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カテゴリ: 神話・伝承・民俗

 一般に 「魑魅魍魎」 とは、わけの分からぬ様々な化け物の類を指す言葉である。「昭和の妖怪」 とは、かの岸信介につけられた仇名だが、政界とか芸能界のような、一般社会とはやや懸け離れた特殊な世界に対して、ときに 「魑魅魍魎」 の住む世界などと言われることもある。もっとも、それはせいぜい程度の差にすぎないことで、どこの世界も同じようなものだとも言えるが。

 『史記』 の五帝本紀には、 「舜、四門にひんし、すなわち四凶族を流して、四裔にうつし、もって魑魅をふせぐ」 とあるが、「魑魅」 とは、山林の瘴気から生ずる怪物のことであり、「魑」 とは虎の形をした山神、「魅」 とは猪頭人形の沢神なのだそうだ。2体対をなすといえば、旧約聖書に出てくるビヒモスとリバイアサンという怪物もおなじみである。

 一方、「魍魎」のほうは『淮南子』に出てくるそうだが、山川や木石の精霊のことであり、山・水・木・石などあらゆる自然物の精気から生じ、人を化かすものなのだそうだ。姿かたちは幼児に似ていて、2本足で立ち、赤黒色の皮膚をして、目は赤く、耳は長く、美しい髪と人に似た声をしているということだ。

 それに対し、「妖怪変化」 については、江馬務という人が 『日本妖怪変化史』 の中で、「妖怪」 とは 「得体の知れない不思議なもの」 であり、「変化」 とは 「あるものが外観的にその正体を変えたもの」 であると分類している。

 すなわち、天狗や河童、座敷わらし、ろくろ首などの類が妖怪であり、傘だの下駄だのといった道具の精が姿を現して化けたものが、変化ということになるのだろう。夜になり家人が寝静まると、部屋の中の人形やいろいろな道具などがごそごそと蠢きだすといった話は、どこの国でもおなじみである。

「山川草木悉皆成仏」 とは、天台本覚思想の根本なのだそうだが、成仏しうるということは、逆に魔に堕ちる可能性も秘めているということだろう。そうして、魔に堕ちたものが、すなわち妖怪変化ということになるのだろう。

「怪力乱神を語らず」 というのは 『論語』 にある孔子の言葉だが、この意味は、自分は尋常でないこと、魔力や怪力、道理にそむき、国を乱すようなこと、不可思議なことなどについては語ろうとも思わないし、そのようなものの力に頼ろうとも思わないという意味なのだそうだ。

「はやく人間になりたーい」 というのは、ベム、ベラ、ベロの悲痛なる願いであったが、彼らがそれほど強く憧れ、なりたいと願っていた人間こそが、実はこの世で最も邪悪で卑劣な忘恩の徒であるということが、「妖怪人間」 というこの奇怪なるアニメの主題なのであった。

 人間のために戦ったべムらは、その三本指の手と変身後の 「醜い」 姿を見咎められ、魔物や悪人から救ってやったというのに、「お前らも仲間だろう」 と町や村の人間に追われ、最後には警官隊に囲まれた屋敷で炎に包まれて姿を消す。

 そういう人間のエゴイズムは、たとえばSF小説の元祖とも言われるメアリー・シェリーの 『フランケンシュタイン』 で扱われた主題でもある。生命の創造という野心に取り付かれたフランケンシュタインによって死体から作られた怪物は、無垢な魂の持ち主であったにもかかわらず、その醜怪な容貌のために人に疎まれ、「なぜお前はオレを作ったのだ」 と自己の創造主に対する怨恨と復讐の鬼と化す。

 言うまでもなく、人はみな不完全なものであり、誰だって間違いを犯しうる。だがだからこそ、間違いを犯したときは反省すればいいのだし、他人からの批判は、なによりもそのような反省のための契機となるだろう。「人間は不完全なものだ」 という言葉は、けっして自分や自分の親しい者らの誤りをごまかし、過ちに居直るために使われるべきものではない。

 人は自己の運命のすべてを左右できるほど自由ではない。だが、少なくとも自己の意思と力が及ぶ限りでは、過ちを犯すことはなるだけ避け、過ちに気付いたならば速やかに正すべきだろう。人間の自由というものは、そういう努力の中にしか存在しない。孔子様だって、 「過ちて改むるに憚ることなかれ」 とか 「過って改めざる、これを過ちという」 と仰っているのだし。

 「啓蒙」 とは、世界の隅々にまで理性という光を当てて、そのような魑魅魍魎や妖怪変化の類を世界から追い出すことだ。だが、いうまでもなくそのような魑魅魍魎や妖怪変化を生み出したのも人間自身である。

