帰って来たかえるのへや

その9)03月23日記


2007.3.23記)その9「変化したアカネ」


さて、荒療治の甲斐あって、アカネの屋根昇りは
こちらに一番助かる方向でおおむね解決した。
Kaeruに突き放されたアカネは更に人間嫌いになっただろうか?
.....不思議とそういうものではなかった。

たとえば里帰りで人間や犬が不在になった時、
さかりの嵐に翻弄された時、膀胱炎になった時、
避妊手術を受けさせた時....
アカネにとって一番のストレスになるのではないかと
思われるような揺さぶり体験の後に限って
彼女はどんどんリラックス度を深めた。
そして可愛い優しい顔つきになり( この頃の可愛さ絶品 )、
一方で 時計と一緒に写った時の顔 のように、
すごく遠くを見つめる達観したような
落ち着いた新しい顔も見せるようになった
(アキラはKaeruにとって下から見上げて腹の底を見透かす猫だが、
 アカネは高みから見下ろし、見通す猫だった)。
そして、人間の言う事がいつもではないが入る時が出て来た。

何度言っても聞かなかったアカネを叱る時、
Kaeruは既にそれを聞いてもらえるなんて期待していなかった。
ただ自分の気持ちの発散として、
ストレス解消として怒鳴っているだけのつもりだった。
モデルがアキラ君だが、たとえばこの行動も相当イヤだった。


このようにカーテンレールの上に昇り、
レースのカーテンの後ろの緑の御簾?の紐を食いちぎり、
ロールアップできないようにしてしまうのだ。
いったい幾度噛みちぎられ、だた紐を結んでおいたことか。
当然アップダウン不可能な代物にとっくになってはいて、
これは今でもそのままなのだが。
キレて「ダメ!」とわめくKaeruをアカネはじっと見つめた。
そしてレールの上で器用に体の向きを換え、昇って来た食器棚に静かに戻った
(アキラは紐を食いちぎるような趣味はなかったが、
 アカネの真似をして昇ってみるのだ。
 が、アカネのような身体能力はないので行ったっきり、 
 怖いけど下のソファに飛び下りるしかない)。
......驚いた!!!
アキラと違いあれほど人間の思惑を容れてくれなかったこの子が、
言葉か感情か、Kaeruの何かを理解して従ってくれた。

どうしてアカネはお互いが楽になれるよう変わる事ができたんだろう。
無闇とかばわれない現実の手ごたえは彼女を大きく変化させた。
彼女には厳しいかとKaeruが思った現実は、
彼女があれこれ妄想していた?周囲の敵意悪意に較べ、
ものの数でもなかったか、少なくとも種類違いで
そっちなら大丈夫、といったものだったのかもしれない。
周囲に悪意がない事をだんだんに納得できたのかもしれない。
かばわれない事で始めて、今までされていたのは邪魔ではなく、
かばわれていたという事を理解してもらえたのかもしれない。

もっとも指示は当然いつも入るわけではなく、
事によってはどうやっても直せなかった行動もあった。
時間こそ短くなって行ったが、
狂気のように走り回る時間も最後までなくならなかった。
わけても、優しい顔になったとはいえ、人間やアキラに対して、
Kaeruが「普通の猫」なら、と思える程までの
自然な愛情関係はやっぱり持てなかった。
アカネの不妊手術が済んだあとは、
それ以上彼女を変えられる自然な揺さぶりは来そうになく、変化も膠着した。
それでもこれならどうにか同居していけるかと思えるレベルにまでは
達してくれたように思っていたのだが、
そのままで行ける程運命は甘くなかった。






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