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送張七判官還京覲省(大夫之子時初) 春蘭方可採、此去葉初齊。函谷鶯聲裏、秦山馬首西。庭■(「門」のなかに「韋」。イ)新柏署、門館舊桃蹊。春色(一作日)長安道、相隨入禁閨(一本缺)。【韻字】齊・西・蹊・閨(平声、斉韻)。【訓読文】張七判官の京に還り覲省するを送る。春蘭方に採るべく、此を去らば葉初めて斉しからん。函谷鴬声の裏、秦山馬首の西。庭■(イ)新なる柏署、門館旧桃蹊。春色長安の道、相随つて禁閨に入る。【注】○張七判官 劉長卿の友人らしいが、未詳。○覲省 帰省して故郷の親を見舞う。○函谷 戦国時代に秦が現在の河南省霊宝県の南西に設けられ、漢の武帝た河南省新安県の東北に移した関所。○秦山 陝西省藍田県の南の終南諸山。○柏署 漢の御史府に柏を植え、つねに野烏が数千その上に宿ったところから、御史台をいう。○禁閨 (四部備要本)(四庫全書本)に「禁■(「門」のなかに「韋」。イ)」に作る。「■(イ)」は微韻なので押韻しない。○門館 賓客・食客が宿泊するやかた。【訳】張七判官が帰省して親を見舞うのを見送る。春蘭もちょうど採るのによいくらい、此の地を去ったら葉がやっと生えそろう。函谷関はチョウセンウグイスの声につつまれ、馬首の向かう西の先には終南山。朝廷のま新らしい御史台、宿泊所には昔のままの桃を植えた小道。長安へと至る道も春の気配がきざすころ、あなたとともに禁中へも春がおとずれることでしょう。
January 31, 2006
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送許拾遺還京 萬里辭三殿、金陵到舊居。文星出西掖、卿月在南徐。故里驚朝服、高堂捧詔書。暫容乘駟馬、誰許戀鱸魚。【韻字】居・徐・書・魚(平声、魚韻)。【訓読文】許拾遺の京に還るを送る。万里三殿を辞し、金陵旧居に到る。文星西掖を出で、卿月南徐に在り。故里朝服に驚き、高堂詔書を捧ぐ。暫らく駟馬に乗るを容るるも、誰れか鱸魚を恋ふるを許さん。【注】○許拾遺 劉長卿の友人らしいが、未詳。「拾遺」は、天子の言行の不完全な点を指摘し諫める役。○金陵 江蘇省南京市。○文星 文昌星。文運をつかさどると考えられていた。転じて文才ゆたかな人物を指す。○西掖 中書省。○卿月 上流の知識人。○南徐 江蘇省鎮江市。○朝服 朝廷に出仕するときに着る服。○高堂 お宅。○詔書 天子のみことのりを記した文書。○駟馬 四頭だての馬車。○鱸魚 呉淞江にすむ魚。ヤマノカミ。晋の張翰は秋風が吹く頃に呉のジュンサイの羮と鱸魚の膾を思い出し官を辞して故郷に帰ったという。【訳】許拾遺が京にもどられるのを見送る。三殿に別れを告げて万里もはなれたこの地にやってこられたが、金陵で旧居に向かわれる。才能あふれる君は中書省をあとにして、上流の知識人たちの多くは南徐州に集っている。朝服を着た君の姿に故郷のみんなは驚き、りっぱなお宅には天子さまの詔書が捧げられた。京にもどれば、かりにちょっと四頭立ての馬車に乗ることは許されても、張翰のように鱸魚の膾が食いたくなったからとて辞任して還るのは許されぬ。
January 30, 2006
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獄中見壁畫佛 劉長卿不謂銜冤處、而能窺大悲。獨棲叢棘下、還見雨花時。地狹青蓮小、城高白日遲。幸親方便力、猶畏毒龍欺。【韻字】悲・時・遲・欺(平声、支韻)。【訓読文】獄中にて壁画仏を見る。謂(おも)はざりき冤を銜む処、而も能く大悲を窺はんとは。独り棲む叢棘の下、還つて見る雨花の時。地狭くして青蓮小さく、城高くして白日遅し。幸ひに方便の力に親しみ、猶ほ畏る毒龍の欺くを。【注】○獄中 劉長卿は至徳三年(七五八年)に海塩令となったが、乾元年間に事に因って獄に陥ちた。○不謂 想像もしなかった。○銜冤 無実の罪を受け、恨めしくおもう。○大悲 大いなる仏の慈悲。○棘 牢獄。○雨花 雨の中に咲いている花。○青蓮 仏の乗る蓮台であろう。○白日 太陽。○方便 仏が衆生を導く手段。○毒龍 煩悩。【訳】獄中で壁に画かれた仏を見て詠んだ詩。無実の罪でこのように獄に繋がれるとは想いもしなかったが、こんなことでもなければ、御仏の深い慈しみに接する機会も無かったかもしれぬ。独り牢獄にいると、いままでろくに見なかった雨に咲く花までいとおしい。押しこめられた部屋は狭いから仏画の台座の青蓮も小さく、城壁が高いから日が上るのも遅い。頼れるのは御仏の方便の力、あとは煩悩になやまされるのだけを心配していればよい。
January 29, 2006
