北 の 狼

北 の 狼

Dec 9, 2003
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”自分が物事から受け取る印象というものは、自分自身の「心のありよう」の逆投影である”

”芸術作品は、鑑賞者自身の「心のありよう」を映しだす鏡のようなものということになり、さらに、優れた芸術とは、それを通して人の「心のありよう」をより深く、またはより明瞭にえぐりだすものということになります。”

前日に私はこう書いてますが、これは、(芸術に限らず)物事の見え方は本来的に人間の「心のありよう」すなわち<主観>によって規定される、という意味で一種の主観主義です。

対して、この主観主義と好対照をなす考え方があります。シュルレアリスムのことです。
シュルレアリスムの創始者といえば、1924年に『シュルレアリスム宣言』を起草したアンドレ・ブルトン(1896-1966)ですが、彼の『ナジャ』(1928)という本には、現実に内在する「超現実(シュルレエル)」がふいに露呈してくる局面がいろいろと記述されています。

いつもの見慣れた道を歩いていると、ふと普段とは違うように風景が見えてくることがある、こういう現象は時々経験することだろうと思います。
これを説明するにあたって、私は、物事の見え方を規定するのは「心のありよう」(<主観>)なのであるから、「心のありよう」が変化したので普段とは風景が違うように見えたのだ、としたわけです(主観主義)。

対して、シュルレアリスム的には以下のように説明できます。
物事の見え方は、普段は<主観>によって制約や規定を受けているが、ふと<主観>から解放され裸の「オブジェ」(客体=<客観>)が人間に訪れる瞬間がある。このことが、普段とは違うように風景が見えてくることがあるという現象の根拠である、と(客観主義)。


対して、そのような幻想体験は、<主観>によってでっち上げられたものではなく、むしろ物事の<主観>性が剥ぎ取られたが故に、<客観>的なオブジェとして外部から人間に否応無く迫ってきた結果なのだ、というのがシュルレアリスムとしての客観主義的立場です。

主観主義と客観主義、両者の違いは、単に作品を鑑賞する者(私)と創作する者という立場の差に由来するものなのか、それともそれらを超えて思想・哲学的に深い意味を持つものなのか。こういったことを念頭におきながら、シュルレアリスムについて考えてみたいと思います。





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Last updated  Dec 13, 2003 07:33:12 AM
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星野あい @ 私も、怖いの大好きです。 怖がりなのに、サスペリアとか、死霊のは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『マイケル・コリンズ』(01/15) <<トーベのミーさん>> >狼さんは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『ムトゥ 踊るマハラジャ (Muthu)』(06/05) <<メープルおばさん>> はじめまし…
北の狼@Wolf @ Re:まだあきが来ていません(06/05) <<ももにゃきさん>> >から、見な…
トーベのミー @ Re:『マイケル・コリンズ』(01/15) 血がいっぱい、流れたということを重視し…
メープルおばさん @ Re:『ムトゥ 踊るマハラジャ (Muthu)』(06/05) 初めまして。 これ渋谷まで見に行ったん…
ももにゃき @ まだあきが来ていません から、見なくていいかも?? 見るように…
北の狼@Wolf @ Re:ホロコースト(05/29) <<μ ミューさん>> >ホロコーストは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『生きてこそ ALIVE』(05/22) <<μ ミューさん>> >わたしもきっと…
北の狼@Wolf @ Re:深層(05/27) <<μ ミューさん>> >わたしにも、 …

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