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2005年10月04日
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カテゴリ: 戦争映画
1988 イギリス 監督:イアン・トイントン
出演:ボイド・ゲインズ、ディビッド・ホロビッチ、ニール・ダッジョン、トム・バーリントンほか
300分(各100分) カラー


空軍大戦略(1969) 」が有名だが、本作は空軍大戦略に負けないだけ十分の内容と迫力がある。バトル・オブ・ブリテンとは1939年9月から約1年間のドイツ空軍隊イギリス空軍の死闘を指すもので、本作の原作は1983年に出版されたデレク・ロビンソンの同名小説である。監督はあの24時間リアルタイムサスペンスドラマ「24」を手がけた人物でもある。登場する航空機も実機のスピットファイアやメッサーシュミットということで、空中戦も大迫力である。空軍大戦略ほど多くの実機は登場しないものの、時代が新しい分、カメラワークも良く、むしろ迫力感がアップしているとも言える。
 結論から言えば、私個人的には空軍大戦略よりも好きかもしれない。空軍大戦略の方は、どちらかというとストーリー性が乏しく、戦記物の雰囲気があり、数多くの実機シーンと史実エピソードを多く盛り込んでいるのに対し、本作は三話構成になっており、ホーネット中隊を核とした一貫したストーリー構成がある。その分史実戦記的な部分が乏しいが、空中戦の迫力とともに妥協のないシビアなストーリー性に圧倒されてしまうのだ。

 第一話、第二話は比較的のんびりとした調子で、戦闘シーンも少なく、人物エピソード中心となっており、今ひとつの作品かと思わせるが、第三話はいきなり激しい展開を見せる。容赦なくパイロットは死んでいくし、物語としての温情もない。第二話までの流れがその伏線であったと気づかされる。このことは、対独戦に対して危機感の甘かった英国人の感覚をそのまま映像化したようなものなのかもしれない。
 本作はスピットファイア戦闘機に乗るホーネット中隊を中心に描いているが、登場人物は比較的多いと言える。しっかりと顔と名前を覚えておく必要がある。ただ、個性的な役者が多く覚えやすい方だとは思う。パイロットの性格も、貴族出身の形式主義の隊長、悪態ばかり付き態度の悪い男、アメリカ人義勇兵、チェコ人パイロット、哲学的な副官、学者肌の情報部員など、実に個性的というか特徴的に設定されており、いろいろな性格の人物像を追いかけていくのが楽しい。自分はどのタイプかとか、どのタイプが好感が持てるかなどという観点で見ても楽しいだろう。とはいえ、結構簡単にパイロットが戦死していくのはつらいが。

 登場する航空機の情報がないので、今ひとつよくわからないが、スピットファイアは防滴型風防のタイプで、実際に飛行しているのは最大6機程のようだ。空軍大戦略使用機の使い回しか?。メッサーシュミットBf109は空戦シーンがほとんどで、良く判別できない。実機と思しきものもあるが、空戦シーンの多くはラジコンかミニチュアと思われる。同じく、ハインケルHe111も登場するが、どれも実機らしさはなくミニチュアのような気がする。空戦シーンでは、空軍大戦略同様コックピット前方からの撮影が用いられている。空軍大戦略ではいささか行き過ぎの感があったが、こちらは結構リアルに見える。

 好みの問題で空軍大戦略の方がいいという人もいるだろうが、どちらもバトル・オブ・ブリテンで酷使される英国空軍パイロットの過酷な戦いぶりが良く表現されている。チャーチルが彼らについて語った「Never in the field of human conflict was so mach owed by so many to so few(人類の戦闘において、かくも多数の人々が、かくも少数の人々によって、これほど多くの恩恵をうけたことはかつてない)」が全てなのである。

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★★



(1)
 1939年9月ドイツ軍はポーランドへ侵攻。イギリスは最後通牒を通告する。イギリス国内の戦闘機隊ホーネット中隊は訓練にあけくれている。中隊長が事故死し、バートン大尉が隊長代理を務める。もともと指揮官タイプではないバートンは部下を取りまとめるのに苦労する。特に、モギーは言動が悪い。
 そんな中、事件が起きる。部下の能力は高くなく、特に敵味方機の識別能力が劣っていた。案の定、ユンカース88爆撃機と誤認して撃墜したのが英軍のブレニム爆撃機であり、死者が出る。バートンは本部へ謝罪に向かうがそのまま身柄を拘束される。変わって中隊長に着任したのはレックス少佐だった。愛犬の「バカ犬」を連れた英国貴族のレックス少佐は立ち振る舞いも雅やかであった。
 部隊はフランスのル・トゥケへ転進する。レックス少佐は強引に古い城を司令部に据え、料理人を雇って豪華な食事を振る舞う。正式にドイツ軍と戦線を開いていないまま、時が過ぎていく。ケンブリッジ大学卒の情報部員スケルトン中尉は対独戦(ポーランド・チェコ支援)の意義に疑問を呈するが、ブレッチリー准将は一蹴する。
 バートンの後継にはアメリカ人義勇兵のクリス・ハート少尉が着任する。スペイン内戦経験がある男だが、規律に自由なうえ説教癖があり、レックス少佐とは反りがあわなかった。
 モギーはピップやスターに司令部近くにある橋の下を飛行機で潜ることをけしかける。技術のあるモギーは難なく成功するが、スターは激突死してしまう。初めての戦死者が出るが、モギーは極めて冷めている。ピップも潜ることが出来なかったが、モギーには潜ったと言い張る。スターはフランスで葬られるが、フランス人は好意的ではない。フランス人のために戦っているのにとパイロットらは怒るのだった。

