鏡

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

懺

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

おじさん@ 下の方に同感 ひどく幼い(プラスな意味でなく)印象を…
通りすがり@ 思ったこと 第三者的な視点から言わせてもらうと、 …
麒麟@ Re:ここから始まる ホンマに!? 応援してるよ★彡 (^.^)/~~~
@ Re[1]:ここから始まる(10/07) そんなことは先刻承知 実はもう始まっ…
麒麟@ Re:ここから始まる 何も言わずに諦めるのは 一つの選択肢なの…

Freepage List

2009年05月24日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
ショッピングを終えて

弥子の親が待つ駅までの帰り道

私は「少し話があるから」とコンビニに車を止めて

話しやすいようシートをずらした

これから・・・幸せが終わる

私は自分の中で弾けそうなものを堪えるようにしながら

数秒目を瞑る

そうして目をゆっくりと明けると私は口を開いた

「ちょいと手出してくれないかい?」



平静をなんとか繕って言った

「あっはい!」

突然の要望に何の意図があるのか?

と戸惑いながらも両の手を私の前にだす弥子

私は弥子の左手を手に取ると

「ちょっといいかい」

と言って薬指にある指輪を外した

少し高い彼女の体温が手から伝わる

指輪をなくした弥子の手を私は両の手で包み込む


「弥子・・」

そう言って弥子の瞳を見る私



弥子も私の言葉を理解したのか

穏やかに「はい」と私の言葉に返す

その続きを言い掛けて私は一瞬言葉が詰まった

それはこの幸せを手放したくない

という臆病な心からの最後の抵抗なのかもしれない



振られることなど目に見えているのだから

言わない方が良い

言わなければ傷つかない

甘い言葉が頭を過ぎる

確かにそうなのかもしれない

しかし私は

私は



「真っ直ぐな愛を貫きたい」



私は半秒目を閉じ再び開いて


「俺は弥子が好き」


「世界の誰よりも」

弥子はゆっくりと「はい」と返事をすると

私は言葉を続けた

「今までいろいろな事情を考えて言えなかったけど」

「俺は浩之より弥子を愛してるつもり」

「こんな事いっても何の意味もないのかもしれないけど」

「ただ俺は弥子に真っ直ぐな想いを届けたくてね」



弥子は言葉に詰まりながらも

「なんて言葉にしたら分からないですけど」

「嬉しいです」

「もし今倦怠期なら別れて付き合うことになるかもしれませんが」

「なんていったらいいのか・・あー!」



突然のことだ無理もないかもしれない

彼女は言葉を紡ぎ出せないほどに動揺した様子だった

その後弥子と私は数分ほど話をする

私の予想外の言葉にことに驚いたらしく

混乱しているのでもう少し時間が欲しいという弥子

私は了承しながらも

「振られるのが後回しになっただけだ」と客観的に

自分の立場を冷ややかに皮肉った

ポツポツと落ちては

ワイパーにより左右へとさらわれていく雨粒

フロントガラスを左右するワイパーを見詰める私

ぼやっとする意識の中

弥子の居ない助手席を横目で見た私は

静かに「ばかだな・・」と呟いた



そして次の日の朝

浩之を選ぶ事



もう二人では会えない事

大まかにその二つが書かれた弥子からのメールがきた

予想通りの結末に私は

一人

「やはりな・・・」

と無機質な笑みを浮かべて鼻笑いをした

結末が分かっていたとはいえ

叶わないと報われないと分かっていて愛し続けた結果がこれだ

衝撃で世界が止まってしまうかのような喪失感を感じたが

だからといって

喚いたり

暴れたところで現状が変わるという事はありえない

大きく深呼吸をして冷静な判断へと自分を導かせる

おそらく決断した弥子もきっと辛かったのだろうと

私は

「自分のことは気にしなくて良い」

「決断してくれてありがとう」

「それよりこれから心療内科の診断についてどうしていくのか?」

と聞いた

弥子からの返信によると

浩之が行くと宣言したという

私は「ようやくか・・」と思いながらも

1年半もの間弥子に具体的な問題解決のため

何もしてこなかった浩之が果たして

この先やっていけるのであろうか?と心配した

しかし

弥子が浩之との道を選んだ以上

私は何も言うことは出来なかった



その日私は最後に弥子と電話をすることになる

自分の提案で私は弥子のデーターを全て消すことにした

