2005年 揚雲雀俳句作品抄


平成17年度俳句作品抄






日の傾ぐ自然薯の穴埋めをれば
夕ざるる稲架がけの稲良く匂ひ
鎌研ぐや寒露の草に刃を濡らし
風呂敷に背負ひ新海苔売りに来し
馬頭尊祀る温泉青木の実

馬祀る馬の温泉寒椿
野ざらしのささくれ箒落葉掻く
尉鶲首を傾げる窓鏡
燃えさしも寄せねんごろに牡丹焚く
柊を鬼門に咲かせ住み古りし

はだかって仔を隠す牛冬うらら
小豆より紅の溶け出す冬至粥
銃提げて人降りてくる枯木山
泣き砂を踏む正月の凧あげて
銘木の世継ぎ苗とや冬の梅

薺打つ包丁の柄をすげ替へて
若菜野へ小学校を抜けて来し
人混みを福笹の鯛踊りゆく
放ち鶏牛小屋に産む寒卵
猛犬の札にならべて柊挿す
柊挿す空の馬屋に夜半の月

療養馬癒えて春泥とばしけり
薺摘む杭のみ残る渡舟跡
蔵陰に吊り舟乾く菖蒲の芽
梵鐘の中に落書山笑ふ
梨棚に降りつつ融ける春の雪

青饅や酢の香広がる忌の厨
紐つけて犬迷い来る朧かな
横跳びに電線渡る鴉の子
対岸にちらつく雉や野蒜抜く
蛇出でて古墳の草に紛れけり

山鳥の飛び立つ溝を浚ひけり
葉桜や木橋古りたる発電所
本棚に飾る埴輪や君子蘭
堰板を外す水音初蛙
雀の巣また棕櫚の皮引き抜いて
土用照杣が薬草陰干しに

水撒きの蛇口全開夏立てり
刈り伏せの茅を突き抜け夏蕨
石垣の目地のゆるみや著莪の花
蔵の陰及ぶ畦川濁り鮒
把手鳴る祖母の箪笥や更衣

朝靄に棘やはらかき紅の花
花鬼灯湿りがちなる蔵陰に
薬師寺に講の人散る花擬宝珠
熟れきって梅鐘楼に落ちにけり
大礁夏至の日の濃き忘れ潮
蜻蛉生る樋で水引く神の池

声かけて子を連れ遡る夏の鴨
玉砂利の切幣掃きて夏越果つ
火口湖の風吹き上ぐる赤とんぼ
河骨や稲荷へかかる太鼓橋
大杉に空蝉すがる平泉
地に伏せる獅子の影濃き秋祭

爽やかや手のしに畳む赤子の衣
盆茣蓙を編みて媼のほまち金
須弥檀に嵩積み上ぐる葉付梨
手花火の火種会津の絵らふそく
畦草に蛍火動く日の終り





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