キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

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2007.01.07
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九州耶馬溪の国道沿いに、「しゃらの木」という店はある。
清々しい雰囲気のほのぼのと心やすまる店である。

安部さんはなにげなく車を停めた。
「しゃらの木」。面白い名前だ。どんな店なんだろう。
安部さんは考えようとして考えることをやめた。安部さんは疲れていた。 

安部さんは、福岡県内で、電気店を経営していた。
三十年前に、東京で働いていた電気店を辞めて、ひとりで故郷の福岡に小さな電気店を開いた。
バブル時期などもあったが、安部さんが頑張ったせいもあって、

すべてがうまくいっていた。

それが、バブルがはじけるとともに、店の売り上げが減ってきていた。
そして、最近になって、大手の電気店が進出して、店は危うくなっていた。

「どうしたらいいのだろうな」
安部さんの悩みは深くなっていた。悩んでも仕方がない。
少し旅をしてみよう。安部さんは思い立ち、昨夜は日田で泊まり温泉に浸かった。
今日は中津へ行き小倉を通って、福岡へ帰る予定で国道を走っていた。
そして「しゃらの木」という店を見つけた。

安部さんは店の中に入った。店の中は、紙に覆われた灯りでほど良い明るさだった。
手作りの人形や小物を売る店らしい。古いお盆の上に小物が飾られていた。

「これは、うちの物置にあったお盆です。古いものは不器用ですが長持ちするのです」

リサイクルということだろう。安部さんはお盆をしげしげと眺めた。
そうだよな。うちのばあさんもこんなものを大切に使っていたよな。

「これは何ですか」
カウンターにお餅のようなものが置かれていた。
「お焼きというのです。耶馬溪の子供たちのおやつですよ」


たかな、ふき、シナモンなどが入っている。お茶とお焼きふたつで三百円だという。
田舎らしく素朴だよな。安部さんは注文をした。店の中央にある椅子に座った。

「この店にあるものは、ほとんどリサイクルですか」
安部さんは女性へ語りかけた。
「これらがリサイクルかどうかわかりませんが、
家にあるもんを持ってきて、きれいに磨いて使っているだけです」
女性が恥ずかしそうにいった。

「おまたせしました」
女性がが微笑みながらお茶とふたつのお焼きをそっと置いた。
安部さんはお焼きをひとくち食べてお茶を飲んだ。
これで三百円、こんなにおいしいのに、こんなにいい気持ちになるのになと思った。

安部さんは店の中をぐるりと見渡した。音楽もかかっていなかった。
時折、車の音、鳥のさえずり、女性たちの笑い声が聞こえてくるだけだ。

そうだよな。古いものがある。想い出に包まれるということかもしれないな。
古いものを大切にしている。
そうだ。うちの店も、売るものをもう少し大切に丁寧に扱おう。
それに、音楽をガンガン鳴らすのではなく
穏やかな気持ちで買い物を楽しんでもらうようにしよう。

そうそう、リサイクルではないが、修理部門を充実しよう。
安くなったからと買い換えを勧めるのではなく修理を勧めるのだ。
そうだよ。長い間、使っていた電気製品には想い出がいっぱい詰まっているものな。

「ありがとうございました」
お釣りを出しながら女性が恥ずかしそうに微笑んだ。
「いいえ、こちらこそありがとうございます。いい気持ちになれましたよ」
安部さんはおばちゃんに微笑み返しながら店を出た。

「今年はなにかいいことがありそうだ」
安部さんは車に乗ろうとして、「しゃらの木」方を見た。
すだれが風に吹かれてゆらゆら揺れていた。
安部さんは思い出したようにつぶやいた。

「そうなのか。このお店は、想い出を売るお店なんだ」


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Last updated  2007.01.07 11:57:14
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