2002/04/28
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戦後短篇小説再発見5 生と死の光景/講談社文芸文庫 編
「生と死の光景」って、他のと比べてこれあ随分大ざっぱじあないかねと思いつつ、これまで読んだどの巻よりも良かった。

・正宗白鳥「今年の秋」
・島比呂志「奇妙な国」
・遠藤周作「男と九官鳥」
・結城信一「落葉亭」
・島尾ミホ「海辺の生と死」
・高橋昌男「夏草の匂い」
・色川武大「墓」

・川端康成「めずらしい人」
・上田三四二「影向」
・三浦哲郎「ヒカダの記憶」
・村田喜代子「耳の塔」


 ハンセン氏病患者収容所のことだと知ってしまうと、島比呂志「奇妙な国」に対する構えは違ってしまうが、知らずに読んだ分には、「何故このような作品を、このような作家を、私はこれまでちっとも知らずにいたのだろう」と思わせるほどの傑作。ただ、私は寓意性を無視し、物語は書かれたままの姿で受け取るのが好きなので、背景はやはり余分。先日はなんだか逆のことを思った気がするが。
 川端康成。「雪国」以外は、今回と同じようにアンソロジーに入った短篇しか読んだことがない。どれも嫌いだ。どれも、冒頭が良かったり、主題が良かったり、結末が良かったりするのに、それらを上回る嫌悪感を私に与える内容を持っている。何故評価されているのか、これまで読んだ分ではさっぱり分からない。よく出来ている=面白い なわけではない。
 色川武大「墓」は『怪しい来客簿』の中の一編。『狂人日記』と並ぶ傑作短編集。何度も読んだ気がするが、やはりまた読んだ。内容を忘れていたような気がしたが、思い出した。読み終えたが、思い出そうとしてみるが、思い出せないような気がするが、面白かったことは覚えている。多分また読む。
 そして、これまで読んだこのシリーズの中でも一番良いのが結城信一「落葉亭」。どうも私は、藤枝静男の茶器趣味や森内俊雄の小筆蒐集などの、爺さん趣味、「落葉亭」の場合は庭園造り、そういったものについて書かれたものが、非常に好きらしい。作者の思い入れが強いというのもあるし、老境に入ったからこそ書けないものを、自らの愛する事物に託した文章は、とても真摯で、美しく、また楽しそう。実際、大きな岩の上に寝そべってみたくなった。大きな庭のある家を持つことが出来たなら、庭に巨岩を置きたくなった。それだけではなく、このような小説に出会えて、とても嬉しかった。

戦後短篇小説再発見〈5〉生と死の光景(講談社文芸文庫)
2002/04/28 23:59:46

戦後短篇小説再発見3 さまざまな恋愛/講談社文芸文庫 編
 高橋源一郎が老けていた。たまたまテレビをつけると高橋源一郎に似たおじいちゃんが映っていたので、高橋源一郎に随分よく似てるなあと思ったら、このおじいちゃんは高橋源一郎という作家ですとテロップが出た。ああこの高橋源一郎に似ているおじいちゃんは高橋源一郎という作家なのかと思ったら、高橋源一郎が随分と老けたことに気付いた。以前テレビで見たのが、昨年10月のBSマンガ夜話。「まだまだ若いなあ」と思ったことを覚えているから、今日のテレビほど白髪だらけではなかったはず。


・山川方夫「昼の花火」
・檀一雄「光る道」
・岩橋邦枝「逆光線」
・丸谷才一「贈り物」
・大庭みな子「首のない鹿」

・野呂邦暢「恋人」
・高橋たか子「病身」
・大岡昇平「オフィーリアの埋葬」
・山田詠美「花火」
・宇野千代「或る小石の話」
・高橋のぶ子「浮揚」

 檀一雄「光る道」が素晴らしい。だがこれは恋愛小説ではなく、中世の幻想小説として読んで素晴らしかった。勢いも良い。あとは・・・高橋たか子くらいか。丸谷才一のは「歴史の証言」の巻に入ってても不思議ではない。
 ところが解説を読んで驚いた。「或る小石の話」は宇野千代94歳の時の作品であり、「首のない鹿」は大庭みな子がアラスカ在住の時に書いたものであり、高橋たか子は高橋和己の妻(これは知ってた)であり、フランスに渡り修道女となった人である(その後戻ってきた)。それらを知ってしまうと、作品に対する思いも大分違ってきてしまった。特に宇野千代には打ちのめされた。老人の性欲自体には、少なくとも72~3歳までは祖母と性的生活を営んでいた祖父の日記を読んだので驚きはしないが、94歳に至ってもまだそれを想い、なおかつ小説として書くことの出来た人がいるという事実、事実の前には諸手をあげて降参するしかない。そして出来も良いのだ。怖ろしい。

戦後短篇小説再発見〈3〉さまざまな恋愛(講談社文芸文庫)
2002/04/28 2:16:39





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Last updated  2002/04/28 11:59:46 PM
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