いが受取り方を変えたのだと思いました。

10数年前は仕事に追われ、子供にも手が掛かり、やらなければならないことは山積み。後先考えずに何事にも頑張ってました。そのような状態では単に非現実的で最後もスカッとしない、もやもやしたピンとこない作品に思えました。

今は個人的な話になりますが、退職を間近に向かえ、一通り責任を果たしたような安堵感と、第二の人生に対する不安が入り混じった心境です。自分の人生の中ではモチベーションの波がとても低い状態にありますが、再出発に備えての充電時期と考えております。

この物語は「心」を題材にしたものであり、自分の気持ちや心を見つめ直すヒントになりました。心がなくなれば悲しみもないかわりに喜びもない。物事に意味も求めず、争いもなく、ただ平和な人生が送れる。しかし、これでは「安らぎ」の代償に目的も辿りつくところもなく生きている甲斐が無いですね。

それに気が付いた時「世界の終り」の主人公の最後の決断に何か光のようなものを見ることができました。そうです。いつまでも何か目的を持って、泣いたり笑ったり「心」を失わずに生きてゆきたいと思います。安住の地よりは人生の旅を続けたいと思います。

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Last updated  2012/03/31 02:01:59 AM
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