劇場通いの芝居のはなし

劇場通いの芝居のはなし

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

peacebright1953

peacebright1953

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

コメントに書き込みはありません。

Freepage List

2019.07.04
XML
カテゴリ: 演出ノート(3)
西瓜をさげて、花代さんを嫁にもらう、花代さんを嫁にもらう、と心の中で歌いながら、はるばる福山からやって来て、花代がもう居ないと知ったときの勇の心が、思いやられます。
菊はまだ生きていました。それから十年ほどたって亡くなったそうです。見知らぬ若い兄ちゃんだった勇を見て、菊はなんと思ったことでしょう。花代はもう魂になっていましたが、「この人が家へ来てくれはったとき、びっくりして、ぼーっとしてた」。
菊と花代は泣いています。まやも涙ぐんでいるようです。
「おじさん……。おじさんはよっぽど……」
「風鈴のお礼じゃけえ、西瓜は。(写真に向かって)花代さん、あんたはずーっとわしの心の奥に住んどります。顔も見ず、声もきかず、さわりもせんでも、花代さんは、わしの心の中で生きてきよりました」
そして続きます。「まやさん。平和でないといけません。わしらが一番そう思うとる筈です。戦争に行ったわしが生きて帰って、内地にいた花代さんが戦争で殺された。こげなむごいことが忘れられますか。これから先、世の中がどぎゃぁに変わっていくんか、わしらは心配しとります」
作者の言葉を役の言葉として、必然に語らせる。ここに正しい台詞の書き方があります。

勇はまやに水を一杯所望します。まやが台所に立ったすきに、もう一度、仏壇に手を合わせ、ちょっと迷ってから、白い封筒を御綸の下に置きます。菊と花代は顔を見合わせます。
この動作のト書きで、これまで勇と書いていたのが、大下になっています。これは後の進展を暗示しているようです。
戻ったまやから水をもらって飲み、勇は、それではと言って、帰って行きます。来年もきっと来てくれというまやに、勇は「わしはな、まやさん、もうぼつぼついけまいて……。もう覚悟しょぉるんよ」と言います。「花代さんはの、まやさんのこれから先の人生が、はさみで斬ったようにぷっつりのうなったようなことになったんよ」だから「じゃけえ、やりたいことを、思い切りやらにゃぁいけません」。
勇は帰って行きます。まやとお魂さんたちが見送ります。
菊が「もう来年は……」と言うと、花代が「また会えるわ、きっと」と強く言います。

まやが電話で友達と話します。お客さんからいい話を聞いて、とても感動したと言います。そして、慰霊碑を見たいから京橋へ行くと言います。彼も一緒に来ないか。いや? それならもうつきあわない。……どうやら、彼も一緒に行くことになったようです。
by 神澤和明





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2019.07.04 09:00:13


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: