2004/10/31
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カテゴリ: 海外小説感想
 誰に似てるかといえば村上春樹だ。うじうじした語り手の書き方が。第二のマルケスなどという使い古された形容よりはこちらの名前の方が売りやすいだろう。
 ボルヘスとスペインのかつての独裁者を合わせたような冗談みたいな名前の作者。コロンビアの人。



「体じゅうに電流が流れたの。キスのせいだと思ったのに・・・・・・」彼女は病院に向かう途中で、とぎれとぎれに俺に言った。


 恋愛バイオレンス小説としては最高の書き出しだろう。ついでに「ロサリオ」という美しく野性的で衝動的に人を殺して人を殺すたびに悩み苦しみ大食らいして太ってはまた痩せる女の名前は、違う言語とはいえどうしても「ロザリオ」を想起してしまい、自ずと聖性を帯びてくる。(最近この言葉を頻繁に適当に使ってる)。
 彼女と彼女の仲間が犯す幾つもの殺人場面に陰惨さがなくむしろ爽やかなのが巧いところ。1980年代のコロンビア、麻薬戦争時代のことを知ればこれはそれほどフィクションの物語ではないことが分かり、寒気もするのだけれど。
 上流階級の家の出で男らしいエミリオ、その恋人でスラム出身で現在「最高に危ない奴ら(実在した麻薬カルテルのことと思われる)」の手先として闇の仕事を時々している美女ロサリオ、エミリオの親友でロサリオに恋い焦がれつついい友達・都合のいい相談相手・恋人との橋渡し役でしかない「俺」。不死身だと思われていたロサリオが銃弾を浴びて病院に担ぎ込まれ、彼女の回復を病院の廊下で永遠に待つ間(時計が壊れて、いつまでも四時半をさしている)、彼女の思い出を、死と暴力と欲情にまみれた思い出を「俺」が語り続ける。
 奇妙にリアリティのある殺伐とした記述をのぞけば、ずっと片思いの恋愛小説なのだ。読み終えるまで気付かなかった。ロサリオという女のピカレスクロマン小説だと思いながら読んでいたのに。
 雰囲気は違えど、ロドリゴ・レイローサ『その時は殺され・・・・・・』を思い出した。
 ロサリオのイメージがジャッキー・ブラウンから離れなくて、惚れられなかった。

河出書房新社 2003年





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Last updated  2004/11/01 02:11:27 AM
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