まさかの御懐妊!


そのころの私は、職場の上司がイヤでイヤでたまらず、ストレス発散の為、旦那様に許可を頂いて毎晩のように飲んでいた。
すると朝、朝食を食べるときにチョットむかつく様になった。「二日酔いかな?」
そんな日が続いたある日の仕事中、ある事を思いつく。「そうだ生理も遅れてる?」。
もう、そう思うと落ち着かなかった。それに、今までとは違う、確信めいたモノがあった。「私のお腹に中に赤ちゃんがいる」

私も主人も30歳を過ぎてからの結婚。
最初は、一日でも早く子供が欲しいと思い、それなりの努力をした。
3年を過ぎると、諦め気分になっていた。
それでも奈良のお寺へお願いに旅行へ出かけた。そしたら、本殿は改装中で仮のお宮でお参りという事になった。「そんなモンだよ」吹っ切れたような気がした。
不妊治療で大金を使い、神経をすり減らすより、2人で自分たちが楽しく生活できればいいと話し合った。
旅行資金の足しになればとパートへ出ていた。

 仕事帰りに妊娠検査役を購入。家についてすぐに試してみる。結果が出るのと一緒に、電話帳で最寄りの産婦人科の電話番号を調べ、診療時間を尋ねる。
シャワーを浴び、1枚しかないスカートをはいた。
そして1時間後、産婦人科の待合室にいた。初めての産婦人科。周りの人もみんな妊婦さんなんだろうか?私は妊婦かもしれない。これから、時々、この産婦人科へ通い。あそこの新生児室に私の赤ちゃんが並ぶ日が来るかもしれない。
それとも、何かの間違いだろうか?仮に妊娠していても、無事に赤ちゃんが生まれるだろうか?そんな事を頭の中でぐるぐる考えていた。

 内診を終え、別室に戻る。
穏和そうなオジイチャン先生が顔色一つ変えずに話し出した。
「妊娠反応が出ていますが、心拍が確認できません。血圧も高いですね。それから、子宮にポリープの様な物が見られます。こちらでは対応できないので、もっと大きな病院を紹介します。」
エッェ!普通、笑顔で「おめでとうございます。お目出度ですよ。」とか言ってくれるんじゃないの?心拍が確認できないって、ナニ?
もう不安しか湧き上がって来ない。
家に帰り、帰宅していた主人に話す。2人とも手放しで妊娠を喜ぶことは出来なかった。

 次の週、家から3駅ほど離れた病院。
「妊娠しています。心拍はまだ確認できません。子宮に筋腫があります。それでも妊娠を継続しますか?」
躊躇いはない「ハイ」と答える。何かお腹の中で赤ちゃんが育っているなら、どんな事をしても産みたい!
病院から主人に報告する。
自分の母親へも初めて孫が出来るかもしれないことを知らせる。

これからどうなるんだろうと言う不安も大きかったが、それでもやっぱり、お腹の中に赤ちゃんがいるという喜びの方がずっと大きかった。
お腹に向かって話しかけた。「ここに来てくれてアリガトウ。」



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