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奉陪使君西庭送淮西魏判官(得山字) 羽檄催歸恨、春風醉別顏。能邀五馬送、自逐一星還。破竹從軍樂、看花聽訟閑。遙知用兵處、多在八公山。【韻字】顔・還・閑・山(平声、刪韻)。【訓読文】使君の西庭にて淮西魏判官を送るに陪し奉る。(山の字を得たり)羽檄催帰の恨、春風酔別の顏。能く五馬の送るを邀へ、自から一星の還るを逐ふ。竹を破くは従軍の楽、花を看て聴訟閑たり。遥かに知る用兵の処、多く八公山に在るを。【注】○淮西魏判官 劉長卿の知人らしいが、未詳。「淮西」は、唐の方鎮の一。治所は蔡州(今の河南省汝南県)。「判官」は、裁判官。○得山字 何人かで詩を詠むにあたり、山の字を韻にして詠むクジを引き当てた。○羽檄 急遽、軍隊を召集するときの書面。○五馬 太守が乗る馬車につなぐ五頭の馬。○聴訟 訴えを聞いて裁く。○用兵 兵隊を使う。戦争をする。○八公山 安徽省寿県の東北の淮河の南岸にあり。漢代にここで八人の仙人が囲碁会飲していた伝説にちなむ。【訳】太守が屋敷の西側の庭園で淮西の魏判官の送別会を開き、それに相伴した時の詩。火急の檄文が来て、魏判官がお帰りになることになり残念なこと、春風が別れの酒に酔った顔を吹きすぎる。太守さまが五頭立ての馬車でお見送りになり、天の星のように才能光る魏氏は戻っていかれる。いったん従軍なさると竹を割るような非常な勢いで敵を圧倒し、民の訴えを聴いては花を眺めるような落ち着いた気持ちで冷静に裁判にのぞむ。遠くかの地へ行かれたら、きっと八公山あたりで戦闘をくりひろげるのでしょう。
January 28, 2006
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北海道いとうファームのジンギスカンが宅配されてきて、きのう食べました。ほんとうは兄の家の甥っ子・姪っ子の所へ持って行って一緒に食べようと思って注文したんだけど、メールできいたら、うちの子は絶対食べない・・・とかいう返事がかえってきたので、こっちで3人で食べました。600グラム入りの袋が2つで送料こみで3000円くらいでした。送られてきた味つきマトンと家で用意したタマネギともやしを中華鍋で炒めて食べた。ちょっと味噌系のタレ付きだったので、その味だけで野菜もじゅうぶん味がつきました。ほとんど臭みも無く、まあまあでしたよ。肉は1人前200グラムで500円ということになりますが、焼き肉を外食したらふつう500円じゃ食べられないから、まあ満足。
January 28, 2006
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送崔處士先適越 劉長卿山陰好雲物、此去又春風。越鳥聞花裏、曹娥想鏡中。小江潮易滿、萬井水皆通。徒羨扁舟客、微官事不同。【韻字】風・中・通・同(平声、東韻)。【訓読文】崔処士の先に越に適(ゆ)くを送る。 山陰雲物好く、此(ここ)を去れば又春風。越鳥花裏に聞き、曹娥鏡中を想ふ。小江潮満ち易く、万井水皆通ず。徒らに羨む扁舟の客の、微官にして事同じからざるを。【注】○崔処士 劉長卿の友人らしいが、未詳。「処士」は、仕官しない在野の才子。○山陰 浙江省紹興市。○雲物 景色。○越鳥 南方の鳥。越の国の鳥。○曹娥 後漢のころの会稽郡上虞県の人。その父が五月五日の神事の時、江中で溺死し、遺体が流失した。時に年十四であった曹娥は、川べりで十七昼夜なきくずれ、ついに身を投げたという。【訳】崔処士が自分より一足はやく越に行くのを見送る詩。山陰は山紫水明の地、ここから去ると、むこうへ着くのは春風吹く頃。越の鳥は花咲く枝でさえずり、鏡のように澄み切った鏡湖を見れば純真で孝行だった曹娥のことがしのばれましょう。ちいさな川には浙江の潮が満ちやすく、一万里四方に水がいきわたる水郷の地。小舟でのんびり旅する君がうらやましいよ、私のほうは安月給の小役人で忙しいばかり。
January 27, 2006
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送李七之筰水謁張相公 惆悵青春晩、殷懃濁酒■(ツチヘンに「盧」。ロ)。後時長劍澀、斜日片帆孤。東閤邀才子、南昌老腐儒。梁園舊相識、誰憶臥江湖。【韻字】■(ロ)・孤・儒・湖(平声、虞韻)。【訓読文】李七の筰水に之き張相公に謁するを送る。惆悵す青春の晩、殷懃たり濁酒の■(ロ)。後時長剣渋く、斜日片帆孤なり。東閤才子を邀(むか)へ、南昌腐儒老いたり。梁園旧相識、誰か憶ひし江湖に臥さんとは。【注】○李七 劉長卿の友人らしいが、未詳。○筰水 未詳。筰都(四川省漢源県東南あたり)の川か。○張相公 未詳。「相公」は、宰相。○惆悵 嘆き悲しむ。○殷懃 心のこもったさま。○■(ツチヘンに「盧」。ロ)。 酒場のカウンター。○東閤 東の小門。漢の公孫弘が役所の東の小門を開いて賢人を招いたという故事。○南昌 江西省南昌市。○梁園 漢代に梁の孝王が築いた庭園。