実際のところそれは身を引き裂かれるような決断であったが

私は自分自身の信念に従った

そこで浩之の話を耳にする

弥子曰く私の告白について浩之は怒っているという話を耳にした

私は内心で

弥子に想いを伝える権利すらも浩之は奪おうというのかと

元を辿れば浩之がしっかりと弥子を守っていれば

このような状況は生まれなかっただろうと・・・

思うだけで

私は「そうか・・」と低く生返事をしたきりであった

また弥子は私に

「なぜ浩之より愛しているのだと言い切れるのか?」と聞いた

私は逆に「なぜ浩之に愛されていると思うのか?」聞きたかったが

私は浩之が弥子の為に全く尽くしていないという訳ではない事を知っていた

浩之とデートをしたり

メールをするだけでも弥子は随分と幸せな気分になっていたであろうと

また私の知らない所で浩之も陰ながら

弥子の為に尽くしているであろうと思っていた

正しくはそう願っていた

だが弥子を好きだというのならば

診療所や相談施設になぜ相談しないのかと・・

弥子は浩之名義の携帯を買い渡されているらしく

私はその携帯を見るたびに

そのお金があるならばなぜ診療所へ連れて行かないのか?

という疑問も感じていた

携帯よりもそちらの方が重要な筈ではないのかと・・・

その携帯は弥子に買い与えたものではなく

浩之自身の為に買ったのではないのか?

と私は常々思っていた

しかしながら

そうやって核心を抉りだして

弥子の愛する浩之を責め立てて

弥子を困らせる事を私はしなかった

ただ「なぜそう言い切れるのか?」という問いに

私は

「どれだけ愛しているかなんて数値化できないんだから」

「逆に私より浩之の方が愛しているかなんて証明できないでしょう」

「ただ気持ちだけは負けていないつもりというんだ」

と曖昧な返事をしたきりだった

それから数十分話を続けた

弥子は常に私に対して申し訳なさそうにしていた

私からすれば弥子の決断は考えた上での事で

何一つ弥子は悪くないのだから・・・



そんな弥子に対して私は

「次の恋も探してみるよ」

と嘘をついた

実際のところはそんな気は毛頭なかったのだが

弥子をこれ以上心配させる訳にはいかない

内心で自身に「随分嘘をつくようになったのだな」と言い

不器用で不恰好だからなと苦笑いでそれに返した

最後弥子は

「本当に今までありがとうございました」

「私の中で先輩はただの優しい先輩ではなく」

「もっと特別な存在で・・・」

「先輩の愛情と優しさは本物のものでしたよ」

と言い

私はぐっと溢れ出す何かを堪えながら

「ありがとう」

「次に会った時にはお互い楽しい話をしよう」

と無意識のうちに口にして

「それじゃあ・・・」

「さようなら」

「さようなら」

と互いに電話を切った


それから数日後私は浩之にメールを送る

件名:最後のメール

やあ君にとっての邪魔者であり負け犬だよ。

きっと俺のメールなんて見たくもないと思っているかもしれないけど

最後だろうから聞いて

弥子から直接聞いたか分からないけど

弥子は精神科の先生に良くない精神状態にあると診断されたんだ。

知ってたかい?

実は凄く怒っているんだよ。

君が支える筈の弥子が

そんなにも追い込まれてる中君は一体何をしてきたんだい?

具体的にどう弥子の問題解決の為動いたんだい?

そして何が解決できたんだい?

俺は君より弥子を愛してるつもりだ。

しかし弥子が君を選んだ以上弥子を支えていくのは君しかいない。

ハッキリ言って心配だ。

弥子の為に努力しなきゃ、俺はまた弥子を掴もうとするから覚悟してね。

追伸
このメールは弥子には言わないで欲しい。



返信は無かった

言い返せないからなのか?

それともただ単にメール自体を読んでいないだけなのか?

妄言であると無視しているのか?

それとも他のもっと違う理由なのか?

私には分からなかったが

やるべき事はやったのだ

悔いは無い

それでも私はその後

何もかもを無くしたかのような喪失感と

やはりあれは自分勝手な想いの押しつけで・・

言うべきではなかったのか・・・

という自分を責め立てる気持ちが心を黒く覆う時があったが

今現時点の私は

決断についてやはり間違っていなかったと思う

私は生まれ変わったとしても

何度でも同じ道を選ぶ








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009年08月03日 12時37分21秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: