2004/04/30
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カテゴリ: 海外小説感想
 アルカージイ&ボリス・ストルガツキイ。兄弟の共作。タルコフスキーの映画『ストーカー』の原作などで知られるロシアのSF作家。



「ガーク、ロケットランチャーの扱いではおまえが部隊随一だ。そこでおまえに頼みがある。あそこにゴキブリどもがいるが、見えるか? あいつらを連れて村の外れにロケットランチャーを配置しろ。トラックがいるあたりでいい。ちゃんと偽装させておけよ。おれが村に火を放ったら撃つんだぞ。よし、とりかかれ、キャット」
 それを聞くとすぐ、飛ぶようにゴキブリどものところへ走った。部下のゴキブリどもは道にある泥だらけの穴にロケットランチャーともどもはまり込んでいた。
 こいつらは戦争が終わるまでそこで騒いでいるつもりらしい。いったい何をやってるんだ。おれは一人の耳をはたき、もう一人に蹴りを入れ、三人目の背中を銃身で殴りつけた。そしておれ自身が耳鳴りを起こすくらいの大声で怒鳴るとゴキブリどもはまじめに仕事を始めた。これでやっと並みの人間に見える。


 彼らは人間なのか、動物なのか、虫なのか、よく分からないが兵士だ。後にキャットやヒョウは間違いなく人間だと判明する。巨大なヤマアラシやゴキブリが戦う姿もそれはそれで可笑しくていい。長年戦乱の続く星で戦う一兵士である主人公のキャットは尊敬する上官ヒョウとともに戦場で爆死する。と、キャットは別の惑星、彼らの星を監視し、戦争の調停をしようとする人たちの住む星(地球)に連れて来られ、甦り、無為の日々を過ごす。彼は地球人たちによる、彼の故郷の占領政策──おそらくはそうするのだろう、と彼は予測しているが、情報はあまり伝わってこない──に無理矢理協力させられるわけでもなく、いかにもSF的な便利な世界で怠惰なまま時を過ごす。部下として旧型のロボットをあてがわれてそいつに軍事教練を施しても、地球には争う相手もいない。
 結局彼は最後、以前のような刺激を求め、混乱の中の故郷へ、地獄へと舞い戻る。本当に退屈そうな地球での日々の描写を読むとそれにも頷ける。ロシアの作家ということで、地獄と地球がほんとは何を現しているのか深読みすることも可能だが・・・・・・やはりちょっと退屈だ。おとぼけロボットとの掛け合いは多少笑えるところもあったけれど。私はSFに少し冷たいらしい。
 翻訳者の深見弾は、この本の下訳の途中で亡くなった。彼の親友矢野徹による感傷的な巻末の文章に、一番心を動かされた。


群像社 1994年 単行本





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Last updated  2004/04/30 11:17:13 PM
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