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私がこの日見た全てのものを誰かに伝えることは、おそらく不可能だろう。
キラキラ輝く若葉、にこやかに歩く人達、日の光の反射のまぶしい池に出ている無数のボート、楽しそうに笑っているおばさんの幸せそうな笑顔、鮮やかなサクラに、華やいだ季節・・・。
こんないるだけで、見ているだけで幸せな気持ちにさせてくれる、こんな場所に立って、私はすぐに被災地の人達のことを思った。
複雑な思いに駆られ、何とか被災地の人達が、こんなここにいる人達のように楽しく花見が出来、こんな風に本当に心から幸せに笑えないだろうか?こんな風に心から笑えるようになるのはいつのことになるだろうか?ひとしきり考えた。
でもすぐにまるで、自分が幸せ組みに入ったと思い、不幸な事に思いも寄せない、一流大学や一流企業に入った人達のように、私もまた「ここは大丈夫」と言い聞かせるように、この考えにふたをし、幸せな光景にまた見入った。それは思ったよりも大きな辛さを伴う作業だった。
さて、三宝寺池に自転車を置き、歩いていくと、そこは若葉!若葉!若葉!いつの間にこんなに大きくなったんだろう!?と目を見張るばかり。そしていつもより丁寧に一つ一つの木の新芽を観察して歩いた。
わあ!ムクノキの葉がまだこんなに小ちゃい。そうそう、エゴノキの葉はこんな感じ、若芽もすごくかわいい。クヌギとハンノキは幹肌がよく似ているから間違えるけど、葉の広いのがハンノキで、細くてギザギザのあるのがクヌギ。ふむふむ、コナラはこんな風に芽吹くのか、珍しいな。
今まで知っているようで知らなかった見るのもはじめてなものに、驚異と自然の不思議を知らされるような思いで見入って歩いた。
途中ベンチに座ってボンヤリしていると、目の前に広がる一面の黄緑が目に優しい。鮮やかで、そっと頬をなでる空気ももう暖かだ。もうすっかり春爛漫といったところ。
ヤマブキももう咲いている。こりゃあもうすぐ新緑の季節だな。
でも長年通っているようで見たことのない若芽などが見れたのは、本当に嬉しかった。森はいつ来ても不思議のワンダーランド。また近々来ねば。
自然は不思議。生き物は全て不思議。人間もまた生き物。私は自然と人間を隔てる西洋の二元論的な考え方はどうも好きではない。一体人間と自然を隔てるものは何だろう?人間も自然の一部。人間も不思議。そう考えると私は昔からなぜか落ち着くのだ。
土から生まれ、土に還る。自然に囲まれ、無心になれた時、いつもスーッと落ち着いていくのだ。まるで何万年も前にいた人類のように。