2004/01/06
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カテゴリ: 海外小説感想
 汚くてカヴァーがなくて旧仮名で。どこかでもらったものだろう。部屋自体の紙魚のように湧いて出てきたのを掴まえて読んでみた。どのみち掃除ははかどらない。


「じや私たちもやつぱり死ぬの?」少女は泣きやめて、涙の顔で男を仰ぎ見た。
「まあそんなことだろうと思うんだ。」
「なぜもつと早くいつて下さらないの?」少女はうれしそうに笑いながら、「私ほんとうに驚いたわ。だつて死にさえすれば、お母さんのところへ行けるんですもの。」
「それはそうだ。お母さんのところへ行けるねえ。」


 ワトスンとシャーロック・ホームズがこの世に初めて登場する第一部、延々と犯人の過去物語が語られる第二部。どうもこいつは読んだことがあるようだ。犯人の動機も死体発見現場も名推理の仮定もさっぱり覚えがないが、第一部とうって変わりいきなり砂漠を放浪する男の姿で幕を開ける第二部の始まりの光景は記憶の底の底にある。


「神さまはどこの国の人間をでもご自由に、お好きなときを選んで、そろりそろりと粉になるまで挽きつぶしておしまいになる。」ドレッパが鼻にかかる声でいつた。


 ならば、その後いくらでもあるホームズ物の続編に、おそらくは幼い頃の私は興味を示さなかったのだろうか。探偵という物に憧れなかったのだろうか。今読んでもホームズをちっとも好きにはなれず、犯人へ共感する気も起きない。子供の頃から悪役ばかりを好きになった。愛する人に屈辱を負わせて死に至らしめた二人への復讐に燃え、飽くなき執念でそれを遂げたジェファスンには何も魅力を感じない。推理小説、探偵小説の類に昔から私はうまく入り込めないでいる。探偵の有能さを現すためだけ(のように見える時がある)に、人がバタバタと死んでいくのを素直に見過ごせない。





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Last updated  2004/10/29 01:01:08 AM
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