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2005年12月06日
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カテゴリ: 戦争映画
1961 大宝 監督:大島渚 
出演者:三国連太郎、ヒュー・ハード、小山明子、三原葉子ほか
107分 モノクロ



 黒人兵を「クロンボ」と呼ぶなど差別用語も多々出てくるが、それも片田舎の部落という設定ゆえ、学識も良識もない登場人物が織りなす言動が身に染みる。今でこそ少なくなったが、部落という狭くて堅い絆の共同体の人間関係が、本家と分家、部落民と疎開者などという対立関係と相まって、いかに無責任、無干渉、無法、排他的に組織されているかが良く表現されている。誰もが触れたくはないタブーの部分であり、誰もがその見えない圧力に悩まされている部分でもあり、見る者を引き込みはするが、後で何も語りたくなくなる。純真な心の持ち主は子供たちだけなのだ。
 部落の好色で無責任な「本家」は三国連太郎が演じる。つりバカ日誌のスーさん役とは全く正反対の悪役だが、なんだか他人とは思えない演技なのだ。スーさんも好色で無責任といえばそんなような気がしないでもない。その他の役者は田舎の部落という設定もあろうが、ベタの演技という印象だ。迫り来る迫力が実にリアルでちょっと胸くそ悪くなる。それが本作の狙いでもあろうが。
 「飼育」とは、黒人兵捕虜を憲兵隊に引き渡すまで部落で預かることになるのだが、そのことを飼育と呼んでいる。 
 兵器類は全く登場しないが、一瞬だけB-29と呼んでいる機体が上空を飛行するシーンがある。確かに爆撃機風だが、旅客機かも知れない。

興奮度★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★



 昭和20年夏。田舎のある部落で山狩りが行われ、墜落したB-29の黒人兵搭乗員が捕まる。部落では、憲兵隊から感謝状や金一封が出る事を期待していたのだ。
 役場から男がやってきて、県庁の指令があるまでは部落で逃げないよう監視するよう言い渡す。子供達はクロンボに興味津々だが、大人達は食べるものを与えるのが嫌で仕方がない。しかし、地主で本家の鷹野一正の一声で、本家の蔵で輪番制の監視をすることになる。後で金一封が出る事を期待して、自分たちが食べられないような白米や乳をクロンボに分け与え、「飼育」する。そして、子供達は次第にクロンボと親しくなっていく。
 本家の一正は貪欲で、好色な男で、分家の女中や息子の嫁に手を出したうえ、疎開者の弘子にも手を出そうと企んでいる。弘子の子供達がひもじさゆえに盗みを働いた事をきっかけに、ついに弘子にも手を付ける。
 部落の青年次郎に招集がかかる。その出征祝いの晩に、次郎は東京から来ていた本家の姪幹子と性交する。そして、そのまま次郎は姿を消す。兄が徴兵拒否者の汚名を着せられ、次郎の弟八郎は幹子がそそのかしたのではないかと糾弾する。
 本家の一正は八郎を木に縛り付ける。クロンボが歌う歌を聞いて、次第に八郎にクロンボのせいで村中が狂ってきたのだと怒りが沸いてくる。八郎がクロンボに飛びかかろうとした時、不幸にもクロンボにぶつかった、弘子の娘桃子が崖下に転落して死んでしまう。弘子はクロンボを殺せとわめく。そこに出征していた男の戦死通知が届く。不幸は全てクロンボのせいと、部落中の怒りが向けられ、さらには本家の一正に向けられる。窮地に追い込まれた本家はクロンボを殺そうと提案する。
 今度は逆に八郎たち子供はクロンボを逃がそうと画策する。しかし、うまくいかずついに一正によってクロンボが殺される。クロンボは畑に埋められた。
 そこに、終戦の報が届く。黒人兵を殺した事がバレ、戦犯になってしまうことを恐れた部落の者達は何もなかったことにしようと言い合う。そこに、逃げていた次郎が戻ってくる。役場の者や本家の提案で、万が一追求があったら次郎に罪をかぶって逃げて貰おうと提案する。しかし、次郎は酒に酔って大暴れし、事故死してしまう。部落では次郎に黒人兵殺しの罪をかぶせ、事を丸く収める。
 さあ、うまくいったと酒を飲み直す大人達をよそに、八郎ら子供達はクロンボのいた蔵をじっと眺めるのであった。


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最終更新日  2005年12月06日 00時14分50秒
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