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2008年03月11日
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カテゴリ: 戦争映画
2008 TBS プロデューサー:島田喜広
出演者:仲村トオル、原田泰造、竜雷太、酒井美紀ほか
129分(正味80位?) カラー 


 昨日TBSで放映したテレビドラマです。録画しようと思いましたが、DVDレコーダーの調子が悪く(入ったままのメディアが出てこない!分解して取り出しました。)、急遽ビデオに録画しました。相変わらずTBSモード炸裂ですが(笑)、TBSにしてはまあまあの出来だったかなと思います。

 月曜ゴールデンの「シリーズ激動の昭和」で放映された、ドキュメンタリータッチテレビドラマ。1945年3月10日、東京は米軍のルメイ将軍指揮下のB-29爆撃機の大編隊により無差別大空襲を受けた。10万人を超える死者が出た東京大空襲を撮影した地上の写真は33枚しかないと言われる。本作はその33枚の写真を撮影した警視庁警察官、石川光陽を主眼に描いたものである。再現ドラマ形式に、記録映像、記録写真、CG、関係者のインタビューを交えた構成となっている。記録映像は、戦時中の日本のもの、アメリカ製作のものが見られる。
 警務課写真係だった石川光陽(仲村トオル)は当時41歳で、坂警視総監から記録写真を残せと命じられ、撮影したと言う。大被害の最中に見た凄惨な状況と、写真を巡る戦後の逸話が描かれている。このほか、幼い子供を守ろうとして殉職した、若き警察官刑部(原田泰造)の逸話が挿入される。

 東京大空襲の惨劇と、無差別爆撃のむごたらしさが映像からひしひしと伝わってくる。33枚の写真は、著名な親子の焼死体など見るに堪えないものであるが、決して目をそむけて通るわけにはいかないものである。死んだ10万人の親子、兄弟にそれぞれの人生があり、無縁仏として奉られる多くの魂の鎮魂を願わざるを得ない。逃げ惑う幼い子供たちの姿にはただただ、涙するばかりだ。そう言う意味で、本作の持つ意義は小さくない。

 ただし、ドキュメンタリードラマとしての出来は今ひとつ。2時間超えの長さにも関わらず、内容がちょっと浅い。とにかくコマーシャルが多すぎるのも辟易としたが、実質のドラマ部分は1時間分くらいしかなかったのでは。記録映像やナレーション解説、インタビューも断片的で、多角的な視点というものがほとんど見られない。最悪なのは、ラストに登場する筑紫哲也得意の何でも批判主義コメント。彼の政治的視点にもっていくための、恣意的な誘導編集がやたら目に付いた。そのため、無差別空襲に対する真実の検証や、亡くなった多くの日本国民の実情が真摯に描かれることはなく、本作が何を企図したのか焦点がぼやけてしまっている。1年間の取材というのが本作のうたい文句のようだが、今回取り上げられた東京大空襲のデータ類は、はっきり言って入門編程度のもので、新知見や深く掘り下げたものがまるでないのが残念。1時間もののクイズ番組レベルかな。
 石川がライカで撮った33枚の写真は我々に何を伝えてくれるのか、我々は何を伝えていくべきなのか。アメリカ軍の無差別爆撃は何故起こったのか、その実態とは。本来はそうしたところに企図が向くのだろうが、本作では何故か、米軍の新兵器、しまいにはベトナムのナパーム弾、イラク・アフガンのクラスター爆弾批判に向かっていく。あー、やっぱりそういう方向に作りたかったんだなあ、と思わざるを得ない。
 また、ルメイ将軍に司令官が替わってから無差別爆撃に切り替わったこと、戦後にルメイが日本政府から叙勲されたことなど、ルメイの行った罪について検証していくことは重要なことであるが、それが単に批判だけに終わってしまうのはもったいない。本作でも若干触れられてはいたが、ルメイは何を考えていたのか、ルメイの国際法違反命令に米兵は何故反対できなかったのか、その時アメリカ政府はどのように位置づけていたのか、米軍の無差別爆撃に日本はどのように対応したのか、と言った部分についてもっと突っ込んで欲しかった。戦時の狂気というのは、軍人や政府だけでなく、一人一人の国民の意識にも直結しているものだからだ。確かに、国民は被害者ではあるけれど、被害者意識だけでは戦争の惨劇から逃れることはできない。国民の一人一人が国体を形成していた訳であり、戦争行為とは単に善悪二元論で評価できるほど単純ではないはずだ。

 ドラマ部分の映像やCGはなかなか秀逸。燃え盛る火のシーンや焼夷弾落下シーンはかなり迫力ある。画面から熱さも感じるし、圧迫感と凄惨さが十分に伝わってくる。これだけしっかりとした映像、CGで描いていたので、もっと、33枚の写真に焦点を絞ったドラマ部分だけにするか、東京大空襲のドキュメンタリーに特化するか、どちらかの方が良かったのにと思う。本作のようなドラマにインタビュー挿入形式は、どうもしっくり来ないのだ。もちろん、ドキュメンタリーにするならもっと多角的、深層的な取材は必要だろうけど。
 ドラマ部分に描かれたストーリー自体は悪くないし、アメリカの無差別爆撃の再評価の契機という点では貴重な作品である。個人的にはドラマ仕立てにして欲しかった。妻と子供の遺体を見つけて慟哭する警察官のシーン。それだけで十分伝わるものはあるだろうに、どうしてもそれだけで終わらせることができなかったのだね、TBS。願わくば、他局でもう一度作り直して欲しい(笑)。




興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★★★







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最終更新日  2008年03月11日 12時24分17秒
コメント(8) | コメントを書く
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教えてください  
Yamaki632 さん
全体に何か違うドラマを見ているように思えましたし、決定的ないくつかのテーマ・事実も見落としているように感じたので、いくつか教えてください。
>多角的な視点というものがほとんど見られない
あなたの言う多角的とは何?何を期待したのですか?

>本作が何を企図したのか焦点がぼやけてしまっている
>恣意的な誘導編集がやたら目に付いた
このドラマ+ドキュメンタリーはよくできていたし、製作者のメッセージ、訴えたい主題はよくわかるように思ったのですが、あなたは本作の企画は何で、どの方向に誘導されたと感じたのですか?

>今回取り上げられた東京大空襲のデータ類は、はっきり言って入門編程度
このドラマでは関東大震災の被災地域と東京大空襲の被災地域は意図的に同じになっている事が述べられています。また日本家屋を作り実際に爆撃実験を行った様子も見せていました。こうした事は従来知られていなかったように思うのですが、ご存知でしたか、ご存知ならどんな出典から知っていたのですか? (2008年03月11日 14時09分45秒)

Re:教えてください(03/11)  
kapon2  さん
Yamaki632さん こんにちは
>あなたの言う多角的とは何?何を期待したのですか?
 ドキュメンタリーという前提で、米軍側内部の検証、日本軍部の検証が希薄。何故、無差別空襲に至ったかの検証がありましたかな。従って、ドキュメンタリーとしての体をなしていないと判断。私はあくまでドラマを期待。

>このドラマ+ドキュメンタリーはよくできていたし、製作者のメッセージ、訴えたい主題はよくわかるように思ったのですが、あなたは本作の企画は何で、どの方向に誘導されたと感じたのですか?
 本文に記述済みですが、「石川がライカで撮った33枚の写真は我々に何を伝えてくれるのか、我々は何を伝えていくべきなのか。アメリカ軍の無差別爆撃は何故起こったのか、その実態とは。本来はそうしたところに企図が向くのだろうが、本作では何故か、米軍の新兵器、しまいにはベトナムのナパーム弾、イラク・アフガンのクラスター爆弾批判に向かっていく。あー、やっぱりそういう方向に作りたかったんだなあ、と思わざるを得ない。」

>このドラマでは関東大震災の被災地域と東京大空襲の被災地域は意図的に同じになっている事が述べられています。また日本家屋を作り実際に爆撃実験を行った様子も見せていました。こうした事は従来知られていなかったように思うのですが、ご存知でしたか、ご存知ならどんな出典から知っていたのですか?
 米国戦略爆撃調査団報告書を参照されたし。国会図書館、防衛省でも閲覧可能。戦災資料センターにもあるようです。ちなみに、輸入盤ドキュメンタリー映画ならばもっと古い時期に言われていたと思いますよ。詳しくは失念。
(ぐぐって参考) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-03-06/15_01.html (2008年03月11日 15時51分59秒)

Re:教えてください(03/11)  
kapon2  さん
追記

 米国戦略爆撃調査団報告書を利用した、空襲に関する書籍ならば、全国各地の空襲に関する刊行物がたくさんあります。1機1機の飛行コースや秒単位の時間まで写真付きで記されているものもあります。日本にコピーが譲与される前に、アメリカまで行って調査した例もたくさんあります。

