ねことパンの日々

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カムイ外伝 白土三平著

カムイ外伝 白土三平著 平成9~12年 小学館文庫

カムイ外伝1カムイ外伝12

文庫サイズの漫画本は、今や私の生活になくてはならないものです。
小さくて場所をとらないし、昔の名作が手頃な価格で読めるし。そのため衝動買いが多く、いくら小さいといっても、そろそろ置き場に困るくらいになってしまっておりますが(;´▽`A``。

さて、その中からおすすめを紹介するなら、私は迷わずこの『カムイ外伝』を推します。理由はいくつかあります。まずひとつめ。短編読み切りであること。ふたつめ。絵がすばらしく美しいこと。みっつめ。主人公カムイの生きざまに猛烈に共感すること。

電車の中、寝床、はてはトイレの中まで漫画本を持ち込む私にとって、読み切り物であることは非常に重要です。なぜって、時間を忘れて読んでしまうと、仕事に遅刻するわ駅は過ぎてしまうわで大変なことに....。集中して読んでも疲れない長さというのも、ありがたいですね。

作者の白土三平は、大正末期から昭和初期にかけての日本の前衛芸術運動において特筆すべき活動をした画家・岡本唐貴の息子でもあります。そのせいかどうかはわかりませんが、とにかくデッサン力にすぐれた美しい絵を描きます。愛くるしい子どもの顔、すさまじい殺気を放つ忍びの顔、やつれ果てた老人の顔など、圧倒的な描写力で表現しきっています。ペンや筆の使い方ひとつとっても、なかなかこうはいきませんねぇ。うまい。

主人公のカムイは、時の政府すなわち江戸幕府から「人ならざるもの」として差別を受けた人間です。その身分は、抜け忍である彼の人生に、さらに重くのしかかってきます。人の命と引き替えに明日の己の命をつなぐ過酷な生きざまは、「非人」であるがゆえに人々の生活の中に容易に入っていくことができないという主人公の社会的背景とあいまって、びしびしと心に響いてきます。

人間は如何に生きるべきかという根本的な問いを強烈につきつけるこの作品、ぜひ読んでいただきたいと思います。特に大人に! 
血みどろシーンが多いので、そういうのに耐えられる人、という限定がつきますが...。



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