2004/01/05
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カテゴリ: 海外小説感想
 嘘をつくと鼻が伸びる。クジラの腹の中。そんな記憶。それくらいなら読んでなくても分かる。ディズニーのアニメも見たことがないから、そもそも読んだことがなかったのかもしれない。まだ省略されてるエピソードがあるらしいが、子供向け絵本とは違い、そこそこ長いピノッキオのお話。


「い、い、いたいといった、あの、こ、こ、声は、ど、ど、どこから聞こえて、きたんだ? こ、こ、ここには、ネコの一ぴき、いないんだよ。まさか、こ、この棒きれが、あかんぼみたいに泣いたんじゃないだろうな。とても、しんじられないよ。ほら、ちゃんとこのとおり、なんのかわりもない棒きれだ。火にくべて、まめをにるのにちょうどいい。なら、このなかに、だれかかくれているのかな? それだったら、お気のどくさまだ。いま、わたしがらくにしてやるぞ!」
 こういいながら、親方は、かわいそうなこの丸太ん棒をなさけようしゃもなしに、ゴツンゴツン、へやのかべにたたきつけはじめました。


 操り人形ピノッキオを作る元になる棒きれに出会った時の大工の親方の反応。変な物はとりあえず壊す。単純明快。他にも、笑い転げただけで胸が破れて死んでしまう大蛇、ピノッキオに手を食いちぎられる猫、おじいさんとピノッキオが大波に呑まれても「かわいそうになあ!」と言い放つだけの猟師たちなど、童話らしい無邪気な残酷さが溢れている。章のはじめに簡単な粗筋が書いてあるのだが

14
   お話するコオロギの忠告をきかなかったために、ピノッキオは人ごろしにであいます。

なんていう、いきなり度肝を抜かれる文章もある。友達にたまたま出会ったような字面でありながら「人殺し」よりもずしんと来る。思えば森のくまさんだって、本当に出会えば歌を唄う余裕なんてない、命がけの相手だ。ちなみにこのコオロギも、百年以上生きていたのに、新しく部屋の住人となったピノッキオにカナヅチで叩き殺された可哀想な虫。死んでもその後ちょくちょく出てくる。童話は簡単に生者と死者を渾然一体とさせてもちっとも不自然でないから羨ましい。真面目に勉強をし、働くようになったピノッキオは晴れて人間の子供となる。かつての自分であった木の人形を見て「なんとこっけいだったんだろう!」と言うピノッキオはファンタジー世界の無邪気な主人公ではなく、ただの小生意気なガキだ。物語前半の、約束を簡単に破り遊び歩き、おじいさんのなけなしの金さえ自分の楽しみの為に使うピノッキオはまだ魅力的だ。
 まだ。





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Last updated  2004/10/29 01:01:24 AM
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