 軍需工場目標から、エリア焼失型目標に転換された検証資料は山のようにあります。しかし、今回の放送はその資料を有効に活用はしていません。だから、あくまで入門編なのです。
 そんな中途半端なドキュメンタリーを作るのならば、ドラマにしてしてしまえばいい、というのが見解です。

 貴殿は本作を見てどのような感想をお持ちでしたか。主題は何だと思いましたか。
 いわゆる、巷のドキュメンタリー作品と比較して同等と思いましたか。
 ちなみに、ドキュメンタリーとは、制作者の企図を伝えるのではなく、事実を客観的に伝えるもの。ドラマは制作者の企図を伝えるものと定義しています。 (2008年03月11日 16時15分48秒)

Re[1]:教えてください(03/11)  
Yamaki632 さん
kapon2さんへ
お返事ありがとうございます。おおよそ想像していた通りでした。
 この番組の最大のテーマは最後の石川さんの娘さんの言葉「写真がなくなれば、証拠がなくなってしまうと思った」でしょう。2007年の一連の歴史的事件に関する一部の日本人の言動はまさにそれを裏付けており、番組はその動きを受けてこのラストになったのだな、と納得というのが私の感想です。禁欲的で盛り上げないドラマとドキュメンタリーの結合は涙を流させるだけだとして評判の悪い、今までの戦争ドラマへの新しい試みだと思いますし、事実への一般的理解からすると十分新情報があったと思います。察する所あなたは古いタイプの戦争映画がお好きなようですね。
 また焼夷弾がクラスター爆弾の一種であり、それを廃止すべきだという運動がおきているのは事実です。63年前にクラスター爆弾で多大な民間人の犠牲をだした国民として、こうした運動をTVが伝えることは賞賛されこそ、批判されるべきではないと思います。
 それともあなたは民間人への無差別爆撃も、その延長である都市への原爆使用も賛成なのでしょうか?そういう視点で開発史を期待したのですか?
参考のために書くと、なぜ東京大空襲が行われたかについては、現在研究者により研究中でありつい最近も発表がありました。そういう事情を考えればこの番組でのアメリカ側の取材部分は、十分な意味があったと思いますが如何でしょうか。発表=1: http://www.asahi.com/national/update/0310/TKY200803100199.html 、2: http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080302-00000006-mailo-l13 (2008年03月12日 00時40分58秒)

Re[2]:教えてください(03/11)  
kapon2  さん
Yamaki632さん こんにちは

 まず始めに言っておきますが、私のブログは映画・ドラマの個人的論評です。評価が★2.5というのはテレビドラマとしてはかなりの高評価だということを言っておきます。「本作の持つ意義は小さくない。」「ドラマ部分に描かれたストーリー自体は悪くないし、アメリカの無差別爆撃の再評価の契機という点では貴重な作品である。」

> この番組の最大のテーマは最後の石川さんの娘さんの言葉「写真がなくなれば、証拠がなくなってしまうと思った」でしょう。
 ドラマ部分についてはその通りだと感じました。だとすれば、むしろGHQや日本政府が写真をなき物にしよう?とする背景に焦点が当てられるべきで、本当にそういう意図だったのかどうかの部分がまるで抜け落ちておませんか。それがないのに、その後のクラスター爆弾批判につながるのは恣意的だと思うのです。

 ドラマ+ドキュメンタリーの出来が悪いというのはあくまで私の見解。新しい試みだろうが、出来が悪ければダメです。ちなみに、このタイプはドイツのTV「ヒトラーの建築家」でも試行されていますが、私の評価は同様です。それについての価値観が人それぞれなのは当たり前ですね。これ以上何と言われようと評価は変わりません。

>こうした運動をTVが伝えることは賞賛されこそ、批判されるべきではないと思います。
 それともあなたは民間人への無差別爆撃も、その延長である都市への原爆使用も賛成なのでしょうか?そういう視点で開発史を期待したのですか?
 どこを読めばそういう風に受け取れるのか疑問です。関連するであろう、私のスタンスは当ブログで過去にいくつか書いていますので参考まで
(2008年03月12日 09時41分21秒)

