2004/05/04
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カテゴリ: 海外小説感想
 駅前で一人だけの女に向けたラブソングをがなるギター弾きも、その横で頷きながら歌に聞き入る女も大嫌いだ。
 メキシコのすぐ南の国、グアテマラの作家。「内戦状態が続いて、落ち着いて文学に打ち込める環境ではなかった」ということでグアテマラを離れ、ニューヨークへ。そこで映画の勉強をした後、モロッコでポール・ボウルズが講師を勤めるワークショップに参加。ボウルズに才能を見出され、ボールズ自ら翻訳した短篇を米英で出版。その後どうのこうの。


 ドアを開けたのはオスカルだった。エルネストよりも小柄で痩せていた。目が血走り、胸のあたりにオートマティックの拳銃を握りしめ、銃口をエルネストの顔に向けていた。エルネストが目をそらすと、エミリアのベッドの上に開いた大型のスーツケースがふたつ見えた。片方は空を、もう片方に衣服が詰まっていた。「行ってしまうんだな」と思った。
 奥のほうからエミリアの声だけが聞こえた。そのときエルネストは、オスカルの銃口から小さな火がポッと吹き出るのを見た。

『補聴器』より


 四つに分かれた章の二つ目の主人公の死ぬ場面。あまりにあっさり過ぎて、何でもないことのような、それほど暴力的でないことのように見え、関わりを持った女が次章で彼の死を悲しむ感情を理解するのにやや手間取った。その後も死の連鎖は続く。読み進めるにつれ、彼らは当然そのように死ぬ運命にあるものと思い込み、誰が差し向けたものによるのか推察することも忘れていた。最後になって、ああ、ちゃんと理由のあるものだったと分かるのだけれど。それまでは、この国では
少しでも怪しい活動をしているものは殺されるものなんだと素直に受け入れていた。「あっさりとし過ぎている死」という目眩ましがなければ、簡単に分かるはずのことだったのだが。


アマンダはグアテマラを出たことを喜んでいた。グアテマラに生まれたのは単なるなりゆきで、自分が選んだ場所はロンドンだといった。グアテマラで暮らしたい人間たちを軽蔑しているような口ぶりだった。それを望む人間には、何か下劣な魂胆があるはずだと思っているふうだった。それは怠惰な人間か、貪欲なやつ、あるいは単に繊細さに欠けた人びとだったのだ。

『ホーム』より


 とりあえずグアテマラには行かない方がいい。
 エンカルナシオンという、ちょっとしか出てこない人物の名前が好きだ。どこかで聞いた気がすると思ったら、昨年MLBでワールドシリーズを制したフロリダ・マーリンズにファン・エンカルナシオンという選手がいた。156試合出場、打率.270 本塁打19 打点94 と立派に優勝に貢献している。2004年からロサンゼルス・ドジャーズに移籍。昨年貧打に泣いたチームを地区二位に押し上げる原動力の一つに確実になっている。ちなみにエンカルナシオン市というのがパラグアイ(ブラジルの南にある国)にあり、多数の日系人が住んでいるそうで、多くのサイトがあった。http://www.geocities.co.jp/HeartLand/3853/encarnacion.html (「南米いくぞ!」の壁紙はどうかと思う・・・)。


現代企画室 2000年 単行本





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Last updated  2004/05/04 12:40:14 PM
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