♪きまぐれ*じゅんこちゃん♪

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恋愛中毒 1 2 3



『恋愛して 振った事は あっても 振られた事はない』
こう言うと カッコ良いが 実のところ 振られそうな時には
相手が振る前に 自ら行動してしまうのだ・・・
振られるのが 怖いから・・
自分が落ち込んで 立ち直れなくなるのが 怖いから・・

そんな私でも 1度だけ 勇気を奮って 告白した人がいる
当然 振られたのだが 
何故か その時は 落ち込まずにいられた

彼は 本社から 研究所に配属された
理由は 分からないが とても落ち込んでいて 研究所の皆と 自ら打ち解けようとはしなかった
いつも 私は そんな人に 惹かれてしまうのだ
研究室は 隣の部屋なのだが 実験器具の関係で 私のいる研究室にも 時々訪れる
しかし 下を向いたまま 誰とも 視線を合わすことなく もくもくと 自分の実験をしていた
そんな 彼を 1人にしておくような 私ではない
彼が 実験をしている すぐ脇の洗い場で サンプル瓶の洗浄なんかをしてみる
当然 彼は 洗い場を使用するので 隣同士になる
しかし 彼は 何も話さず もくもくと実験器具を洗っているのだ
そんな彼に私は ”冗談を言う” ”駄洒落を言う” なんとか笑わそうと いろいろ試みる
最初は 完璧無視だったが 徐々に 呆れたのか おかしかったのか
「ぷっ!」と 彼が 笑った
初めて見る 彼の笑顔は なかなか 可愛かった

何故かしら いつもそうだ
小学校の時から 転校生と 仲良くなる
自分が いじめられっこだったから 仲間に打ち解ける事が出来ずにいる人を見ると
たまらなくなる

彼が本社から研究所に配属されて 3ヶ月
彼は だんだんと 皆の輪の中へ 入っていった



゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. *2* 彼との会話 .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。.


実験器具を洗う時間は 仕事中でも会話が出来る井戸端会議場だ
彼の実験課題は オレンジジュースの色素である
だから 実験が終わると 全ての器具を入念に洗わなければならない
ガラス瓶に 色素が少しでも残っていたら 実験にならないからだ
入社したての私は 実験室のマスコットといったら聞こえは良いが
畑違いの学部から ドタキャン新入社員の穴埋めに 派遣されたので
はっきり言って 即戦力になることも出来ず 
もっぱら 先輩達の実験の雑用を まかされていたのだった
雑用。 つまり 実験器具洗いである
実験室には 4隅に洗い場がある
だから私は その日によって洗い場を転々とする

彼 I が来た
今日は I の近くの洗い場で サンプル瓶洗浄をする事にしよう

I が 実験器具を洗いに来た

私 「ねぇ I さんて 誰かに似てるって 言われない?」
   別に 誰かに似ていると 思っている訳でもない
   話題は何でもいいのである
   話すきっかけを 捜して カマをかけてみただけ

I  「前にさ 電車に乗っていたら Fさんじゃありませんか?って
  声かけられた事があったよ」

私 「F ?」

I  「そう プロレスラーの F 」

私 「へぇ~」
   私は スポーツには うといので それから先に 話は進まなかった
   しかし 実験器具を洗いながらの会話は その程度で充分だ

同期に プロレスの大好きな友人が居る
それとなく 「Fって どんな人?」と 聞いてみる
「今でも TVに出ているから 今度出る時に教えてあげるよ」

おお~ Fプロレスラーとは この人か!
そう言われてみると わかるような気がする

そうだ 今度 話す時は 「Fさん♪」なんておどけてみよう
仕事中に 不謹慎ではあるが 実験課題のない私は 
暇をしている頭の中で そんな事を考えている


゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. *3* これってデート?.。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。.

洗い場での話の中で知った事
Iは会社帰りに時々パチンコに行くらしい
社外のIって どんな感じなんだろう?
ちょっと興味がある
パチンコなんて あんまりした事ないけど 
今度「パチンコ連れてって~!」なんて言ってみようかなぁ~
残業が早く終わった日に それとなく言ってみた

「いいよ」

@@;

思いがけない答えだった
会社帰りだから あそこかな?なんて思って着いて行ったら
店を通り越して駅に
そして私が帰るのとは反対のホームへ
んん?
何処に行くんだろう?
Iの自宅最寄り駅?
もしかして パチンコだけじゃないのかしら...?
まぁ Iに任せてみよう

降りた駅はT
これといって とりたてることもない普通の街
T駅から徒歩1分位のパチンコ店へ
Iは私に話しかける事もなく目配せをする
まぁ いいや
Iのするのを真似てみよう

球を弾くIの表情は仕事をしている時のそれとは微妙に違う
結構私好みの表情だ
私も話かける事なく隣で球を弾く

こんな時 Iが大当たりを出して 隣で球がなくなって
わぁ~なんて言いながら眺めていたら絵になるんだろうなぁ~
それで 儲かって食事に誘ってくれて
それから・・・
なんて妄想をしてみる

でも現実は そんなに甘くない
そして 現実は小説よりも奇なりなのだ

何故なんだろう...
こんな時に限って
私のお皿は空になるどころか球が続々と溜まっていく

I「おい!帰るぞ!」
「えっ? どうすれば良いの?」
Iは球を箱に入れて歩いていく
私は その後をついて行く
「ほら!」
そう言って私に渡したのはチョコレートだった

パチンコ店を出た私は どうしていいか分からず
「チョコ食べる?」なんて言ってみる

当然のことながら 不機嫌なIは
「じゃあな!」って...
ううっ
こんな展開が待ってるなんて...
初めてが こんな形で始まるなんて...

いや
もしかしたら これで終わり?
あの妄想は幻想?
それとも これは幻覚?

今日は おとなしく帰ろう
Iが これ以上不機嫌になる前に...

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