2004/10/19
XML
 25日間にわたり、174句を書き留めた自分の手帳を読み通してみた。下手な素人の句集を読まされたようでうんざりした。ようで、じゃない。有季定型に拘らないとはいえ、季語のない、その場その場のメモでしかないものばかり続くと閉口する。逆に季語を使えてるのは巧く出来てるという勘違いも起こる。毛嫌いせずに歳時記を開き、一語ごとに十句作るなどして、季語に馴染み、また気に入った俳味ががった言葉を見たら同じようなことをして、使える言葉を増やしていこう。公言しておけばそのうちほんとにやるだろう。

「西東三鬼 現代俳句の世界 9」 朝日文庫 1984年

 この朝日文庫の俳句シリーズは手頃で収録句数も多く良い本なのに今は絶版。嫌いな人でない限りは古本屋で見かけたら買っている。
 諸々の俳人たちが三鬼を悼む句をどれほど読んだろう。まとめて一冊に出来るくらいは読んだろう。実際にそんな本があるかもしれない。「からからのひとでを拾ひ三鬼亡し(沢木欣一)」くらいしか好きな句はない。続いて多いのが波郷病む、波郷死すの類の句。どこで勘違いしたか、「秀逸な三鬼の追悼句を作った俳人が死んだ時、返すように三鬼も良い句を詠んだ」という思い込みがあった。死んでからももの詠める俳人はいないはずなのに。
 俳句はもちろんのこと、自伝『神戸』『続・神戸』が迚も(とても、と読む。俳人ぽく)面白い。「神戸・続神戸・俳愚伝」として講談社文芸文庫からも出ている。東京での生活を捨てて神戸へ移住、娼婦たちとの共同生活、奇妙な縁の同居人、変な外人、訊ねてくる変人俳人等々。可笑しくさの先に哀しさがある戦中と戦後すぐの混沌史。
 久し振りに映画を、『ミスティック・リバー』を見た。ショーン・ペン演じるジミーのような悪党に私は憧れているふしが昔あった。今も少しはあるかもしれない。三鬼は妻子を捨てる前は歯医者であり、その後も俳壇の橋渡しを縦横無尽に行なった政治屋でもあったのに、どうも無頼と見立てたがり、そこに惚れているようなところがある。たった一人の弟子である三橋敏雄も好きなだけに、感情移入過多か。ただ、戦争に行かずに戦地のことを詠んだ一連の句には空々しい感じを受けてしまう。

北風(きた)はしり軽金属の街を研ぐ
動かぬ蝶前後左右に墓ありて
びびびびと死にゆく大蛾ジヤズ起る
夕焼へ群衆だまり走り出す
姉の墓枯野明りに抱き起す
暗き露へ頭中の女振り落す
木瓜の朱へ這ひつつ寄れば家人泣く
うちそとに虫の音満ちて家消えぬ


「三橋敏雄」花神社 1992年

 処女句集「まぼろしの鱶」から全て、以降の句集から自選六百句収録。「幽霊を季題と思ひ寝てしまふ」などとさらりと詠みたいものだ。


少年ありピカソの青のなかに病む
脆き豆腐人工衛星など語るな
世界中一本杉の中は夜
破片確かめ難破確め渡り鳥
あの家の中は老女や春げしき
春二番三番四番五番馬鹿




 山頭火ブームの頃だろうか、奥付を見ると(一)が平成元年四月第一刷発行、同年八月に六刷、(二)は初刷同じ、平成二年三月十一刷と、句集にしてはすさまじい売れ行きだったよう。
 山頭火をどう捉えるか。自由律俳句というなんだかよく分からないものを作る人、漂白の俳人などとものは言いようで、ただの物貰い乞食だったのではないか、そもそも彼の作るものは俳句なのか?
 読む前は色々考えたが、いざ触れてみると「思ったよりずっと俳句だ」「いや、俳句と呼ぶには抵抗があるが、これはこれで構わない」「いややっぱりこれもれっきとした俳句だ」と思いが行ったり来たりしつつも、結論は「十分に許容範囲」であった。詠む対象は実に俳句的であるのだから、形は似ているものの相田みつをとは中身が全く異なる。
 そうはいうものの特別好きでもない。彼が五七五で書いていたなら最後まで読み通していなかったろう。ただ、作句の折、俳句としてうまく形を成さない、長い文章にするほどでもないという類の句想を自由律としてひとまずおいておく、という習慣がついたのは非常にプラスになった。出来はまだまだ悪いが零れるものが少なくなる。

しぐるるや死なないでゐる
こほろぎに鳴かれてばかり
寒い雲がいそぐ
雪空の最後の一つをもぐ

どういうわけか全て(一)からとなった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004/10/19 03:42:45 PM
コメント(0) | コメントを書く
[俳句関連の本の感想] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Comments

nobclound@ Vonegollugs &lt;a href= <small> <a href="http://hea…
Wealpismitiep@ adjurponord &lt;a href= <small> <a href="http://ach…
Idiopebib@ touchuserssox used to deliver to an average man. But …
HamyJamefam@ Test Add your comments Your name and &lt;a href=&quot; <small>…
maigrarkBoask@ diblelorNob KOVAL ! why do you only respond to peop…

Profile

村野孝二(コチ)

村野孝二(コチ)

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: