見たまま、感じたまま、思ったまま

エアジン・ラプソディ

エアジン・ラプソディー


エアジン



エアジン・ラプソディー
明田川荘之&アケタ西荻センチメンタル・フィルハーモニー・オーケストラ
AKETA’S DISK AD-24CD
LMCD-1030


この曲が入っている同名のアルバムと出会ったのは、大阪で勤務医をしていた30歳ぐらいの頃だと思う。
例によって(私の音楽遍歴参照)難波ー心斎橋付近のレコード屋をはしごして、最後に行き着いたタワーレコードのショーウインドに、このCDが飾ってあったのだが、カラーの極彩色の他のCDの中で、この墨絵の白黒のジャケットが目に飛び込んできた。しかもちょっと怪しいエロチックな絵。

どんなジャンルの音楽だろうと手に取ってみると、ジャズとある。しかも長尺の演奏が多い。
解説を簡単に読むと、友人で、バンドのサブリーダー的存在だったサックス奏者、国吉良一(自動車事故で死亡)へのトリビュートと書いてある。
僕は、鎮魂歌とかトリビュートというのが非常に好きなのだ。しかもアルバムタイトルに、ラプソディーと書いてる。
演奏してるのも、明田川荘之&アケタ西荻センチメンタル・フィルハーモニー・オーケストラと言う、長ったらしい楽団名。名前から察するに、中央線沿線を根城とするジャズミュージシャンの集団か?って感じ。
センチメンタルという言葉にも弱いのだ。弱い物がいくつもそろっていれば買うしかないだろうって訳で、試聴もせずにこのCDを買ってしまったのだ。

家に帰って早速CDプレーヤーに乗せる。最初の1曲目から3曲目は、何じゃあ、こりゃあ・・?って感じのフリージャズっぽい演奏。ちょっとついていけないなあ・・そう思いながら、4曲目の表題曲に突入。
ところがギッチョンこの曲が素晴らしかったのだ!
ピアノのリリシズム溢れるイントロに続いて、全員で非常に個性的で叙情的、異国情緒でもあり、日本情緒的にも聞こえるそんなテーマが演奏される。一人だけソロを取らないトランペットの吉田哲治のハイトーンが胸に突き刺さる。その後、テナーとアルトの各サックスがソロを取り、次にうなり声を出しながらのアケタの怒濤のソロ、そしてまた全員によるテーマの演奏があってラストに突入。23分の演奏時間が全く長く感じられない。
そして、アルバムの最後は、ルネッサンスの巨匠、ダウランドの「今こそ別れ」をアケタのオカリナが演奏して終わる。

リーダーのピアニストでオカリナ奏者のアケタは面白い人である。フリージャズ的なぐちゃぐちゃの演奏をやると思えば、この曲のようなリリシズム溢れる曲を書く、と思えば「南部牛追い歌」などの民謡をオカリナで演奏したりする。
この曲は彼の代表曲の一つのようで、その後のアルバムでも繰り返し登場する。彼の集大成的な4枚組アルバム「旅」では、国吉と同じくバンドのサブリーダー的存在であったトロンポーン奏者の板谷博のトリビュート(しかし、日本人のジャズミュージシャンは、若くして、酒、たばこ、病気、薬、事故が元でよく死ぬ・・)になっており、先の演奏では聞けなかった板谷のトロンボーンソロがフューチャーされている(個人的にはこっちの演奏の方が良いと思う)。

ついでに、このジャケットの絵はアケタの父親である明田川孝のデッサンから選ばれたそうである。
彼は、昔からあった土笛オカリナを正規の楽器と呼べる状態にしてアケタのオカリナというブランドを興した人であり、それを契機に、彫刻、美術、音楽へと興味が向かい、全ての分野で活躍した人らしい。

エアジンと言うのは、サックス奏者、ソニーロリンズの有名な曲の題名。
彼の出身であるナイジェリア(NIGERIA)を、ジャズ式に逆から読んだだけの意味である。その名前を取った、エアジンというジャズクラブが横浜にあり、アケタや国吉のホームグラウンドであった。その店の名前をとったのが、このエアジンラプソディーという曲名の由来である。



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