ここに多くの文人墨客を招いて楽しんだという。○相識 知り合い。○江湖 都から遠く離れた地方。【訳】李七が筰水に行き張相公にお目通りするのを見送る。君と別れる春の晩のつらさ、濁酒を酌み交わし、ねんごろに別れを惜しむ。今度君と会えるのは腰の剣もさびついて抜けなくなるころかもしれぬ、沈む夕日を受けた君の舟はぽつんとはるかに去ってゆく。漢の公孫弘が役所の東の小門を開いて賢人を招いたというから君ほどの才能があれば歓迎されようが、私程度の者ではこうやって南昌で老いぼれていくのがおち。文人たちの集まるという梁園の旧友たちは、私が都から遠く離れた地方で隠居のような生活をしているとはご存じあるまいから、会ったらよろしく伝えておくれ。
January 26, 2006
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January 26, 2006
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送嚴維尉諸曁(嚴即越州人) 劉長卿愛爾文章遠、還家印綬榮。退公兼色養、臨下帶郷情。喬木映官舍、春山宜縣城。應憐釣臺石、閑却爲浮名。【韻字】榮・情・城・名(平声、庚韻)。【訓読文】厳維の諸曁の尉たるを送る。(厳は即ち越州の人なり)爾を愛するも文章遠く、家に還れば印綬栄ゆ。公を退き色養を兼ね、下に臨んで郷情を帯ぶ。喬木官舎に映じ、春山県城に宜し。応に釣台の石を憐み、浮名を為すを閑却すべし。【注】○厳維 字は正文。越州の人。至徳二載に進士に及第し、諸曁の尉を授けられた。30番に既出。○諸曁 浙江省の県の名。○印綬 官吏に任命されるときに天子から授けられる印とその印のひも。○色養 父母に仕えて孝行する。○釣台 浙江省桐廬県の南の富春山に後漢の厳光が釣りをしたという釣台があり、下は銭塘江にのぞむ。厳維を同姓の厳光になぞらえたのであろう。○閑却 すてておく。○浮名 うわべだけの名声。【訳】厳維が諸曁の尉として赴任するのを見送る。君を敬愛しているが私など文章は遠くおよばず、家に還ればりっぱな印綬を身に帯びて故郷に錦をかざる。高官を退き孝行につとめ、故郷を思い低い官位に甘んじる立派な君。官舎のそばには高い木がそびえ、県城から見える春の山は美しい若葉が萌える。君のことだから、きっと釣りでもしてのんびり暮らし、手柄を立ててうわべだけの名声を得ようなどとケチなことは考えないにちがいない。
January 25, 2006
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餞別王十一南遊 望君煙水闊、揮手涙沾巾。飛鳥沒何處、青山空向人。長江一帆遠、落日五湖春。誰見汀洲上、相思愁白蘋。【韻字】巾・人・春・蘋(平声、真韻)。【訓読文】王十一の南遊するに餞別す。君を望めば煙水闊(ひろ)く、手を揮(ふ)れば涙巾を沾(うるほ)す。飛鳥何れの処にか没し、青山空しく人に向かふ。長江一帆遠く、落日五湖春なり。誰か見ん汀洲の上(ほとり)、相思白蘋を愁ふるを。【注】○餞別 旅立つ人を見送る。○王十一 劉長卿の友人らしいが、未詳。「十一」は、排行。王起という排行が十一の人物がいるが、劉長卿が没した時分にまだ三十歳程度であるから、別人であろう。○五湖 江蘇省と浙江省にまたがる太湖。○汀洲 水ぎわと中州。『玉台新詠』巻五・梁・柳■(リッシンベンに「軍」。ウン)《江南曲》「汀洲に白蘋を採れば、日暖かにして江南春なり」。○白蘋 白いウキクサ。【訳】友人の王十一が南方へ旅立つのを見送った時の詩。去りゆく君を遠く見やればもやのかかった水面はどこまでも果てしなくつづき、手を振ってわかれるとハンカチも涙にぬれる。飛び去る鳥はいずこへか姿を消し、君の去ったあとには、わが目の前には青い山が見えるばかり。君が乗ったのは、あの長江を遠ざかる帆掛け船、五湖の春に夕日が沈む。汀のほとりで、君を思いながら、さびしく浮き草を眺める私の姿など誰も気にもとめぬ。
January 24, 2006
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送薛承矩秩滿北遊 匹馬向何處、北遊殊未還。寒雲帶飛雪、日暮鴈門關。一路傍汾水、數州看晉山。知君喜初服、祗愛此身閑。【韻字】還・關・山・閑(平声、刪韻)。【訓読文】薛承矩の秩満ちて北遊するを送る。匹馬何れの処にか向かひ、北遊殊に未だ還らず。寒雲飛雪を帯び、日は暮る鴈門関。一路汾水に傍ひ、数州晋山を看る。知んぬ君の初服を喜び、祗(ただ)此の身の閑なるを愛するを。【注】○薛承矩 劉長卿の知人らしいが、未詳。○秩満 役人としての任期を終える。○遊 他国へ行く。旅する。○飛雪 (四庫全書本)に「飛雲」に作るは非。○鴈門関 山西省代県の北西にある関所で、大同と太原間の要地。