(2)
 1939年12月。中隊は遭遇したドイツ軍He111爆撃機を撃墜。彼らは初めて墜落した機でドイツ軍パイロットの死体を見る。戦争を実感した瞬間だ。
 一方、フィッツ少尉は未亡人ヘレンとフラッシュ・ゴードン少尉はニコールというフランス人女性と恋に落ちる。やがて、二人は結婚する事にする。
 レックス少佐は正確な編隊飛行を強要する。しかし、ハート少尉は実戦では役立たないと批判する。レックス少佐はハートを中隊からはずしたがるが、准将はアメリカ兵が活躍していることを世間的に知らしめるため、それを許可しなかった。
 中隊は金も持たずに帰隊する4日間のサバイバル訓練を実施する。モギーはわざと犯罪を犯して警察に車両で帰隊する。一方ハートはミラーらを誘ってスイスへ行き観光旅行を楽しむ。レックス少佐もこれには怒り心頭になる。
 ある日、レックス少佐らはMe109に後方から襲撃される。レックス少佐が編隊飛行を気にしすぎた結果である。その結果、ミラーが戦死。フラッシュは落下傘で脱出。ピップも脱出時に頭を強打して負傷する。部下たちは次第にレックス少佐に不信感を持ち始め、「最後尾に付けという命令は無視しろ」とまで言い始めるのだった。
 1940年3月、新人のトレベリアンが配属されるが、またもや背後からの攻撃で最後尾だったトレベリアンは僚機の誰にも知られぬまま撃墜される。また、コックスは指を飛ばされる。ハートは厳しくレックスを批判し、中立を保ってきた中隊副官のアンクル大尉や情報部員のスケルトン中尉もまた批判的であった。
 フィッツ少尉とフラッシュ少尉の合同結婚式の日、ドイツ軍の空爆がある。背中に破片を受けたレックス少佐だったが、強引に空戦に飛び立つ。この日を境に次第にレックス少佐の言動が好戦的に変わっていく。ついに、レックス少佐は多大な敵機に突入を試み、それに従ったマリオット、ダットンとともに戦死する。
 レックス少佐の後任にはバートン大尉が着任する。しかし、すでに中隊の残機は4機となっていた。ピップは負傷が完治していたが、臆病になっており飛行機に乗ろうとしなかった。さらに、避難途中のニコールが死亡し、フラッシュは気がおかしくなりはじめる。

(3)
 残り4機を乗り回しながら奮戦が始まる。しかし、ついにスティッキーが撃墜され、ようやく搭乗したピップは撃たれてもいないのに非常脱出し、ホーネット中隊は残り2機となってしまう。ここで、中隊はイギリス本土に引き揚げる事となる。
 本土のB・ヘイゼル基地に隊員らは集合する。フラッシュはかなり変人と化していた。モギーは新人ステビングをけしかけて赤十字機を撃墜させる。准将は撃墜を公表させないが、今度も見たら撃ち落とせと命令する。
 フラッシュは逆さま飛行をするなど行動がおかしくなる。
 1949年8月になり、フリップ、モーリス、モランと歴戦の勇士が次々と戦死していく。さらに、フィッツも海上に墜落する。しかし、夫人のヘレンは夫の死を認めようとせず、飛行場に顔を出すようになる。モギーも被弾し脱出するが、モギー機は市街地に墜落。民間人に死者が出る。モギーは反省する風もないが、准将は事実を全て伏せろと命令する。
 新人パイロットが補充され、中隊の練度もかなり落ちてくる。戦果報告もかなり怪しいと見たスケルトン中尉はガンカメラの設置を行う。その結果、ガンカメラに写されていたのは、別機による撃墜シーンと、味方機への射撃シーンであった。
 小隊長サビーが撃墜され、後任小隊長にフラッシュ少尉が着く。しかし、ついにフラッシュも被弾し、なんとか機体を着陸させるがその場で絶命する。もはや、ホーネット中隊の生え抜き隊員はほんの一握りとなっていた。機体とパイロットの消耗戦である。
 チャーチルが演説をする。「人類の戦闘において、かくも多数の人々が、かくも少数の人々によって、これほど多くの恩恵をうけたことはかつてない」。またもやホーネット中隊は残機が5機となる。
 ついに、チェコ人パイロットハディも戦死、ハート少尉も炎上する機体から脱出するもパラシュートが開かずに墜落死する。モギーは味方陣地上空で Me109を撃墜するも後方からの銃撃で戦死する。生え抜きで後に残ったのはバートン大尉とピップだけとなってしまう。
 1940年9月7日、ドイツ軍最大の攻撃が始まる。バートンとピップは迎撃に空に飛び立つ。この日がバトル・オブ・ブリテンの峠となる。


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最終更新日  2005年10月04日 11時43分35秒
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