2004年08月30日
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【真夏の邂逅】第63日目


 8/29

 松橋でおばあちゃんの世話になる。飯、おかず、くだものなどを大量にもらう。
 荷物がメチャクチャ重い。熊本の地図を拾う。これがけっこう役立った。家に
 TEL。八代から小林村にいたるまでの道程は危険だった。





 熊本市から10kmばかり行ったところに松橋という町がある。
 「まつばせ」と読む。


 熊本県の地図で、一冊の本になっているようなものである。

 これは使えるかもしれないと思い、携行することにした。
 ただし重くなるので、これから通るルート上の地図の頁だけ切り取って、
 あとの大部分は捨て去った。

 その地図を見ながら歩いていて、
 その松橋を通りかかったときのことである。

 日傘をさしたおばあさんが僕に話しかけてきた。
 日差しが強いのである。


 「お兄さん、大変だね。家で休んでいきなさいな。」
 「はい。」

 僕は素直に言うことに従った。

 誘われたらついてゆく。

 僕はこの長い旅をするうちに、
 自分自身の運だめしをしているような気持ちになっていた。
 この運だめしも、


 その家に着くと古い木造の家屋であった。
 おばあさんはひとりで暮らしているということだった。

 彼女はある宗教を信仰しているという。
 僕はそれでてっきり入信を勧められるのかと思った。
 すると彼女はこう言った。
 色々と世の中を見てみなさいよ。
 それで僕は飯を食わせてもらうばかりで、
 あとはたわいもない話をして、その家を辞去した。

 さて、おばあさんは出しなに、
 恐ろしくたくさんの食糧を持たせてくれたのだが、
 このことは少しばかり僕を苦しませた。

 荷物がとんでもなく重くなったのである。
 だいたいにおいてここ二三日は携行する食い物がダブつき気味であった。

 昨日もらったドリンク剤はまだ飲んでいないし、
 熊本の手前で買ったバナナはまだ余っている。
 そのうえ彼女にもバナナをもらってしまった。
 さらに天ぷらなどの惣菜、
 それに米山浜でもらったのに匹敵するぐらいの巨大なおにぎりを三個も作ってくれた。

 松橋を出てから15分もしないうちに、
 この重くなった原因を取り除くことにした。

 食っちまおうと思ったのである。
 おばあちゃんの家で食事を取ったばかりであったが、
 こう重くっちゃ歩けない。

 荷物を軽くするという意味あいからもここは食わねばなるまい。
 この時、さすがにすべての食料を食べきることはできなかった。
 しかし、このことは後で幸いした。
 これから先、食料の調達などできないような
 人跡まれな山奥へと突入してゆくのであった。


 八代の町を通った頃は日差しもやや傾きかけていた。
 この町を球磨川が流れている。
 この球磨川沿いを人吉へ向かうのである。

 しかし川沿いの道には歩道がなかった。
 徐々に暗くなりかけているし、
 この先の道は明らかに山道である。

 見たとおり歩道もない。
 そんなことで僕はいったんは歩くのを止めようかと思った。
 それで寺の回りなどで寝られそうな場所を物色して歩いた。
 しかしそうしているうちに、
 もっと歩かねばという思いがだんだん強くなってきた。

 ここから100kmほど行ったところに塩浸という土地がある。
 ここに坂本竜馬が湯治と新婚旅行を兼ねて訪れたという温泉がある。
 ここの温泉に浸かってみたいというのが僕のささやかな希望である。

 そのためにはここで今日泊まってしまうのはまずい。
 明日、明後日とがんばって100km歩くということも
 できなくはないが、実際は難しい。
 塩浸に着くのが真夜中になってしまうにちがいなかった。

 そうすると、さすがに温泉には入れまい。
 さりとてこの行程に三日かけるわけにもいかない。
 そういう意味で非常に微妙な距離を残しているわけである。

 しかし、あと15kmも歩いておけば
 何とか明後日の早い時間に塩浸に到着することも可能である。 

 僕は胸がギリギリと締めつけられるような心細さを感じたが、
 それでも歩くことにした。
 幸い車はそう頻繁に通るわでもなさそうである。
 もし車が来たらその都度、山壁にへばりつけばいい。

 道は川に沿って大きく右へ左へと蛇行している。
 そのおかげで前方からやって来る車はすぐにわかる。
 そこで僕は道路の右側を歩くことにした。

 もし前方からやって来る車があればサッと壁にひっつくつもりである。
 気休めにしかならないかもしれないが、
 こうでもした方が多少は安全が確保できるように思われた。


 まったくもって淋しい山路である。
 もうすっかり日も暮れた。
 僕は壁にひっつく作戦を遂行しながら前に進むのであるが、
 やはりこの暗夜行路は実に危険であった。

 そもそもドライバーはこんな場所を
 暗くなってから歩いている人間などいるとは思っていない。
 いくら僕のほうで気をつけていてもそこには自ずと限界がある。

 実際、大型ダンプがもの凄いスピードでやって来て、
 僕を見てビビッたのだろう、あわててハンドルを切り、
 反対斜線を走る車と正面衝突しそうになっていた。


 僕はヒヤヒヤしながらそうして歩きつづけ、
 小林という無人駅まで何とかたどり着き、やっと今日の行程を終えた。
 ここでおにぎりを食べたせいで残りはあとひとつになってしまった。






 8/30

 あまり眠れず。起きると霧が出ていて、雨かと思いあせった。球磨川沿いをゆく。
 二回ほど声をかけられた。おばあちゃんにもらったおにぎりを食べる。マヨネーズ
 を使いきる。





 このあたりの光景は凄まじい。

 たとえて言うならば中国の山峡に雰囲気は近い。
 仙人でも住んでいそうな雰囲気である。
 しかし縄文時代から人が住んでいる地域なのだという。

 この球磨川というのは日本三大急流のひとつだそうで、
 人吉から八代に向かって川を下ってゆくことを球磨川下りというらしく、
 それを書いた看板などを見かける。
 僕は迂闊なことに、そんなことも知らずに歩いていた。

 おそらく山が険しくてほかに道がつくれなかったのだろう。
 道はこの川沿いにしかない。


 司馬遼太郎の著作に「翔ぶがごとく」という
 西郷隆盛と薩摩士族の最期について書かれた本があるが、
 彼らは官軍に敗れ、熊本から鹿児島まで強行軍を重ねて退却してゆくのである。

 彼らが通ったのがこのあたりであり、
 しかも、それは僕がいま歩いているような「道」ではなく、
 山中を踏み破って行ったものであるという。

 僕は森林に覆われたその山々を見あげたが、とうてい信じられなかった。
 それぐらいこのあたりの景観には凄まじいものがある。
 そして同時に薩摩隼人の性根の凄まじさを思った。


 17:00、球磨川沿いの道を歩き終え、
 やっとこさ人吉に至る。
 まあ文明の香りのする地帯へと入ってきた。

 18:00クラフトパークの横を通り過ぎる。
 ここからは国道221号を進み錦江湾へと向かうことになる。
 19:00、日没。


 国道221号から先は恐らく人の住んでいない山中なのだろう。
 地図を見れば、だいたいの見当はつく。

 というのに日が暮れてしまうとはどういうことだろう。
 人吉に留まるか、それとも先を急ぐか迷うところである。

 だが国道を入ってすぐのところに大きなジャスコと郊外型の書店があり、
 それにファミリーレストランのようなものもある。
 それらは、この先も案外こんな感じかもしれないな
 と思わせるようなたたずまいであった。

 塩浸まであと60km以上は残されている。
 明日中に着くためには今日のうちに
 もう少し行っておきたいところである。
 僕は先に進むことにした。

 だが、歩き進むうちに、
 国道からは唐突に何もなくなった。
 これは稚内で遭遇したパターンとまったく同じであった。

 道はどんどん暗くなって行く。
 最初のうちはあたりもただの平地であったが、
 だんだんと山勝ちの地形へと変わりつつあった。
 この分ではいつ歩道がなくなるかわかったものではない。

 まあ、それでも歩き続けないわけにはいかない。
 さすがに歩道に寝るわけにはいかないのだ。

 結局、しばらく歩き続けて見つけた
 峠のドライブインの駐車場で寝ることになった。
 こうしたほんの少しの明かりでもなんだかホッとするものである。

 だが、油断して、寝ているときに
 車にひかれないように気をつけなければならない。
 僕はなるべく端っこの、車の来ないようなところに寝袋を敷いた。
 もっともこんな山中の夜のドライブインに来る車もないだろうとは思うが。

 とにかく今日はここで断念。
 明日がんばって歩こう。




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最終更新日  2004年09月01日 22時21分26秒
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