静かな時が流れる｢風の庭」

< 新しい記事

新着記事一覧(全5713件)

過去の記事 >

2020.09.06

シュウカイドウ、コキア。暑い日に、クリスマス・イブの短編を。

(8)

テーマ：花のある暮らし、宿根草(3773)

カテゴリ：庭

シュウカイドウも花期が長いですね～。

赤い茎が、ますます赤く冴えて、
丈もぐ～んと伸びています。

コキア。一株育てただけでも、
半端ない数の種が飛び散り、来年はコキアだらけ。
と、分かっていながら、今年は五株ほど残しました。
樹形は、自然に丸くまとまります。
秋には、真っ赤に紅葉することを想像して、
ココとココ、と考えながら、残し、
あとは全部、抜き取りました。

真っ赤な葉ばかり注目されるけれど、
小さな花も、見てやってくださいね。

息子が置いていった文庫本を読みました。
レイ・ブラッドベリの短編集です。
心に残ったおしゃれな一編「ゆるしの夜」。
暑い日ですが、クリスマス・イブの話をどうぞ。

　クリスマス・イブの深夜、メロン神父は目覚めた。
　なぜか、教会堂の告解室へ行かなくては、
　という思いが突き上げた。
　「どうしたことだ？　こんな時間に、誰が、
　告解室で待っているというのだ。」
　外は美しい雪景色が出現していて、立ちすくみながらも、
　告解室に身を入れた。
　「馬鹿な年寄りめ、ベッドへ戻れ」と彼は自分に思った。
　だがそのとき、「どうか神のお恵みを、
　私は罪を犯しました。」と男の声がささやいた。
しわがれた老人と思える男の声。
　「こんな夜、無茶な外出をして。どうぞ話しなさい」
　「十三のとき、クリスマスの週のこと、
　大切に可愛がっていた、愛犬のボーが逃げ出しました。
　帰ってくれと、泣いて泣いて待って待って祈りました。
　イブの夜、愛犬はみすぼらしい姿で帰ってきました。
　私はしがみついて泣き、そのご彼を叩きました。
　掌で、こぶしで、叩いて叩いて、
　その間、彼は黙って立っていました。
　彼は私の愛を裏切ったのですが、今度は私が裏切っている。
　クリスマス・イブになると、彼の幽霊が戻り、
　犬を叩く音が聞こえ、自分の至らなさに気づかされます」
　男は泣き、「神はこんな私を許されるでしょうか」
　神父もとめどなく涙を流しながら、
　「お許しになります」
　「神父様は、私を許してくれますか」
　「許します。しかし、その前に、　私にもお話があります。
　十歳のころ、私にもかけがえのない愛犬がいて、
　彼が逃げ出したときは、憎たらしく思い、帰ってきたときは、
　抱きしめ、そのあとは叩きました。今夜まで、誰にも話さず、
　ずっとやましさを感じていました」
　沈黙のあと、「きっと神は我々をお許しになると思います」
　二人きりの長い闇のなか、神父は、
　「ワインを一杯、くみかわしましょうか」
　「こんな素敵なクリスマスは初めてです」
　「私も初めてです」
　老神父は立ち上がり、告解室を出た。
　仕切りの反対側の動きを待ち受けた。
　物音のしない告解室のドアを開くと、だれもいなかった。
　雪の降りしきるなか、教会の入り口の姿見には、
　ひとりの老人、彼自身の姿が写っていた。
　鏡の老人に軽く手を上げ、祝福を与えた。
　老神父は目をぬぐうと、ワインを取りに入った。
　おもては一面の雪、一面のクリスマス風景だった。

　　　　花ブログランキンに参加しています。
　　　　　　