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2011.10.16
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カテゴリ: ドラマ


監督 メノ・メイエス
主演 ジョン・キューザック ノア・テイラー

 若き日の画家を目指していたアドルフ・ヒトラーと、画商の交流を描いた作品です。今回は、結末にかかわるところについて語りたいので、あらすじをすべて書かせていただきます。

 1918年、第一次世界大戦で右腕を無くし、画家をやめざるを得なかったユダヤ人画商のマックス・ロスマン(ジョン・キューザック)は、同じく従軍していた貧しい画家のアドルフ・ヒトラーと出会います。ロスマンは、ヒトラーのスケッチを見、その技術の確かさに興味を持ち、作品を持ってくるように言います。
 敗戦後の今も軍の世話になっているヒトラーは、上官に、演説のうまさを見出され、軍の勢力回復のため、期待されています。作品がうまく作れないヒトラーは、演説の快感に、心を動かされていきます。
 ヒトラーの才能に期待するロスマンは、ヒトラーにお金を渡したり、女を紹介したりします。
 しかし、作品を作ることに挫折し、政治は芸術だとうそぶくヒトラーに、不安を感じたロスマンは、ヒトラーのアトリエを訪れ、彼の考えた未来の建築や軍服のデザインなどのスケッチを見、新しい芸術性を感じ、作品にして持ってくるように言います。
 上官に勧められ、演説会で、ヒトラーは反ユダヤ思想について熱く語ります。その演説で反ユダヤ思想に興奮した若い兵士たちは、帰り道、目についたユダヤ人を暴行します。それは、ヒトラーとの待ち合わせ場所に向かうロスマンでした。


 若き日のヒトラーを描き、その芸術家としての挫折と、政治家への道を明らかにするという試みは、非常に面白いと思いますが、残念ながら、その心の動きなど、描ききることができていません。以下、僕の自分勝手な解釈ですが、思いつくところを語っていきたいと思います。

 まず、ヒトラーが、なぜ画家の夢に挫折するのか、という点です。この映画で見る限り、彼は、非常に本物そっくりな写実的な絵を描くことができるようです。しかし、この時代、美術界では、既存の写実的表現は影を潜め、野獣派や立体派、未来派やダダイズムなど、新しい表現を模索している時代でした。
 ロスマンの店にも、そういう作品が並んでいましたし、一瞬出てくるロスマンの作品も、ブラックのような立体派の作品でした。ですから、ロスマンがヒトラーに要求していたのも、そういう作品だったはずです。
 美術をよく知らない人がよく誤解していますが、この、20世紀から始まる新しい表現の美術(一見、何が描いてあるか分からない作品と言えばわかりやすいですかね。)も、基本は、写実的表現です。
 あのパブロ・ピカソも、非常に若いころの作品(10代~20代前半ぐらい、青の時代とかバラ色の時代とか言われる頃です。)は、とても写実的な表現で、その上手さは、誰もが驚くほどです。
 ところが、ヒトラーはそういった新しい表現が、全くできませんでした。見たものをそっくりに写実的に描くことはできても、そこから自分なりの考えで、自分なりの表現を創り出すことができなかったのです。
 しかし、彼が、政治の方に興味が移り、いずれ打ち立てようと考えていた“第三世界”の現代建築を思わせるような斬新的な建物や、後のナチスの制服(マニアに間ではカッコいいと高評価です。)や、鷲のマークなどのスケッチを見たロスマンは、そこに、いわゆる未来派のような新しい表現を見たのです。
 こういった美術史的背景が説明不足のため、ヒトラーが画家の夢をあきらめる心の動きがわかりにくくなっているのではないでしょうか。

 また、ヒトラーが、街角や演説会で、反ユダヤ主義の思想を、非常に熱く語っているのに、ユダヤ人であるロスマンを頼って、付き合っているのが、非常に理解できません。
 ロスマンは、その演説を聞いていますが、そんなことはやめて芸術家の道にいそしんでほしいと思っているようですが、ヒトラーの方は、どう思っているのでしょうか、それが全くわかりません。心情的には気に食わないが、芸術家になるためにはしょうがない、と割り切っているのでしょうか。全くわかりません。

 一方、ロスマンですが、裕福な家庭に育ち、美しいバレリーナの妻と、2人の子どもにも恵まれ、愛人もひとりいて、非常にぜいたくな暮らしをしているようです。


 実は、アドルフ・ヒトラーが、芸術家を目指していたことは史実ですが、それは非常に若いころで、1905年ころのことです。そのころ、ウィーンの美術学校を受験して失敗しているそうです。その後、浮浪者のようになり、自筆の絵ハガキを売って生計を立てていたことがあるそうですが、第一次世界大戦の頃には、その夢はすっかり諦めていたようです。
 若い頃からドイツ民族主義に傾倒しており、大戦前から、反ユダヤ主義も、持っていたようです。第一次世界大戦も、志願して従軍しており、その後は、軍の仕事から、政治活動にひた走っていくことになるのです。
 ロスマンは完全に架空の人物ですし、この映画で描かれていることは、全くの架空のお話です。ヒトラーが、芸術家を目指していたという、たったひとつの事実から、創作された物語でした。

 108分という短い映画です。もう30分ぐらい長くなっても全然問題ないので、もっともっと、描きこんでほしかった作品です。発想は面白いので、非常に残念です。

 ちなみに、ヒトラー役のノア・テイラーという人、どこかで見たことあるなあ、と思っていたら、チョコレート工場をもらうチャーリーのお父さんでした。非常に貧乏が似合う人です。





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Last updated  2011.10.17 01:14:08 コメント(1) | コメントを書く
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