ラジオと映画とちょっとジャジーな日々

渋谷毅さんのこと　♪-１０

小沢健二さんの人柄を知るエピソードが聴けたのは、
もう本当に貴重なことだったけれど、

何より、渋谷さんがさりげなくそういう話を始めてくれたことが
ありがたくて･･･胸がいっぱいになってしまったのだった。

大ベテランの渋谷さんだから、
１０年、２０年･･･、いや３０年以上だって
お付き合いしている方や、応援している方々がいるだろう。

私なんて、 道端で立ち話したくらいの関係だ。
そんな人間が、わかったかのように色々語るのは、
図々しいことかもしれない。

でもこの短い間に、私はとても影響を受けたし、
ちょっと成長した？･･･ような気もする。

だから、渋谷さんの不思議な魅力を、
少しだけここに書かせて欲しい。

不思議･･･と言ってしまったのは、

少年の様な時もあるし、仙人みたいに思える時もあるから。
それでいて、根底にはいつも「大人のやさしさ」が流れている。

会話の中には、「知性」がキラっとするし、
人や物事の本質を見抜いてしまう「鋭さ」にはドキッとする。
（やっぱり、この人にウソはつけない）

でも渋谷さんを知っている方々なら、
間違いなく口を揃えてこう言うだろう。

完全なる　自　然　体。

後日、渋谷さんの奥様とお会いする機会があったのだけれど
（奥様が、また素晴らしいピアニスト！）

「おとーさんは、自然体だから。」 とおっしゃっていた。

ほら、間違いないでしょ！（笑）

まぁ、私がこんな風に説明するよりも、
演奏を聴けば、わかる人にはすぐわかってしまうのだろうけど。

音楽は、いつもその人そのものを表してしまう、
恐ろしくも、素晴らしいものだから。

機会があったら、渋谷さんのピアノを聴いてみてください。

たぶん、誰とでも気さくに話をしてくれる渋谷さんだから、
一緒に飲んだりすることは、決して難しいことでは無いと思う。

けれど、こうしてこの時、同じカウンターに座って、
ほろ酔い加減の渋谷さんを見ていると、

ふっ　と不思議な気持ちになる･･。

９年前、八ヶ岳のジャズ・フェスティバルで
私は、何百人もの観客の一人として、
ステージの上の渋谷さんを見上げていたんだなぁ･･･と。

まだ、ラジオ局で働くことになるとも知らず。

この方と一緒に、お酒を飲む日が来るなんてことも知らず。

そして、隣にいる友人が数年後に他界してしまうことも知らず･･･。

ただただ、うっとりとステージに見入っていた。

「人生は、実は果てしなく続く面白い暗がりだ」
と、好きな作家の本に書いてあったことを思い出す。

「いつ何がおこるのかわからないし、
明日にでも、どこかに行ってしまえるのかもしれない。」

そして、こう言っている

「光は自分でつくるのだ」

確かに、一寸先は「闇」かもしれない。

でも、「闇」の中を歩きながら、「光」を作れるのだから、

それがある日、闇を消してしまったりするのだから、

生きていくことは、やっぱりおもしろいのだ！

たとえまた「闇」の中に入る日が来るとしても。

♪僕らは歩くよ、どこまでも行くよ
何だか知らないが、世界を抜けて

誰かと会うとしたら、

それはそうミラクル！

小沢健二「大人になれば」より。

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