○汾水 山西省寧武県に源を発し、山西省中央部を南下して黄河に注ぐ。むかし尭はこの川のほとりで四人の賢人に出会い、天下を忘れたという話が『荘子』逍遥遊篇に見える。○晋 春秋時代の晋国は山西省南部を中心に栄えたところから、山西省をいう。○初服 仕官する前に着ていた服。【訳】薛承矩が任期が満了して北遊するを見送る詩。馬に乗ってどこへ向かうのだろう、もう北へ行ったきり戻ってこないのかしら。とおく見やれば寒々とした雲に雪もちらほら、雁門関のあたりに日がしずむ。汾水に沿って一路北へ向かわれるが、とちゅういくつもの州を経ながらかつての晋の山々を目にすることであろう。きみが仕官する前に着ていた服を嬉しそうに着ているのは、せわしない役人生活よりも、静かな暮らしが好きだからということが、よくわかったよ。
January 23, 2006
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赴宣州使院夜宴寂上人房留辭前蘇州韋使君 白雲乖始願、滄海有微波。戀舊爭趨府、臨危欲負戈。春歸花殿暗、秋(一作寒)傍竹房多。耐可機心息、其如羽檄何。【韻字】波・戈・多・何(平声、歌韻)。【訓読文】宣州使院に赴き、夜、寂上人の房に宴し、辞を前蘇州韋使君に留む。 劉長卿白雲始願に乖(そむ)き、滄海微波有り。旧を恋ひて争って府に趨き、危に臨んで戈を負はんと欲す。春は花殿に帰つて暗く、秋は竹房に傍つて多し。機心を息(やす)ましむるに耐へんや、其れ羽檄を如何せん。【注】○宣州 安徽省宣城県。○使院 節度使留後(節度使が親類縁者などを任命した官)の官署。○寂上人 劉長卿の知人の僧らしいが、未詳。○房 寺に付属し、僧が日常、起居する建物。○前蘇州韋使君 韋応物か。長安の人。貞元四年に蘇州の刺史となった。田園詩人であった。○府 幕府。節度使の役所。○機心 いつわり、たくらむ心。策略を弄する心。○羽檄 急いで軍隊を呼び集めるときに用いる書状。鳥の羽を挿んで緊急であることを示した。【訳】宣州の節度使留後に赴き、夜、寂上人の僧房で宴を開き、前任の蘇州刺史である韋氏にあてて書き残した詩。 初志にそむいて白雲のように僻地まで流されてまいりましたが、滄海でも微波が起こるように水辺の田舎の地でも小さな乱くらいは起きるやもしれません。治安の良かった昔を恋い、争って節度使の幕府に向かい、国家の危機に臨んでは戈をかついで参戦しようと思う。社会不安の多い今、花さきほこっていた御殿は春になっても暗く、竹林の僧房はすっかり秋のけはい。策を弄している場合ではございませぬぞ、いつ緊急の招集の書状がとどくやもしれませぬから。
January 22, 2006
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揚州雨中張十宅觀妓(一作張謂詩) 劉長卿夜色帶(一作對,又作滯)春煙、燈花拂更然。殘妝添石黛、艶舞落金鈿。掩笑頻欹扇、迎歌乍動弦。不知巫峽雨、何事海西邊。【韻字】然・鈿・弦・邊(平声、先韻)。【訓読文】揚州にて雨中に張十の宅にて妓を観る。夜色春煙を帯び、灯花払ひて更に然(も)ゆ。残粧石黛を添へ、艶舞金鈿を落とす。笑みを掩はんと頻りに扇を欹(そばだ)て、歌を迎へて乍ち弦を動かす。知らず巫峽の雨、何事ぞ海西の辺。【注】○揚州 江蘇省中部にある長江北岸の都市。○張十 劉長卿の知人であろうが、未詳。○妓 宴席で歌を歌ったり舞を舞ったりして客を楽しませる女性。○然 (四部備要本)(四庫全書本)に「燃」に作る。○殘妝(四部備要本)(四庫全書本)に「殘粧」に作る。○石黛 まゆずみとして用いた石墨。○金鈿 黄金のかんざし。○巫峽雨 楚の懐王が高唐に遊び、夢の中で巫山の神女と契り、神女が別れ際に「朝には雲となり暮れには雨となる」と言い残したという。【訳】揚州で雨の日に張十の宅で妓を観て詠んだ詩。春霞たつ夜景色、舞を舞う妓女の袖が灯火をかすめると更に燃える。おしろい・ほほべに・まゆずみと、優雅に舞えば落ちるかんざし。扇をかたむけ笑顔をかくし、歌に合わせて弦鳴らす。いったい巫峽の雨が、どうしてこんな東海の西の地にふるのかしら。(芸妓を巫山の神女になぞらえ、それが揚州にいるのは奇妙だということ。)この詩は次に引くように、『全唐詩』には張謂の条にも収められている。揚州雨中張十七宅觀妓(一作劉長卿詩) 張謂夜色帶寒煙,燈花拂更然。殘妝添石黛,艶舞落金鈿。掩笑須欹扇,迎歌乍動弦。不知巫峽雨,何事海西邊。
January 21, 2006
