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2006年01月30日
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私のブログもなんだかにぎやかになってきて

すごく楽しくなってきました。

やっぱり続けてみるのが一番のようですね。

最近は、ブログの更新するためにまた本を読み漁っています。

で、また教育ものですが、書いてみたいと思います。

昨日の続きで 竹千代 が武道稽古で 奥山伝心 から大将の心得を
教えられる場面です。





(短気で困る....)と思うと、きびしい反省を見せたり、怒るかと思うと少しも怒らなかったり....

ついこの間も、庵の向こうの菜畑で蝶を追いかけている 竹千代 を、今川家の家士の子供たちが大ぜい寄ってたかって罵っていた。

「....三河のやどなし、性度なし、菜っ葉にそまっておお臭い」

声をそろえてはやし立てるのをまるで相手にしなかった。とぼけた表情で振り返って、ニヤリと笑って見せるだけ。それは堪忍(かんにん)している顔ではなく、本当の阿呆に見えた。

雪斎 長老は見どころありといわれるし、 奥山伝心 はおもしろいという。が、祖母の身にしてみると何もかもが物足りない。

「よろしい。今度は野駆けじゃ」

と、突然 伝心 が立ち上がった。どうやら打ち込み五百回の練習は終わったらしい。

「竹千代の体は胴が長すぎる。人間は自分の体くらい自分で作らねば相成らぬ。ケチな体にはケチな根性しか宿らぬもの。さあついて来なされ安部川べりまでじゃ」

伝心 竹千代 に続いて駆け出そうとするお側の少年たちを手で制して、自分ひとりで 竹千代 の後から門を出た。

門を出ると何の遠慮もなくさっさと 竹千代 を追い抜いて、
「安部川の味方あやうし、急げや急げ」


竹千代 はこれも慣れたものだった。
相手がどのように早く走ろうと自分自身の歩速はみださない。
もし途中で落伍したりへばったりすると、
「....それが大将か」と、罵られるのをよく知っている。

「遅いのう、もうちっと速く走れぬか」

「.....」

「それでは味方は皆殺しになるであろう。股(もも)を高く上げて、大きく手を振って、それっ、もちっと速く」

ぴゅっと駆け抜けては、そこで足踏みしながら、 伝心 はあれこれと 竹千代 にからかいかける。

だか、 竹千代 はへの字に口を結んだままで、 伝心 の顔も見ようとしないのである。
上石町から梅屋町の通りをぬけ、川辺村へかかるころから、 竹千代 の顔には蒼さが加わる。
うっかり口を開いて話してゆくと疲労は彼の足を止める。一度とまると、もう股もこむらも鉛がつまったようになって動かなくなってゆく。

「それッ、今少しじゃ、早く!」

竹千代 は「くそっ!」と心で叫んだが、足だけは依然として同じ歩幅、同じ歩速でかけてゆく。
ついに春の川面が見え出した。そこここにまだ桃や桜が咲き残っていて、その間を、菜の花の黄色があざやかに綴(つづ)っていた。

川原へ出ても 伝心 は足をゆるめなかった。

「やあやあ、遠からんものは音にも聞け、近くば寄って眼にも見よ。我こそは海道にその人ありと知られたる松平は名乗りは無しの竹千代なり」

いいながらこらえにこらえて走ってくる竹千代を振り返って、
「それッ、敵将は竹千代の姿を見つけてざんぶと川に馬を乗り入れた。追えや追えや....といってもこちらは馬ではない。それッ!」

竹千代 の疲労が極度に達していると知って、 伝心 はパッと着物をその場に脱ぎ捨てた。

「それ、おぬしも早く脱ぐがよい。敵将を逸しては相ならぬ。今じゃ!今が竹千代の運命を決するときじゃ、それッ」

伝心は川辺で足踏みしだした 竹千代 の着物を、むしり取るようにして脱がせてゆく。
「敵....敵....敵将はだれだ!」

たまらなくなって 竹千代 ははじめていった。丸い胸が波のようにゆれ、心臓の音がそのまま聞こえて来そうであった。

「何という貧弱な体じゃ。このわしをみろ」

伝心は岩くれに似た自分の胸をドンとたたいて、

「敵少によっては追うに及ばぬというのだろう。そのような小賢しさは鍛えの邪魔じゃ。それ追えや追えや」

いうや否や 竹千代 の裸の胸を抱き上げて、そのままパッと水の中へかけこんだ、そして冷たい流れが自分の腰を没したところで、目よりも高く 竹千代 を差し上げ、とうとうとした本流へ水音高く放りこんだ。

「それ泳げ。泳げなかったら安部川の水くらい飲み干してしまうがいいぞ」
浮きつ沈みつもがく 竹千代 を手をたたいてはやし立てた。

竹千代 はようやく背の立つところに来て、ほっと息を吸い込んだ。三月の水の冷えは駆けつづけてゆるんだ皮膚を、きゅんとするほど締め上げて、全身の筋肉が引きつりそうな感じであった。
といって冷たさに音を上げるような 竹千代 ではなかった。この年もすでに寒中から冷水で肌をふきあげている。

だが水勢と股の疲労は著しく、それに川底の水あかも彼の意思に反抗した。立つと一緒にくるりとすべって水をのみ、その水を吐き出そうとするとまたすべった。

「あっはっはっは。呑め呑めもっと」

伝心 竹千代 の流されるだけ自分も下流に歩きながら、少しも揶揄をゆるめない。

ようやくヘソのあたりの浅瀬までたどりついて、
「敵将は......」

「だ....だ....だれだ」

「これは執念深い。討ち取ったのか、取り逃がしたのか」
「取り逃がしたが....、だ....だ....だれだ」

竹千代 は早く陸へ上がりたかった。負けたといわず、参ったといわず、陸で体を干したかった。

「敵将はな、おぬしと縁故浅からぬ織田上総介信長じゃ」
「なに信長どの....それではやめた。追うのはやめた。竹千代が同盟軍じゃ」
そういうと竹千代はのこのこ岸へ上がった。

「考えたなこの奸物(かんぶつ)め」
「奸物とはなんだ、信義を重んじて追わぬまでじゃ」

「はっはっはっは。よしよし、では来い。のう竹千代。」
「なんじゃ」

「駆けたあと、泳いだあとは快かろう」
「悪い気持ちではない」

「おぬし過ぐる年に、この川原で石合戦を見たそうじゃの」
「みた」

「そのときに勝敗をいいあてたそうな。大勢の方には信がないゆえ負ける。少人数の方には団結があるゆえ勝つと...」

竹千代 は答えなかった。

「わしはその話を雪斎長老に聞かされて、それからおぬしにほれたのだ。だが、わしのほれ方は少々荒っぽい。どうじゃ迷惑か」
「迷惑と思わぬ」

「そうか。フーン。そうか。ではこのあたりで中食(ちゅうじき)にいたそう。わしはちゃんと用意してきた。」

二人はそこで着物を着た。そして川原へ並んで腰をおろし、 伝心 が腰へつけてきた小さな袋を開いた。

「それ、これがおぬしの焼き米。わしは握り飯じゃ」

ぽんと 竹千代 の膝に焼き米の袋をほうって伝心は自分だけ、うまそうに握り飯をパクつき出した。握り飯は梅干が入っていたし、別に赤い塩鱒が一切れあった。
竹千代 がうらやましげにチラリと見ると、

「バカッ!」と 伝心 はどなった。

「大将が家来と同じ美食などしてよいものか。これはおぬしの祖母がつくった中食じゃぞ」

竹千代 はうなずいてポリポリと焼き米をかじった。

「大将の修行と雑兵の修行はおのずから違わねばならぬ」

伝心 は意地悪く舌を鳴らして塩鱒を賞味しながら、
「どうだ竹千代も誰かの家来になっては」

竹千代 は答えなかった。

「家来というは気楽なもんでな。生命も口も主人あずけだ。だが、大将となるとそうはいかぬぞ。武芸兵法はむろんのこと、学問もせねばならぬし、礼儀もわきまえねば相ならぬ。よい家来を持とうと思うたら、わが食を減らしても家来にひもじい思いをさせてはならぬ」

「わかっている」

「分かっていると思うのが間違いじゃ。まだおぬしなど何がわかっているものか。だいいちおぬしは痩せている」

「.....」

「それそれ、その目つきもいかんな。痩せておるのは美食をせぬためじゃといいたいのじゃろう。その考えがすでにいかん」

「その考えとはどの考えじゃ」

「美食をせねば肥えないものと考えるそのことじゃ。それは家来の考え方じゃ。大将の考え方ではない。大将というのはな....」
「うん、大将というのは....?」

「霞(かすみ)を食うてまるまると肥え、腹では泣いても顔ではニコニコ笑っている」

「霞を食うてまるまると」

竹千代 が真顔になって首をかしげると、 伝心 の眼もぴたりと据わった。いつも冗談の中に真をふくませ、相手の心をひきつけて、疑問の的をずばりと貫く 伝心 の訓え方であった。

「霞では血肉にならぬと考えるような人物では、大将はおろか、よい雑兵にもなれぬ。人間に賢愚の差があるであろう。竹千代はなぜじゃと思う?」

「さあ....?」

「霞の食い方ひとつにある。といってこれはおぬしだけではないぞ。おぬしの両親もよい霞....つまり正しい呼吸をしていなければ話にならぬが、たとえ両親が正しい呼吸をし、なに不足ない子を生んだとしても、その子の息が整うていなければれもまた話にならぬ。分かるかな?この大気はさまざまな宇宙の霊を含んでいる。この中から気息を整えて何を摂(と)るかで、その人の器の大小が決まっていくのだ」

竹千代 は何か分かるようで分からない節があった。 伝心 はそれと察して、またカラカラと笑い出した。

「雪斎長老に公案を出されて困りぬいている。このうえ竹千代を苦しめまいかの。だが、雪斎長老は座禅を教えるとき、まず息から整えよといったであろう。息のみだれた奴には何も出来ぬ。苦しいときにも、悲しいときにも、嬉しいときにも、有頂天なときにも、同じ呼吸で宇宙の霊気を摂取する、そんな人物に仕立てようとしてご苦心なされていられるのじゃぞ」

竹千代 はポンと膝をたたいてうなずいた。 伝心 は近ごろ臨済寺で座禅しだしている 竹千代 に、一つの助言を与えようとしていたのだ。

「さ、終わった。そろそろ帰るか」

自分の握り飯がなくなると、 伝心 はさっさと立って歩き出した。 竹千代 はあわてて焼き米の袋を腰にはさんであとにつづいた。



************************************************

参考 山岡荘八・徳川家康3巻/雌伏の寅より


ほんとはこの次が感動するところなんですけど、

長くなりすぎるので明日の分にしようと思います。

*この書き込みは営利目的としておりません。
個人的かつ純粋にに一人でも多くの方に購読していただきたく
参考・ご紹介させていただきました。m(__)mペコリ






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Last updated  2006年02月21日 09時42分28秒
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