2002/03/18
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 児童文学全集に囲まれてそれを読み漁ったというような、幸福な幼年時代は私にはなかったので、私にとってマーク・トウェインといえば「ハックリベリー・フィンの冒険」のマーク・トウェインとしてではなく、「不思議な少年」のマーク・トウェインだった。それは、作者の死後勝手に編集された、本当のオリジナルとはいえないものだけれど。それでも私には重要な作品である。
 山下和美が週刊モーニングで「不思議な少年」を書かなければ、マーク・トウェインの岩波文庫版「不思議な少年」の存在を知っていて、紹介文に目を留めていて、気にかけていなければ、私とマーク・トウェインとの出会いはかなり遅くなっていたはずだ
 山下和美「不思議な少年」には魅力的なソクラテスも出てきたため、プラトンを手に取る助けにもなった。そのようにして読書は繋がっていく。
 先頃完結した、浦沢直樹「MONSTER」の終盤で、ある田舎の町を壊滅させる為に銃と狂気がばらまかれる。短編集の最後の一編「ハドリバーグの町を腐敗させた男」では、誠実で正直者ばかりの住人が居ると評判のハドリバーグの町を、一人の外国人がごくシンプルな手段で町の評判を地に落とさせる。でも結局「私はほかの連中とおなじように──不自然に、無理に、──正しい人間として暮らして来た」(最後に息を引き取る老人の台詞)ために、それだからこそ、町は元々壊れる運命にあったように思える。
 などと堅苦しく考えないでも、「私が農業新聞をどんなふうに編集したか」なんてドタバタギャグしか、ない。「エスキモー娘のロマンス」になると、不幸にして現代に生まれてしまった私達には、未開地の人間を馬鹿にしすぎているように見えてあまり笑えないけれど。

マーク・トウェイン「マーク・トウェイン短編集」(新潮文庫)





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Last updated  2002/03/18 05:13:21 PM
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