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あの「ミリオンダラー・ベイビー」で知られるポール・ハギス監督のデビュー作。 昨年5月に全米で公開され、ボックスオフィス・ベストテンに6週連続ランクインを果たした傑作。サンドラ=ブロック、ブレンダン=フレイザー、ドン=チードル、マット=ディロ ン、ライアン=フィリップ、サンディ=ニュートンや、カリスマ・ラッパーの“リュダクリス”など、脚本に魅せられ集結した個性豊かな俳優陣が、各自の持ち味を余す所なく発揮し、この映画を味わい深いものにしている。 夜中の12時、ロスのハイウェイで起きた一件の自動車事故が、思いもよらぬ“衝突”の連鎖反応で、様々な人々の運命を狂わせていく . . . 。刑事、自動車強盗、地方検事とその妻、TV ディレクター、鍵屋とその娘、病院の受付嬢、雑貨屋の主人・・・事件に巻き込まれた関係者たちの、階層・人種を越えて交錯する、愛・憎しみ・悲しみ・・・。神のいたずらにより、人生を翻弄される人間たち。ロスの36時間の中で渦巻く喜怒哀楽の人間模様 . . . 。 ハギス監督は、かつてロスのビデオ店から出てたところを見知らぬ男たちに銃を突きつけられ、カージャックされたことがあった。彼は帰宅するや、 家のカギ全てを交換し、自分の車を盗んだ男たちについて考え始めた。 彼らは、いつから友人なのか、楽しみはあるのか、自分たちが犯罪者だという意識があるかいなか、自分たちの行為をどう正当化したのか . . . 。「クラッシュ」の脚本は、その時の経験をもとに、「見知らぬ人間への恐怖」をテーマとして書いたという。これは不寛容さと思いやりの映画であり、人間の選択と、それによって支払う代償について描いた映画だ。人間はみな己が他人から判断されるのを嫌うが、他人を判断することには何の躊躇も感じない。そして、自分が判断を下した人間に、どれほど驚かされるかということを描いた映画である。 この映画がをご覧になって、ご自身の運命や人生にというものについて、もう一度考えてみては、いかがでしょうか。 公式H P: http://www.crash-movie.jp/ 2006年2月11日よりシャンテシネ他にて全国順次公開
January 21, 2006
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尋南溪常山道人隱居(一作尋常山南溪道士隱居) 一路經行處、莓(一作蒼)苔見履痕。白雲依靜渚(一作者)、春(一作芳)草閉■(「門」のなかに「月」。カン)門。過雨看松色、隨山到水源。溪花與禪意、相對亦忘言。【韻字】痕・門・源・言(平声、元韻)。【訓読文】南渓に常山道人の隠居を尋ぬ。一路行処を経、莓(一作蒼)苔履痕を見る。白雲静渚(一作者)に依り、春(一作芳)草■(カン)門を閉づ。雨を過ごして松色を看、山に随つて水源に到る。渓花と禅意と、相対して亦た言を忘る。【注】○南渓 浙江省紹興市の南にある鏡湖の南渓か。『全唐詩』によれば、「南渓常山」を「常山南渓」に作るテキストがあるが、浙江省には常山県もある。○常山道人 劉長卿の知人らしいが、未詳。「道人」は、道士。また、俗世間をはなれた隠者。○莓苔 こけ。○静渚 しずかな水ぎわの地。【訳】南渓に常山道人の隠居所を訪問したときの詩。むかし通った見覚えのある一すじの路をたどれば、青い苔のうえに道人のものとおぼしい草履の足跡がある。白雲は静かな渚の上に漂い、春草はひっそりとした門を閉じるように長く伸びている。雨あがりには松の緑も鮮やかに、山道をのぼって水源に到る。谷川に咲く花と静かな心持ちと、こんなに落ち着ける素晴らしい地に来て道人と向かい合えば、もう満足で言うこともない。
January 20, 2006
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西庭夜燕喜評事兄拜會 劉長卿猶是南州吏、江城又一春。隔簾湖上月、對酒眼中人。棘寺初銜命、梅仙已誤身。無心羨榮禄、唯待卻垂綸。【韻字】春・人・身・綸(平声、真韻)。【訓読文】西庭に夜燕し評事兄の拝せられて会ふを喜ぶ。猶ほ是れ南州の吏、江城又一春。簾を隔つ湖上の月、酒に対す眼中の人。棘寺初めて命を銜み、梅仙已に身を誤る。心に栄禄を羨むこと無く、唯だ待て卻つて綸を垂るるを。【注】○西庭 (四庫全書本)には「西亭」に作る。「西亭」は、西側のあずまや。○評事兄 「評事」は、司法官。大理評事。最高裁判所の裁判官。○拝会 このたび評事が新たな官位を授けられ任地に赴く途中に再会したということであろう。○南州 安徽省当塗県。○江城 川沿いの町。○棘寺 大理寺。刑法を掌る最高機関。むかし棘(イバラ)の木の下で訴訟を聴いたのでいう。○梅仙 梅福。漢の寿春の人。字は子真。わかいころ長安で学び、『尚書』『春秋穀梁伝』に詳しかった。郡の文学となり、南昌の尉の補佐役などをつとめたが、のちに官を棄てて家居した。成帝・哀帝のころ、しばしば上書進言したが、元始年間に王莽が専政すると、妻子を棄てて九江に行き、仙術を学んだ。のちに梅福を会稽で見かけた者があったが、姓名を変えて呉市の門番となっていたという。【訳】西がわの庭で夜宴を催し、評事が官命を拝して任地に赴く途中に立ち寄ってくれ、再会できたのを喜ぶ詩。このたび貴兄は南州に役人として赴任なされるそうですが、わたしはこの川沿いの町でまた新春を迎えました。簾ごしには美しい湖上の月が見え、目の前では貴兄が酒をめされていて、うれしい再会でございます。しかしながら、大理寺ではじめて拝命なさったが、役人生活にとらわれるのは梅福の例もあるように、身のあやまちの元ですぞ。貴兄は出世や俸給などあてにせず、あくせくせずにのんびりと釣りでもしてお暮らしになるほうが、よほど気楽でよいですぞ。
