ゴミ女の部屋無残!(画付)


 不動産会社には、入居をお世話する人間と退去をお世話する?人間がいる。
私は当然、後者のほうであるが、今日もスケジュールがぎっしり埋まっている。

今日の一番の悩みごとは滞納者の部屋への入室である。3時に滞納者の連帯保証人である、父親と現地で待ち合わせ入室する事になっている。

父親のほうはすでに状況を感じ取っているようだ。滞納者は40歳の独身女性である。電気メーターやガスメーターはしっかり回っているので、多分生活はしていると思うが。

室内の状況が気にかかる、この物件は1DKだが対面式キッチンで内部はフローリングでなかなか美しい物件である。●●●●ー●ル●である。

さっそく4階まであがりドア、チャイムをならすが返答はない。父親も先にきて同じことをしたみたいだった。

鍵を回し、レーバー型のノブを下ろしドアを開ける。ゲッ・・・・・・・・・・。次の言葉がでない。部屋はすでに部屋として、人間が寝泊りできるようなスペースがない。

奥の部屋にセミダブルのベットがあるが、あるらしいが、ベットとしての機能は全くなく、あるのはゴミの山である。そう、彼女はゴミの中で暮らす人だったのだ。

 なんの躊躇もなく土足であがる。父親も「うーん・・・・。」と言ったきり言葉がでない。奥のベッドルームにいくのが大変だった。

ふと見ると畳1畳の半分ぐらいのスペースがゴミの中でわずかにあいていた。まわりはゴミの山、きっとこのスペースで寝泊りしていたのであろう。

奥のベットルームまで、なかなか進めない。生活ゴミのバリケードはかなり強敵である。まさかの気持ちで必死で突き進むと、あるのは、ゴミだけだった。

一応、ほっと胸をなでおろし、振り返るとおしゃれな対面式キッチンは小蝿が飛び交い、くもの巣がはっている状況である。

残りはトイレとバスルームであるが開きたくない気持ちがあふれ出てくる。ゴミを掻き分けまず、トイレから、「・・・・。」書けない状況になっている。

 彼女は契約書によると国産婦人服高級ブランドショップの販売員であったはずだが、微塵にもそのムードは見当たらない。                          
「ひどい・・・。ひど過ぎる。」父親が静かに発した一言、続く言葉に驚いた。

「以前よりもひど過ぎる!」以前もあったのか!
私「以前というと当社の前の入居先ですか?」 
父親「はい・・・。前も同じ状況でした。しかしこれほどとは、思いませんでした。今度はキチンとするからといっていたのに・・・。」

がっくりと肩を落とす父親に慰めの言葉が見当たらない。よく見ると大型テレビ、ベット横のテレビデオ、なんとパソコンまでがしっかりゴミの山に埋もれている。

父親「娘はカードですぐ欲しいものを買ってしまうので・・・。」
ポストの中は当然カード会社やサラ金会社の督促状がぎっしり詰まっていた。

「お父さん、解約しましょう。いや、解約すべきです。このままの状態ですとさらに悪臭がとれなくなり、修繕費用もかかります。もはや部屋としての機能はありません。明日、特殊解約書を書きにきて下さい。」 
「そうします。それと家賃はどのくらい滞納してるのですか?」 
私「約15万ぐらいですね。」

ちょっとほっとしたような父親の表情だった。彼女の性格が明らかになるの明日だった。

6月10日
 湿度の高い天候である。昨日の父親がくるのはお昼1時30分頃だ。先に●●●―ル●に行かないといけない。

管理部の巡回用の車を借りよう。イグニッションキーをまわす、金属音の鈍い音が全身に伝わる。ツーシーター(二人乗り)、ドアミラーミッドシップタイプのエンジン配置、

まさしくスポーツカー風であるが、実際は田舎の田んぼトラック!今日はこれで6月3日退去予定だった滞納者の引越し荷物をいくらかでも運んでやらないといけない。

ここの彼女(年配の女性)だが、どうにか次の部屋を見つけて来たのだった。なんとか少しでも荷物を移しておけば退去も早まるだろうと、私も必死である。

聞けば2階にある4.5畳のワンルーム。2階と聞いてさらにガックリ!行って見てさらにため息、狭い階段である。

1階はコインランドリー、3階立ての物件だった。
「まぁ3階でなくてよかったか」と自分を慰める。

出来るだけ家具の処分をすすめリサイクルや古道具屋に電話をさせる。思い出深いものがたくさんあるらしいが、多分もって行ってくれないだろうと思う。

 とりあえず一旦帰社しないといけない。昨日の父親が解約書を書きに来る時間が迫っている。

 昨日の父親がきた。話を聞いてみると昨日の夜は娘の立ち寄り先を全て探しまくったらしい。
「どこか住み込みでもいって暮らしていればいいのだけど・・。」
不安げに重い口を開く。

解約書を書き、滞納家賃と7月9日退去までの日割り家賃合計18万円を支払ってくれた。ゴミの山は便利業者に頼むらしい。

あとはゴミが無くなった時点での部屋の修繕費である。スペアキーを渡し、再度今日、入室をお願いする。
「一応、写真をとっておきますから」

 先に現場につくと父親のワゴン車が入ってきた。みると後部座席に母親が乗っていた。足が悪いのか、4階までの階段がつらそうだった。再び入室だ。 つづく。
ゴミ部屋


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