ことりんのスマイル

ことりんのスマイル

病気の告知

「告知」


ことりんがMRI室に入ってから、私は落ち着いて待っている事が出来ず、待合にあるマンガを読んでみたりイミのない動きばかりしていました。

30分くらい経った頃、見た事の無い先生が2人MRI室に入っていきました。
それからしばらくすると、神経科の先生が出てきました。
そして私に、「まだ検査は途中なのですが、脳に腫瘍がある事が分かりました。検査はもうしばらくかかるので、もう少し待っていて下さい。」と言いました。

なんとなくそんな予感はずっとしていました。でも、そう言われても一瞬理解が出来ませんでした。信じられない。そう思うだけでした。

一緒にいた私の実母と元夫は、それぞれ実父や実家に電話をしに行きました。
私は一人でMRI室の前にずっと座っていました。

検査が終わり、白衣を脱いだ先生がことりんを抱いて出てきました。
そして、「脳腫瘍であることが分かったので、ここから先は脳外科の先生にお渡しします。」と言いました。
さっき途中で入っていった2人の先生は脳外の先生だという事が分かりました。

ことりんはまだ薬が残っているので、ベッドの用意された部屋に通され、そこで看護婦さんたちに遊び相手になってもらい、その間に私たちは隣の部屋で先生のお話を聞く事となりました。

先生からMRの写真を使って説明を受けました。腫瘍は小脳の第4脳室に出来ていて大きさは5cm程である事、小児脳腫瘍の75%は悪性であり、おそらく琴音も悪性、原発の場所からいって多分「髄芽腫」という小児に多く見られる種類の悪性腫瘍であろう事、また腫瘍によって頭蓋内の水の流れが阻害され、水頭症を併発している事、そして髄芽腫であった場合5年生存率が半分強である事を説明されました。
「この大きさでは、相当頭も痛かったと思います。腫瘍の場所からして嚥下障害や目の動きの異常なども出てきてておかしくないと思うのですが、そういう症状はありませんでしたか?」とおっしゃっていました。
それから、琴音が最近眠ってばかりだったのも、「傾眠」といわれる、一種の意識障害だったという事が分かりました。

今後また普通に歩けるようになるのか、言語などに障害が出たりしないのか、そして根治させる事が出来るのか、と私は出来るだけの質問をしました。
歩行については腫瘍が摘出できれば時間はかかるが改善される事、言語には全く関係が無い事、そして、「決してこれで終わってしまう訳ではありません。」と言いました。“これで終わってしまう訳ではない”。この言葉は私に絶望も希望も与えました。

先生は丁寧に、事実をありのまま伝えて下さり、とても良い印象の方でした。
この時は何も知りませんでしたが、琴音の主治医となったこの先生は、日本の小児の脳外の医師の中でもトップに位置するとても有名な先生なのだそうです。
本当に偶然にそんな先生に出会えたなんて、琴音は運が強いのかもしれません。

とにかく今夜から緊急入院、そして出来るだけ早い内にOPEを行い、術後2週間で抗がん剤の化学療法を始めるという、おおまかな予定になりました。

話が終わって琴音の元に戻ると、ベッドの中の琴音はちっちゃく、本当にちっちゃく今にも消えてしまいそうな気がしてなりませんでした。
今までずっとつらかっただろうに、こんな小さな子供に苦しい思いをさせてしまっていたなんてと思うと涙が止まりませんでした。
先生が隣から出てきて琴音に話し掛けたりしてくれました。その間に看護婦さんから、入院についてのことを説明されました。面会時間はお昼から8時までと言われ、
せめて今日くらいは眠るまでついていたい、と私が言うと看護婦さんは、「もちろん。琴音ちゃんの為にもそうしてあげて下さい。」ととても優しい言葉をかけて下さいました。(入院してみるとこの8時まで、というのはあってないものだと分かりましたが(笑)。)

そして、病棟の方の準備が整い、私たちは病棟に移動しました。
その日のその後の事はあまり覚えてません。琴音の発達についての問診票を書かされた記憶はありますが、確か琴音がずっとうとうとした状態だったのでそんなに遅くならずに帰宅した気がします。そのときはただただずっと、もっと早くに気がついてあげれば良かったと、そればかり考えていました。


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