January 18, 2006
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秋夜雨中諸公過靈光寺所居 晤語青蓮舍、重門閉夕陰。向人寒燭靜、帶雨夜鐘沈(一作深)。流水從他事、孤雲任此心。不能捐斗粟、終日愧瑤琴。【韻字】陰・沈・心・琴(平声、侵韻)。【訓読文】秋夜雨中に諸公靈光寺の所居に過(よ)ぎらる。青蓮舍に晤語し、重門夕陰に閉づ。人に向つて寒燭静かに、雨を帯びて夜鐘沈たり。流水他事に従ひ、孤雲此の心に任せたり。斗粟を捐(す)つること能はず、終日瑤琴に愧づ。【注】○諸公 多くのかたがた。○霊光寺 劉長卿が身を寄せていた寺らしいが、未詳。○晤語 親しく語り合う。○青蓮舎 劉長卿が暮らしていた霊光寺のなかの建物であろう。○斗粟 一斗ほどの粟。わずかばかりの俸給。○瑤琴 美しい玉で装飾した琴。【訳】ある秋の夜に雨ふるなか諸公が霊光寺の住まいにお立ち寄りになった時の詩。青蓮舎で向かい合って話をしていると、夕陰せまるなか寺男が山門を閉じる。寒ざむとした燭の光は静かに客人を照らし、雨の中、鐘の音がしずかに薄れていく。流れゆく水は環境に合わせてさからわず、ひとひらの雲は自分の思い通り気ままに空を漂う。それにひきかえ私ときたら、わずかな俸禄の役人生活を捨てることすらできず、一日中、美しい玉で装飾した琴を前に己のふがいなさを恥じ入るばかり。
January 17, 2006
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送李校書謫越謁杜中丞 劉長卿江風處處盡、旦暮水空波。搖落行人去、雲山向越多。陳蕃懸榻待、謝客枉帆過。相見耶溪路、逶■(「施」の「方」をシンニョウに換えた字。イ)入薜蘿。【韻字】波・多・過・蘿(平声、歌韻)。【訓読文】李校書の越に謫せられて杜中丞に謁するを送る。江風処処に尽き、旦暮水空波あり。揺落して行人去り、雲山越に向かつて多し。陳蕃榻を懸けて待ち、謝客帆を枉げて過ぐ。相見る耶渓の路の、逶■(イ)として薜蘿に入るを。【注】○李校書 李▲(「糸」のみぎに「予」。ジョ)か。字は仲舒。趙州の人。天宝の末、秘書校書郎となり、大暦十二年に●(「務」の「力」を「女」に換えた字。ブ)州(浙江省金華県)の刺史となった。○謫 左遷される。○越 浙江省紹興・会稽あたり。○謁 目上の人に目通りする。お会いする。○杜中丞 未詳。「中丞」は、省の次官に相当する官位。○旦暮 朝夕。○揺落 木々の葉が散り落ちるさま。○行人 旅人。○陳蕃懸榻 後漢の大臣となった陳蕃が、まだ太守だったころ、名士とみとめた相手が訪ねてくると、目下の者でも特製のベンチを出してもてなした故事から、自分が認める立派な人士を接待すること。○謝客枉帆過 謝霊運《過始寧墅》詩「竹を剖きて滄海を守り、帆を枉げて旧山を過ぐ」。○耶渓 ふつうは福建省南安県境に在る地を指すが、ここではおそらく、若耶渓(浙江省紹興市の南の若耶山に源を発し、北流して運河に注ぐ)を指すのであろう。 ○逶■(イ) まがりくねるさま。○薜蘿 ツタやカズラの類。【訳】李校書が越に左遷されて杜中丞にお目通りするのを見送る。川風はあちこちに吹き過ぎ、朝夕は川の水には波、空には雲の波がたつ。木々の葉も散り落ちるころ君は旅路、越の方面に近づくにつれ雲のかかる高い山々も多く目につくことだろう。後漢の陳蕃は名士が来ると特別に用意した榻を出し、その人が帰ると懸けて片付けたというし、南朝宋の謝霊運は帆を枉げて故郷を過ぎたという。想像してみるに君のこれから行く若耶渓の路は、くねくねと蛇行してツタやカズラの茂る山深い所で苦労もあろうが、がんばってくれたまえよ。
January 16, 2006
