日々のあぶく?

日々のあぶく?

September 30, 2005
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カテゴリ: 本
警察内部を書かせると際立つ上手さ。

内部のいざこざ、夜討ち朝駆けする記者との駆け引き、
生々しくなるほど魅力を増すキャラクター達が集結している。

F県警本部、捜査第一課一班~三班の面々がそれぞれ主役を張る短編集。

沈黙のアリバイ:
"落ちた"はずの強盗殺人事件の犯人(共犯者である主犯格は逃亡中)湯本が初公判時に突然、無実を訴えた。
湯本は策略を企て、自分の罪を冤罪にさせようとしている。
一班班長・朽木は捜査の洗い直しと共に警察の対面を守る事に躍起な上司、担当した部下・島津、容疑者・湯本の狙いについて考える。

狡猾な犯人、重圧に押しつぶされた部下、笑わない男・朽木の姿が描かれる。

第三の時効:
幼なじみの人妻を襲い、その夫を殺して逃亡中の武内の時効はもうすぐ切れる。
高飛び(海外逃亡)をしていた期間は時効延長されるため、彼には殺した日(第一の時効)、本当の時効(第ニの時効)があった。
事件時に妊娠した被害者の娘は武内の子だ。
時効が切れたら連絡をしてくるとふんで彼女の家を張る二班の面々。
しかしそこには公安上がり、班内での意思疎通も乏しく、冷血と揶揄される二班班長・楠見の姿はなかった。
第ニの時効寸前に姿をあらわした楠見は"第三の時効"の存在を手伝いに廻された一班の刑事・森に漏らす。
第三の時効とは?

囚人のジレンマ:
F県警本部の捜査第一課長・田畑は現在請け負う3つの殺人事件に頭を痛めていた。

存在も強く、常勝集団を率いる一班班長・朽木、
冷静だが情のかけらもない公安上がりの二班班長・楠見、
少々荒っぽいが人離れしたカンの鋭さを見せる三班班長・村瀬。
それぞれ操作方法は違えど一般刑事の「執念」「職人」「プロ根性」という構えを越えた
「情念」「呪詛」「怨嗟」を思わす構えで取り組む彼らを見ていると、

冗談を言えるような、労うような心の潤いのない乾いた職場に思えて仕方がない。
記者とのやり取りも一歩間違えばスクープにされてしまうため気が抜けない。
退官間近で以前世話になった現三班主任・伴内のことも気にかかる。
それぞれの手腕を生かし、時には背筋の凍るような追い詰めを見せて犯人を"落とし"ていく彼ら。
田畑も時には自分を囮にして記者をひきつけ捜査に協力する。
しかし、競い合う意識ばかりと思ったが、事件の繋がる中で彼らが伴内に花を持たせようとしている思惑に気付く。
囚人のジレンマとは共犯がいた場合に、相手を信じきれず、最後は自分しか信じるものがなくなって("落ちる"か否か迷い)陥るものである。

密室の抜け穴:
イヌワシは二つ卵を産むという。時差付きで生まれるよう。一羽目の保険でもう一つ。
しかし、一羽目が普通に生まれた場合、二つ目は一羽目によって壊されるという。
親の思惑とライバル達の蹴落としあい、それはここでも起こっている…。
天才的ともいえるカンで初動捜査を引っ張る三班班長・村瀬が脳梗塞で倒れた。
代理班長となった東出の指揮する事件で容疑者が逃亡。
応援だが牽制しあった暴対課の湯浅・小浜、同期で同じ班のライバル石上、それぞれの思惑もあり責任の置き所を追及される東出。
その責任追及のための会議を招集したのは復帰してきた村瀬だという。
不毛に見えたその先に見える真相とは?

ペルソナの微笑:
現在一班の末席に身を置く矢代は幼少時に知らないうちに犯罪の一端を担わされた過去があり、それ以降、偽りの笑いとおちゃらけた言動で自分を包んでいる。
一班が事件の打上げをしている時、隣県で青酸カリによる毒殺する事件が起こったとの連絡が入る。
以前、青酸カリが盗まれた時に起きた殺人事件は何も知らない子どもが媒介「道具」「傀儡」となった「間接殺人」事件が起きていた。
事件にあたることになった矢代は自分と同じように「道具」となった(当時「傀儡」となった)子供に会いに行く。
矢代と同じように偽りの笑みを張り付かせた青年となった彼。
未だに彼に会いにくるという朽木の狙いは?

モノクロームの反転:
一家三人刺殺事件、舵を取るのは三班だが、応援として一班も配置される。
お互いが牽制し合い、捜査が混乱する事を危惧する捜査部部長・尾関。
反対にそれが効果的になると考え配置を命じた課長・田畑。
水と油、ライバル新剥き出しで捜査に挑む両班。
村瀬のカンと仕事人・朽木の読みが合わさって見える犯人像とは?


骨太の小説、という表現を使うのはこういう作品のことだろうな。





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Last updated  September 30, 2005 03:12:13 PM


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