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2006年10月29日
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カテゴリ: 戦争映画
2006 アメリカ  監督:クリント・イーストウッド 製作:スティーブン・スピルバーグ
出演者:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパーほか
132分 カラー 




 さすがアメリカ映画だけあって戦闘シーンの迫力は満点。あの「プライベート・ライアン」に勝ると言ってもいいぐらいのリアル感と想像以上の戦死体映像のグロさには圧倒された。本作は日米決戦の硫黄島の戦いを題材にしてはいるが、主題は擂鉢山に掲げられた星条旗を巡る海兵隊兵士達の名誉と苦悩の物語であり、激しい戦闘シーンは全編の半分程度に過ぎない。しかし、飛び交う弾丸、発射される砲弾、飛び散る着弾、そして倒れ行く兵士の姿のインパクトは戦争映画を見慣れた私でも強烈で、星条旗の話は脳内からぶっ飛んでしまうのだ。ちょっと過多気味のフラッシュバックの使用によって、星条旗を巡るヒューマンドラマと硫黄島での戦闘アクションを交互に織り交ぜてはいるものの、どうしてもスムーズにストーリーに入っていけない。それほど戦闘シーンのインパクトは強かった。
 脚本は良くできていたと思うが、編集の仕方にもう少し工夫が欲しかったところ。ただでさえ複雑な内容だったので、視聴者が理解しやすいようにもっと単純化した流れでも良かったのでは。クリント・イーストウッド監督作品としてはなかなかの出来だと思うが、製作のスピルバーグはどのような関わりをしたのだろうか。少なくとも映像という観点では満点に近い。

 改めて言うまでもないが、硫黄島の戦いは1945年2月16日から約1ヶ月間に渡って行われた激戦だが、本作は2月23日に擂鉢山に2枚目の星条旗を掲げ、その後米国戦時国債PRに利用されたジョン・"ドク”・ブラッドリー衛生下士官の息子が書いた「硫黄島の星条旗」を原作としている。従って、息子が父親のことを調査していくという設定のもと、回顧録的に父ブラッドリーが3月 12日に負傷するまでの戦闘が映画中に登場する。擂鉢山に星条旗が掲げられたAP通信ジョー・ローゼンタールの写真はピュリッツァー賞を受賞するなどで著名だが、実はそれが最初の掲揚ではなく2枚目の星条旗であったことが最近知られている。アメリカ国防省はその歴史的写真に写っていた兵士を戦時国債購入のPRのために利用するのだが、それが2枚目の星条旗の写真であったことで、様々な確執を産むのである。2枚目の星条旗を掲揚したのはジョン・ブラッドリー衛生下士官のほか、レイニー・ギャグノン一等兵、アイラ・ヘイズ一等兵、マイク・ストランク軍曹、ハンク(ヘンリー)・ハンセン三等軍曹、フランクリン一等兵の6名だが、うち3名は硫黄島で戦死している。生き残った3名が「英雄」と奉られ、国の策略の渦に巻き込まれていく過程が生々しく描かれている。海兵隊の兵士としての誇りと英雄として奉られることの葛藤、生き残った者の死んだ者へ罪悪の念、そして激戦のトラウマ。ベトナム戦争でもイラク戦争でも言われるように、兵士の戦後は死ぬまで来ないのだ。戦勝国の兵士でさえこのように精神をズタズタにされるのだということ、そして国益という大きな力や本国の国民の感情がいかに戦地の兵士と乖離しているかということをまざまざと見せつけられる。

 アメリカ映画の場合、本名と愛称がごっちゃに用いられるため、名前と顔が一致しにくい。本作もご多分に漏れず、ネイティブインディアンを除いて登場人物がわかりにくかった。一応登場するたびに右側に名前のテロップが出るのだが、フラッシュバックを多用する上、老後の姿まで登場するためかなりの注意が必要だ。わかりやすかったのは「ウィンドトーカーズ」に登場したアダム・ビーチ(アイラ一等兵役)と「プライベート・ライアン」のバリー・ペッパー(マイク軍曹役)。この二人の演技が目をひいたし、本作の大きなアクセントになっている。