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過横山顧山人草堂 只(一作祗)見山相掩、誰言路尚通。人來千嶂外、犬吠百花中。細草香飄雨、垂楊■(「門」のなかに「月」。カン)臥風。卻尋樵徑去、惆悵緑溪東。【韻字】通・中・風・東(平声、東韻)。【訓読文】横山の顧山人の草堂に過(よ)ぎる。只(一作祗)見る山相掩ふを、誰か言ひし路尚ほ通ずと。人は千嶂の外より来たり、犬は百花の中に吠ゆ。細草香ばしくして雨に飄へり、垂楊■(カン)として風に臥せり。卻つて樵径を尋ねて去り、緑渓の東に惆悵す。【注】○横山 ここでは浙江省海塩県の南にあるものを指すか。○顧山人 劉長卿の友人らしいが、未詳。「山人」は、俗世間を捨てて山に隠れ住む人。○千嶂 多くのきりたった峰。○百花 さまざまな花。○細草 細かな草。○垂楊 しだれ柳。○樵径 きこりが通う細い道。○惆悵 がっかいするさま。 【訳】横山に住む顧山人の草堂に立ち寄って作った詩。いくら遠くをみわたしても、ただひたすら山また山。道が通じているなんていったい誰がいったのやら、旅人である私は幾つも重なり合った山々の向こうからやって来て、犬は多くの花が咲き乱れる中で見慣れぬ私に吠えかかる。細い草は雨に打たれながらも良い香りをはなち、シダレヤナギはひっそりと風にゆれる。ふだんは町暮らしの私が、あべこべに樵が通るような小道を通って、緑の水をたたえた渓谷の東にあるという君を訪ねたら、とうの君は留守で、落胆したよ。
January 15, 2006
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フランスを始め、世界28カ国で販売され、世界中のファッション関係者の間でクチコミで広がった時計のブランド「o.d.m.」。日本でもこれから広まりそう。こんなカワイイデザインもあるのなら、大晦日のK-1ダイナマイト!で あのホイス・グレイシー(柔術家)と対戦した所英男だけに愛用させておくのはもったいないよね。 *日本販売モデル【DD99】12,000円 - 21,000円 (デザインによって価格が異なります) http://www.odm-design.com/collections/dynamic.html
January 14, 2006
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長門怨 劉長卿何事長門閉、珠簾只自垂。月移深殿早、春向後宮遲。▲(クサカンムリのしたに「惠」。ケイ)草生■(「門」のなかに「月」。カン)地、梨花發舊枝。芳菲自(一作似)恩幸、看著(一作卻)被風吹。【韻字】垂・遲・枝・吹(平声、支韻)。【訓読文】長門怨 何事ぞ長門を閉ざし、珠簾只(ただ)自から垂るる。月深殿に移ること早(すみやか)にして、春後宮に向かふこと遅し。▲(ケイ)草■(カン)地に生じ、梨花旧枝に発す。芳菲自から(一に「似」に作る)恩幸あるも、看著す(一に「卻」に作る)風に吹かるるを。【注】○長門怨 楽府題の一。「長門」は、漢の宮殿の一つ。長門宮。武帝の陳皇后が寵愛を失って、ここで暮らした。○何事 なぜ。どういうわけで。○珠簾 真珠で飾ったすだれ。○後宮 后や女官のすむ宮殿。○▲(クサカンムリに「惠」。ケイ)草 香草の一種。○■(「門」のなかに「月」。カン)地 静かな土地。○芳菲 かぐわしい草花が美しく咲きにおう。○恩幸 天子の寵愛。【訳】長門怨どういうわけで長門宮は閉鎖され、玉すだれがただむなしく垂れ下がっているばかりなのか。奥深い宮殿に早くも月が傾き、後宮にはなかなか春がやってこない。ひとけなくひっそりとした敷地には香草が生じ、古びた枝には今年も梨の花が咲いている。香りが良い草花があれば人が来るように美人がいれば天子もおでましになるであろうが、草花が風に散りやすいのと同様に天子の寵愛もさめやすいのをまざまざと見る思いだ。
January 14, 2006
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送勤照和尚往■(「目」のみぎに「隹」。スイ)陽赴太守請 劉長卿燃燈傳七祖、杖錫為諸侯。來去(一作去住)雲無意、東西水自流。青山春滿目、白日夜隨舟。知到梁園下、蒼生頼(一作眷)此遊。【韻字】侯・流・舟・遊(平声、尤韻)。【訓読文】勤照和尚の■(スイ)陽に往き太守の請ふに赴くを送る。灯を燃やして七祖より伝へ、錫を杖つきて諸侯の為にす。来去(一に「去住」に作る)雲意無く、東西水自から流る。青山春目に満ち、白日夜舟に随ふ。梁園下に到るを知らば、蒼生此遊を頼(一に「眷」に作る)まん。【注】○勤照和尚 劉長卿の知り合いの僧らしいが、未詳。○■(スイ)陽 いまの河南省商丘県の南。唐の張巡・許遠が安禄山の軍と戦った地。○太守 地方長官。郡守。刺史。○燃灯 仏教では迷いの闇を照らし衆生を導く釈迦の教えや、仏前に供える灯明を灯火にたとえて法灯という。○七祖 禅宗六祖慧能の弟子の行思か。曹洞宗の開祖。○白日夜隨舟 「白日」と「夜」とは矛盾する。ように思われる。あるいは、もと「白月」とあったものか○梁園 漢代に文帝の次男にあたる梁の孝王が築いた庭園で、ここに多くの文人を招いて楽しんだ。○蒼生 万民。【訳】勤照和尚が太守に請われて■(スイ)陽に行かれるのを見送る詩。和尚さまは常日頃、修行に励んで七祖の教えを世に広め、錫杖をついて各地を旅し諸侯に仏の教えを説いておられる。あちこち行脚なさるさまは、雲のごとく行く先も定めず、ゆったりと水が流れるごとく、今日は東へ明日は西へと自由自在。遠くの青い山を見れば春の景色が目いっぱいに飛び込んでくる、夜舟で旅をなされば仏の真理の象徴のような白く輝く月が後につきしたがう。文人たちが集う梁園のような、詩文を好む太守の元へ和尚さまがお着きになったら、さぞやかの地の民も喜びましょう。