 「啓蒙」 によって薄暗がりから追い出された魑魅魍魎や妖怪変化も、もともとは人間自身の中に住み着いていたのだから、はるか上空に衛星が浮かび、光ケーブルで地球の裏側の人とも瞬時に通信ができるような時代にあっても、そのような先端技術と共存すること自体はけっしてありえぬことではない。

 いや、というよりも科学技術の発達した現代にあっては、ネットという仮想世界こそが、そのような人間の生み出す 「魑魅魍魎」 や 「妖怪変化」 にとって、最も住み心地の良い場所となっているのかもしれない。

 生物としての人間は、いかに文明が発達しようともほとんど変わっていないのだから、脳髄の作用である精神の働きもまた、デフォルトのままでは未開人も文明人もたいして違いはない。そこに違いがあるとすれば、それは人間が社会的存在である限りでのことだ。 「万物の共感」 という原理に基づいた 「魔術的思考」 とは、いわばそういう人間のデフォルト的思考のようなものなのだろう。






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Last updated  2008.10.19 13:30:44
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西欧にとっての外部二種  
三介 さん
今晩は、かつさん、お久しぶりです。
岩井克人氏の『資本主義を語る』で日本人論があって、そこで、「西欧にとっての外部は自然と機械[人工的創造物]二種」とか。機械のようにはたらく異質な日本はフランケン扱いだそうです。たしかに死刑を法相のサインなしにベルトコンベアー方式にして奉仕鋳なんていうお方が居たりしますから、魂なき機構が幅を利かす国なのかも?
その一方で、魂がキリスト化出来てないと看做した相手への西欧の暴挙[異教・異端への弾圧]も、懐疑精神が育つまで、苛烈やったんでしょうね。モンテーニュは、新大陸の食人族は確かに野蛮かも知れんけど、生きた人間を種種の拷問で甚振った上、殺すという点で、その野蛮人らより西洋人の方が野蛮と、批判しはる。魂の意味合いが変ったのか、自然[野蛮]から魂持つ者へと相手を格上げしたんか、こっちの[自然認識、或いは人類という枠の拡張という]面では、一応、近代は前進したんでしょうけど、機械・機構[法人や技術]を[突き放して]扱う懐疑精神は、追いつけないって気がします。もう少しスローに動いてくれんことには・・。
(2008.10.20 01:14:48)

Re:西欧にとっての外部二種(10/19)  
かつ7416  さん
三介さん、お久しぶりです。
>機械のようにはたらく異質な日本はフランケン扱いだそうです。

日本人も、別に昔から機械のように働いていたわけではないでしょう。そういう印象ができあがったのは、やはり戦後の急速な復興の印象が強いからでしょうか。「所得倍増」を打ち出した池田首相が、ドゴールに「トランジスタのセールスマン」呼ばわりされたなんて話もありますね。

>モンテーニュは、新大陸の食人族は確かに野蛮かも知れんけど、生きた人間を種種の拷問で甚振った上、殺すという点で、その野蛮人らより西洋人の方が野蛮と、批判しはる。

ルソーの「自然人」もそうですが、新世界とそこに住む人々の発見は、啓蒙思想に対してやはり大きな影響を与えてますね。それによって、西欧は自己を外部から見る目を得たということなのでしょう。むろん、植民地支配という「野蛮」も伴っていたわけですが。

ヘーゲルふうに言えば「歴史の狡知」ということになりますが、今は、表には見えない深いところで動いている微かな蠢動のようなものを信頼し期待するしかないような気がします。いずれ、「あっぱれ、老いたモグラよ!」という時代も来るのではないかと。
(2008.10.20 05:29:44)

デビルマン  
goldberg2006  さん
あれも、結局、人間社会を滅ぼすのは、人間の醜い心でした。

鬼太郎ぐらいのもんですかねー。
(2008.10.24 22:29:13)

Re:デビルマン(10/19)  
かつ7416  さん
goldberg2006さん
>あれも、結局、人間社会を滅ぼすのは、人間の醜い心でした。

>鬼太郎ぐらいのもんですかねー。
-----
報われぬヒーローというのは、石森章太郎ではおなじみの設定ですね。永井豪は石森のアシスタントをやっていたそうなので、その系列になります。「新造人間キャシャーン」は竜の子プロだそうですが、傾向としては同じですね。

水木しげると疎開世代の石森や横山光輝らとの違いは、戦争世代である水木にとって、人間の愚劣さはすでに論じるまでもない前提になっていることのような気がします。
(2008.10.25 01:35:03)

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