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2025.11.23
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カテゴリ: 考古学
 ベネズエラの広大なカナイマ国立公園( 地図 )の中に、岩絵が描かれた遺跡群がある。そこに描かれた星々や木の葉の絵を調査した考古学者たちは、この岩絵遺跡群が未知の古代文化の中心地だったとみている。



◎発見は2009年
 岩絵遺跡群があるのは、総面積約3万平方キロにおよぶカナイマ国立公園の中でも特にアクセスの難しい地域だ。
 最初に岩絵が見つかったのは、2009年のことだった。以来、アメリカ、マノア財団からの資金提供のもと、首都カラカスにあるシモン・ボリバール大学のホセ・ミゲル・ペレス・ゴメス博士を団長とした調査団は、20カ所もの先史時代の岩絵遺跡を発見してきた( 写真 =クサリ岩陰のメインパネルを撮影するペレス・ゴメス博士)。



 2023年11月にはそれまでの成果を学術誌「Rock Art Research: The Journal of the Australian Rock Art Research Association」に発表している。

◎アクセスの悪い所で発見遅れる
 カナイマ国立公園には密林と草原地帯が広がる。その数百メートル上にはテーブルマウンテンが連なり、ここには、先住民のペモン族が「ケレパクパイ・メル(最も深い地にある滝)」と呼ぶ世界最大の落差を誇る滝「エンジェルフォール」がある( 写真 )。世界一の落差の滝にもかかわらず、世界3大瀑布(ナイアガラの滝、イグアスの滝、ヴィクトリアの滝)と違って、アクセスが悪いために世界の観光客がほとんど寄りつかない。



 しかし、人工衛星のセンサーなどを使って遠隔地から対象物を調べるリモートセンシング技術や、VR(仮想現実)技術などのおかげで、考古学者たちは実際にその場にいるように調査ができ、新たな岩絵の発見につながった。

◎知られざる文化の痕跡
 岩絵は天然顔料であるレッド・オーカー(赤鉄鉱)で描かれたピクトグラムや、岩面に彫刻されたペトログリフからなる( 写真 )。





 岩絵があるのは孤立した岩壁や断崖で、急流の中の岩に描かれていることもある。
 肉眼では確認が難しいため、様式や色彩などを詳しく調べるにはまず岩絵を広範囲にわたって撮影し、特殊な技術を使ってデジタルで高画質化する必要があった。
 年代測定はまだ行われていないが、ベネズエラにある他の同様の岩絵は、南米におけるアルカイック期(古期:紀元前1万年~紀元前3000年)の初期に描かれたと推定されている。
 また調査された岩絵遺跡群は、これまでブラジル、ギアナ地方、コロンビアで発見された、より時代が下がった岩絵と様式的に強いつながりがある。そのことはカナイマがこれまで知られていなかった文化の中心地であることを示している、と調査団の考古学者たちは考えている。

◎抽象的なモチーフ
 カナイマ渓谷の中ほどの高台に立つ「ウプイグマ岩陰」は孤立した露頭で、今回発見された岩絵遺跡群の中心的な存在だ( 写真 =ウプイグマ岩陰の空撮写真。周囲から孤立しているのが良く分かる。遺跡の右側にあるのがメインパネル。岩壁が火によって黒くなっていることから、岩陰は描き手にとって避難所だったようだ)。狩りをして暮らしていた岩絵の描き手がこの場所を選んだのは、獲物を狙うのに理想的な場所だったからだろうか。





 またクヤリンパ絶壁のメインパネルは、ウプイグマ岩陰からかなり離れた急峻な断崖に位置している( 写真 )。



 岩絵は点と線で描かれたシンプルなものから星のような図形まであり、こうした文様は20もの岩絵遺跡群で繰り返し描かれている。生き物や木の葉などを円と直線で表現したものもある。

◎幻覚作用のある植物で視た幻影か
 これらの画像の意味を読み解くのは簡単ではない。だが調査団は、何らかの儀式的な営みに関係しているのではないかと指摘する。
 抽象的なモチーフが繰り返されていることは、描き手が意識の変容した状態で視界に入ってくるものを描いていたことを強く示唆している。幾何学的な模様や浮遊物のような形状が描かれているのは、幻覚作用のある植物によって引き起こされた内視現象(眼球内のものが見える現象)によるものだろうと考えられる。
 岩絵は超自然界とつながる手段だったろう、とペレス・ゴメス博士は考える。そして先住民にとって岩壁は、何百年、何千年もの間、祖先と交流する教会のような存在だったのかもしれない。
 2024年6月にイタリアのヴァルカモニカで開かれた学術会議で、ペレス・ゴメス博士は今回の発見を報告し、描き手が環境の美しさに影響を受けたのだろうと言っている。

◎周辺地域の文化的な原点か
 地形的に立ち入りが困難なことから歴史的な調査がほとんど行われてこなかったなか、ペレス・ゴメス博士らの15年に及ぶ調査によって、岩絵が描かれた理由やその方法、周辺地域における岩絵の重要性について理解は深まった。
 カナイマの岩絵で描かれた幾何学模様は、ベネズエラで発見された他の岩絵ではより複雑化している。つまりカナイマの岩絵は、それ自体が新たに発見された様式であることに加え、地域一帯で見られる岩絵の基礎となった文化的な原点と言える可能性が高い。
 これらの岩絵から、狩猟採集民だったアルカイック期の先住民がどう暮らし、どう行動してきたかが分かるだろうと調査団は考えている。また岩絵の周辺から見つかった土器や道具は、岩絵の年代を特定する上でヒントとなるだろうと期待を寄せている。
 調査団は今後、専門家の協力を得て岩絵の年代測定と、遺跡群の記録を進めていく予定だ。

昨年の今日の日記





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Last updated  2025.11.23 06:23:04


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