Re[2]:教えてください(03/11)  
kapon2  さん
続き戦争反対と歴史教育に思ふ
http://plaza.rakuten.co.jp/kapon2/diary/200412270000/
国家間戦略と平和のありかたに思ふ
http://plaza.rakuten.co.jp/kapon2/diary/200504210001/
無防備都市宣言、に思ふ
http://plaza.rakuten.co.jp/kapon2/diary/200505170000/
ホワイトバンド?!でちょっとだけ思った事
http://plaza.rakuten.co.jp/kapon2/diary/200509070002/
「軍命令は創作」初証言 渡嘉敷島集団自決に思ふ
http://plaza.rakuten.co.jp/kapon2/diary/200608280002/
 その上で、貴殿の言う「運動」が平和運動のことであるならば、私は運動理念を批判はしないまでも、こうしたドラマやドキュメンタリーとしてテレビメディアに乗せることに憤りを感じます。現実の平和運動とは「理念」と「思想」の両者があることをお忘れ無く。私は無差別爆撃も、原爆もあってはならないと思う平和主義者です。ただし、それを実現するにあたり、反対だけを唱えるのではなく、真実と現実を直視して解決策を探るべきと考えるのです。
 最後に、私も戦史に関しては研究者のはしくれです。英語が余り読めないので、たいした研究はできていませんが、少なくとも本作は調査・研究に依るといったレベルではないと感じます。あくまで、これは私の価値観ですが。 (2008年03月12日 09時54分24秒)

Re[3]:教えてください(03/11)  
Yamaki632 さん
kapon2さん
お返事ありがとうございます。あなたが戦争に反対の立場であると聞いて安心しました。その上でもう少しお聞きしたい。
>戦争という現象は「反対」とか「賛成」するというような性格のものではない
>ドラマやドキュメンタリーとしてテレビメディアに乗せることに憤りを感じます
戦争反対などの平和的メッセージを基軸としたドラマは製作するべきではなく、ただ起きた事をそのまま伝えるべきだという事のように受け取りました。しかし、
1日本の戦争映画のほとんどは強い戦争反対のメッセージを基調に製作されているように思われますがどうお考えですか?
2逆にWW2後のアメリカの戦争映画はほぼ全て、戦争には正当な理由があり必要であれば戦争をすべきだという考え方の下に製作され、その中でそれを実行する兵士を主人公として英雄的に描くことで映画的に魅力的なものになっているように思いますが如何でしょうか?
3またあなた自身が、そういうアメリカの戦争映画を好んでいるように感じられるのですがどうなのでしょうか?
以上直裁な表現で失礼かもしれませんが、出来ればお教えください。 (2008年03月12日 14時48分53秒)

Re[4]:教えてください(03/11)  
kapon2  さん
Yamaki632さん こんにちは

 正確には「戦争を回避するよう努力する立場」です。穿って言えば、「反対」とは敵対対象を作ることであり、それが紛争の要因につながるからです。

 平和メッセージと平和思想運動とは異なります。現在ある平和運動のほとんどは、思想団体の影響下にありますよね。また、TVは映画と異なり、放送倫理規定があるように、公平性を期すべきだというのが持論です。
 もちろん、社の確信犯的意向で思想を取り入れて制作するのは勝手ですが、私は批評します。ましてや、ドキュメンタリーと標榜するのならば、なおさらのことと思います。

 映画は商業ベースですから自由です。ただし、ドキュメンタリーが偏向していれば、私は出来具合として批評します。ドキュメンタリー以外については勝手にどうぞのスタンスです。

 私は戦争映画好きというよりは、興味・感心がある立場です。戦争映画はただ平和メッセージを伝えるだけでなく、人としての生き方、極限状態での狂気、時代の背景、世相など色々なものがわかります。製作者の意図以上の物が隠れています。ですから、貴殿の言うようにアメリカ映画は、自己保全に徹底しているのが逆に興味深いわけです。そう言う視点で見ればいいわけです。
 私は趣意にあうものだけを見ているわけではありません。

 その上で、
1 必ずしもそうではないと思います。ただ、人情ものが多いので、結果そういう流れにはなりがちでしょう。
2 アメリカに限らず、戦勝国の映画は皆そうでしょう。ただ、多くは友情、勇気の美として描かれているのでは。
3 貴殿がそう思うのならそうなんでしょう。私の戦争映画の価値観は、史実に沿っているか、戦場心理・人間描写が秀逸か、時代背景が明確に描かれているか、そして娯楽性、映像美を加味しています。自分でも、自分の価値観が良くわからないのだから、そんな単純なものではないでしょう。 (2008年03月12日 19時35分27秒)

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