親犬と姉犬の死
犬の親兄弟の愛情はあるのだろうか・・・人間のように・・・
一ヶ月に一度、るんの生まれた14日には、るんを譲ってくださったY.Tさんにメールで近況を知らせていた。
るんが10ヶ月を迎える前日、つまり8月13日。この日はその夏一番の暑い日だった。
親戚の家からの帰りのバスで、Y.Tさんからのメールの着信音に気づいた。Y.Tさんからメールが来るなんて珍しいなと思いつつ、読み続けた。
あたりはすっかり日が暮れて、暗い夜道を数人のお客を乗せたバスがちょうど峠を走っていた。
愕然とした。理由はわからなかったが、こんな内容だった。
「・・・めぐは今朝方死にました。今日、火葬にして骨壷に入って戻ってきました。・・・・・・キティ(めぐの母犬)もりょう(めぐの父犬)も一緒です。めぐは、おとうさん、おかあさんと一緒に天国へ旅立ちました。・・・」
「めぐ」ちゃんは、るんと一緒に生まれた仔で、るんのお姉ちゃんになる。
1匹だけどうしても手離せなくて、Y.Tさんはとてもかわいがって育てられていたのだ。
その仔だけでなく、親もみんな、みんないっぺんに死んでしまったの!?
私は車中の中で心乱れて涙がこみ上げてきた。10ヶ月の前日に亡くなるなんて。とても悲しかった。
10ヶ月でるんは肉親を失った。ひとりぼっちになってしまったのだ・・・るんは。
私は妙に感情移入していた。これが人間だったら、打ちのめされているだろう。でも、るんはなにも知らないではしゃぎまわっていた。
肉親を失う悲しみは人間だけのものだろうか。
私は3匹の死で打ちのめされているY.Tさんになにがあったのか、恐る恐るメールで聞いてみた。
Y.Tさんは9匹の犬を飼われていた。大型犬1、中型犬1、そして、ヨーキーが7。この仔たちを2部屋に分けて、クーラーをつけて、旅行に出られたそうだ。そして、帰宅すると、めぐちゃんたちの部屋のクーラーが止っていたのだ。この部屋には、めぐちゃんと親犬たちがいた。
あの年の8月12日と13日は日本中が猛暑でクラクラするようだった。
Y.Tさんを慰める言葉がなかった。
その後、Y.Tさんから、キティちゃんの爪をペンダントに入れて、いつも身につけているというメールをいただいた。たくさんの犬に囲まれた生活をしているY.Tさんだけど、一度に3匹失った悲しみはとても深かった。
1ヵ月後、メッセージを添えて、Y.Tさんに花籠を贈った。
「天国のキティちゃん、りょうちゃん、そして、めぐちゃんのために」