 さて、注目の戦闘シーンだが、撮影は一部硫黄島でも撮影したそうだが、大半はアイスランドのレイキャネクという半島だそうだ。黒い砂を大量に運び込んでの撮影だったそうだが、砲の着弾シーンは黒い砂を有効に利用した砂の飛散で迫力満点。銃の弾着もおかしな点はなくなかなかリアル。もちろん、CGも多用されていると思われ、飛び交う銃弾や海岸に押し寄せる上陸用舟艇(LVTやLCVP)シーンはCGだろう。また、擂鉢山の映像がリアルに迫ってくるがこれも多分CGと思われるが、実写にCGを被せているのかも知れない。それほど、CGと実写の区別がつかない位リアルに仕上がっている。特に、擂鉢山の山腹にある日本軍砲台やトーチカから放たれる銃砲のイメージシーンは、小説等では想像できない映像であり、擂鉢山攻防のイメージを理解する上で大変興味深かった。また、米軍戦闘機コルセアもCGと思われるがなかなか良くできていたが、コルセア機内からの視点映像は特に新鮮だった。このほか、戦艦等からの艦砲射撃も良くできていた。
 実写と思われる兵器類は、一部の上陸用舟艇LVT-4、LCVPと一瞬出てくる戦車、沖に待機する輸送船、C-47輸送機(DC-3)くらいだろう。戦車揚陸艦は微妙なところ。そう考えるとあの迫力ある画面を作り出すのにいかにCGの力を借りているのかがわかる。これでCGの出来が悪ければ最悪だったろうが、戦闘シーンにはモノトーン風に減色した映像を使っていたのがCGのアラをカバーする上で効果的だったと思われる。
 なお、着衣からはレイニー一等兵とアイラ一等兵は海兵隊だが、ブラッドリー衛生下士官は海軍所属のようだ。しかも肩章から二等兵曹クラスの下士官と思われるのだが、他の二名が結構タメ口なのがちょっと気になる。

 全体としてみれば、ストーリーの難解さという欠点はあるものの、他に非の打ち所もなく起承転結もしっかりとある良作といえる。欲を言えば、もう少し視聴者側に訴えかけるようなシチュエーションがあっても良かったが、あまりそれをやりすぎるとノンフィクションから逸脱してしまうので、まあこんなものかな。内容的にはアメリカ国旗星条旗の話なので、アメリカ人にとっては直立不動的感傷の濃い作品だったのだろうが、日本人にとってはやや興味薄。むしろ不謹慎だが、結末を知っているだけに、日本軍トーチカからの機銃掃射でバタバタと倒れ行く海兵隊員や砲台からの水平直射で破壊されるアメリカ戦車や艦艇には感無量。ただ、日本兵による虐殺エピソードは気にくわない。虐待や虐殺死体シーンはカットされていたが、虐殺行為はアメリカ兵も同じ事をしているはず。投降兵の射殺や無抵抗者の焼き殺しなど。そう言う所をしっかり描ききっていないのはやはりアメリカ映画だからこそ。
 「プライベート・ライアン」を超えるかどうかは、二部の「硫黄島からの手紙」の出来如何にかかっている。

興奮度★★★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★


(参考になるHP)
デタッチメント作戦(硫黄島攻略)

硫黄島関連の映画
硫黄島の砂 (1949)
硫黄島 (1959)
硫黄島の英雄(1961米)The Outsider

硫黄島関連書籍
硫黄島の星条旗 父親たちの星条旗 名も知らぬ遠き島より 闘魂硫黄島 名をこそ惜しめ 「玉砕総指揮官」の絵手紙 栗林忠道硫黄島(とう)からの手紙 散るぞ悲しき 硫黄島決戦 硫黄島の血戦

あらすじは、文字数の関係上 こちらの本体HP

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最終更新日  2006年10月29日 12時58分35秒
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