I歯科医院の高楊枝通信。

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咬合の常識と非常識


これを調整する過程で、面白いことに気が付くことがあります。
歯列上の中心線を描き込んでいますが、常に一致するわけではありません。
前後左右にズレていることも多いのです。

歯牙の最大接触位置を中心咬合位といって、歯医者はこれを基準に咬合を考えます。
この症例でも一見問題なく咬んでいるように見えますが、これを絶対的な基準と考えると誤りを犯します。
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この症例では軟性シリコンで装置を作りましたが、
なにげに咬ませると、中心咬合位とはかなり違う咬み合わせをします。
かなり左にシフトしていますね。
この咬合位置には名前はついていませんので、仮に名前を「筋バランス位」とします。
顎関節を支点とした前後左右の筋肉のバランスがとれた位置:「筋バランス位」と中心咬合位が違う人は、珍しくはありません。
たまたま最初に萌えた歯の位置が筋肉のバランスとは関係ないところだと、歯列が完成したときに筋肉のバランスと歯列のバランスが違ってしまっているのです。
特にクロスバイトになっている人には「中心咬合位」と「筋バランス位」が違っていることが多いので、要注意です。

この場合、開口から閉口までの経路が直線的ではないので、最初に接触する(早期接触)歯牙に外傷力が働きます。
その歯牙に接触性の違和感、知覚過敏、歯髄炎、クラック、ムシ歯、咬耗、破折、歯根膜炎、歯周炎など外傷性と思われる様々な症状が出ることもありますし、顎関節にストレスがかかることもあります。また筋肉の収縮度が前後左右で違っていますので、噛み締めや偏頭痛、極度の疲労感や精神的な不安定の原因になったりもします。
「重曹うがい」を使う予防歯科をやるようになってムシ歯の治療から開放されると、咬合に目がいくようになりますので、単なる対症療法ではない本質的な治療もできるようになります。
「咬合治療」をオカルト的に考える人もいますが誤りです。理論的に考えるべきなのです。
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これが調整後ですが、右側の厚みが足りないので、シリコンを足しています。
この厚み分のストレスがどこかにかかっているわけです。
咬合治療では「中心咬合位」より「筋バランス位」を優先せざるを得ませんが、
不調和のある「中心咬合位」を「筋バランス位」に近づける努力はします。
しかし、大幅に違い過ぎて調整不可能な場合は、食事は「中心咬合位」で、安静時は「筋バランス位」でと使い分けるしかありません。
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