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【遠く離れてただひとり~All Alone Far Away From Home】 米カリフォルニア州クラマス河河口 1991年6月誰もいない夕暮れの海岸。曇っているせいか夕陽は見えなかった。どんよりとした灰色の空は、見る者を重く、憂鬱(ゆううつ)な気分にしてしまう。波は静かに、規則正しく、寄せては返していた。辺りは次第に薄暗くなっていく。すぐそばには灰色の海、浜辺の砂もなぜか灰色をしていた。その砂の上に、大小多くの流木があちこちに死体のように転がっていて、それはまるで流木の墓場とでも言うべき光景であった。直径1メートル・長さ5メートルほどもある巨大な、灰色がかった流木が、果たしてどこからこの岸辺にたどり着いたのか僕には知るよしもない。寂寞(せきばく)とした風景の中で、僕はふとこの海の向こうにあるはずの我が故郷のことを思いやった。海から吹く風が肌に冷たく、僕はジャケットを羽織り、火を起こすことを思いついた。辺りに散らばっている流木の小枝を拾い集めるのはいとも簡単なことだった。流木はどれも乾き切っていて火をつければパチパチと言う音を立てて勢いよく燃える。メラメラと燃え上がる炎をじっと見つめていると、僕の心は不思議と和(なご)むのであった。カリフォルニア州北部、クラマス河が太平洋に注ぎ込む、その河口にあるキャンプ場。今宵も僕は1人。キャンプファイアの夜、フォークダンスでも踊りたかったがあいにくパートナーはいない。火があることで幾分元気づけられたものの、1人の夜はやはり長い。流木を次々と火にくべる。勢いを増した火は僕の背丈を越えるほどになり、その炎は荒れ狂ったかのように燃え上がった。バーボンウイスキー入りのホットチョコをすすりながら、冷えた体が芯まで温められるのを感じた。僕がここにいるのにはそれなりの理由が存在する。僕は何か「見えない力」によってここまで導かれたのだ。(…続きを読む)
2008.04.20
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上の写真は、メキシコ人のマヌエル・ウリベ氏、体重550kg。成人女性10人分くらいはあるだろうか。こんなにも重くなるともう一人では何もできず、介護が必要らしい。ベッドも特注。肉の塊が床ずれすることもあるに違いない。気になるニュースが3つあった。* * * * *「コーラの販売全面停止へ 米小中学校、肥満増加で」米国飲料協会(ABA)は4日までに、小中学校でのコカ・コーラなど糖分の多い清涼飲料の販売を3年後に全面的に停止すると発表した。2008年の新学期から全米の75%の学校で販売をやめ、09年の夏休み後の新学期から全面停止する。米国では子供の肥満が増えており、学校の自動販売機や食堂で簡単に手に入る清涼飲料に批判が集まっていた。コカ・コーラなど伝統的な清涼飲料は姿を消し、販売できるのは、水のほか、加糖していない果汁100%のジュース、脂肪分の少ない牛乳だけとなる。(毎日新聞 2006年5月5日)「学校でジュースはダメ=子供の肥満防止で」オーストラリア南東部のビクトリア州政府は、公立の小学、中学、高校にある売店や自販機でのジュースの販売を今年中に禁止することにした。豪州では子供の肥満の増加が社会問題化しており、ジュースはその一因とされている。販売だけでなく、持ち込みも認めない方針で、私立学校にも同調するよう呼び掛けている。販売が禁止されるジュースは砂糖入りの炭酸系が中心で、砂糖ゼロや低カロリーの飲料は除外されるもようだ。豪州では太り過ぎの子供が近年、急速に増え、20~25%が肥満状態。州政府によると、食生活に問題があり、10代の子供の3人に1人がジュースを毎日2缶、10人に1人は1リットル以上飲んでいるという。(毎日新聞 2006年5月2日)「ディズニー、マクドナルドと契約延長せず」8日付米紙ロサンゼルス・タイムズによると、米娯楽大手ウォルト・ディズニーは、ファストフード大手マクドナルドの子供向けおまけに認めてきたディズニー・キャラクターの使用についてマクドナルドとの契約を延長しないことを決めた。マクドナルドのハンバーガーやフライドポテトなどが深刻化する子どもの肥満の一因となっているとの批判を受けた形。米国では子どもの4割が太りすぎとされ、ファストフードや清涼飲料の子供向け販売への風当たりが強まっている。同紙によると、現行の契約でマクドナルドはディズニー・キャラクターの使用料として年間、約1億ドル(120億円)を支払っている。(共同 2006年5月9日)* * * * * 肥満が人類滅亡に大きく関わっているということだろうか。カナダのトロントで映画館に入った時に、小学校低学年くらいの子供たちが親に連れられて映画を見にやってきた。片手にはバケツ1杯分のポップコーン、もう一方の手には1.5リットルは入るカップに入ったコーラ。幼い頃からの食生活が自分の人生にどんな影響を与えるか、早い時期に教え込んでおくべきだと、その時思った。「食育」という言葉を時に耳にする。食べることに関しての教育である。親が子供にお金を与えれば、子供はコンビニに駆けて行って、好きなものを買って食べるだろう。コーラやポテトチップスなどのスナック類を買わない子供はまずいない。人工の調味料で慣らされた舌を持った子供が親になれば、その子供も同じような嗜好を持つ。共稼ぎのために、家で食事を作る親も減ってきている。できあいの惣菜やインスタント食品で食卓が飾られる。「『お袋の味』って何なんだ?」という子供がこの世に登場する日もそう遠くはなさそうだ。ジャンクフードで汚染され、カロリー過多の食生活が肥満児を大量に生み出す社会。環境破壊は実は人間の世界にも暗い影を落としているのだった。良識ある食生活を、国が、自治体が考えていかなければならないというのはなんとも悲しい時代。清涼飲料水の自動販売機を撤去したり、ディズニーがマックと契約を打ち切ったりするくらいで解決するほどの単純な問題でもないのだが、これらが、「飽食の時代」という言葉だけで簡単に片付けてしまうには、あまりにも深刻な問題となりつつあるということに気づかなければ…。
2006.05.13
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