January 13, 2006
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罪所留繋寄張十四 劉長卿不見君來久、冤深意未傳。冶長空得罪、夷甫豈言錢。直道天何在、愁容鏡亦憐。因書欲自訴、無涙可潸然。【韻字】傳・錢・憐・然(平声、先韻)。【訓読文】罪所に留繋せられて張十四に寄す。君の来たるを見ずして久しく、冤深くして意未だ伝えず。冶長空しく罪を得、夷甫豈に銭を言はんや。直道天何くにか在る、愁容鏡も亦た憐れまん。書に因つて自ら訴えんと欲すれば、涙の潸然たるべき無し。【注】○罪所 罪によって流された地。○張十四 張謂か。字は正言、排行は十四。河内(いまの河南省沁陽)の人。わかくして嵩山で読書し群籍を博覧す。天宝二年の進士。尚書郎、潭州刺史、太子左庶子、礼部侍郎などを歴任した。○冶長 春秋時代の斉の公冶長。一説に魯の人。字は子良。孔子の弟子で、よく鳥のコトバを理解したという。孔子は結婚を勧め、連座したとはいうものの、本人の罪ではないと言って、我が子をめあわせた。○夷甫 晋の王衍の字。王戎の従弟。元城の令となる。つねに手と色を同じくした、玉柄の麈尾を捉え終日清談したが、しかも県務もまた理まっていたる。司徒に累遷したが、のちに石勒に殺された。才能ゆたかで、頭脳明晰だった。もっぱら老荘を論じ、名は一世を風靡した。○直道 人の踏むべき正しい道。○愁容 愁いに沈んだ顔つき。○潸然 涙がはらはらと流れるさま。【訳】罪を得て流された地で引き留められた状態で張十四に寄せた詩。あなたが尋ねて来なくなって久しく、恨みが深いが真意をいまだ伝えられずにいる。いにしえの公冶長も連座したが本人は無実だったし、晋の王衍もどうして金銭を論じたりするものか。人の踏むべき正しい道を守ってきたのに天は我を見放したのか、私の顔は鏡も同情しそうなほどの愁いの深い顔。書状を出して無実を訴えようと思うが、無実の罪でこんな状況に追い込まれた自分はあまりのショックで涙も出ないよ。
January 12, 2006
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喜李翰自越至 劉長卿南浮滄海上、萬里到呉臺。久別長相憶、孤舟何處來。春風催客醉、江月向人開。羨爾無羈束、沙鴎獨不猜。【韻字】臺・來・開・猜(平声、灰韻)。【訓読文】李翰の越より至るを喜ぶ。南のかた滄海の上に浮かび、万里呉台に至る。久しく別れてより長く相憶ふ、孤舟何れの処よりか来たる。春風客を催して酔はしめ、江月人に向つて開く。爾の羈束無く、沙鴎独り猜まざるを羨む。【注】○李翰 趙州賛皇(いま河北省に属す)の人。天宝年間の進士。十載、衛県の尉となる。天宝の末、史館諫司に推薦されたが楊国忠に阻まれた。安史の乱のとき、呉越に避難した。上元年間に、淮南節度掌書記となり、大暦六年、左補闕となり、本官をもって翰林学士に充てられた。建中・貞元頃に没した。○呉台 江蘇省揚州市の西北の呉公台か。○羈束 拘束。○不猜 疑わない。【訳】李翰が越から尋ねて来てくれたのを喜ぶ。君は戦乱を避け、南方の青海原に浮かび越の地で静かに暮らしていたが、このたび、越から万里も離れた私のいる呉公台あたりまでやってきてくれた。だいぶまえに別れて以来いつも君のことを思っていたよ、いつ舟にのって尋ねて来てくれるかと。春の風は心地よく君に杯を重ねさせ、江上の月はわれら二人に向って美しく輝いてみせる。それにしても君は世間的なしがらみが無く、砂原のカモメすら君には心を許してたわむれるらしいから、宮仕えの私などは羨やましいかぎりだよ。
January 11, 2006
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送行軍張司馬罷使迴(一作送張扈司直歸越中) 劉長卿時危身赴敵、事往任浮沈。末路(一作萬里)三江去、當時(一作孤城)百戰心。春風呉苑(一作草)緑、古木▲(「利」の「禾」を「炎」に換えた字。セン)山深。千里滄波上(一作明日滄洲路)、孤舟(一作雲)不可尋。【韻字】沈・心・深・尋(平声、侵韻)。【訓読文】行軍張司馬の使ひを罷(をへ)て迴るを送る(一に作「張扈司直の越中に帰るを送る」に作る)。時危うくして身敵に赴き、事の往くは浮沈に任す。末路(一作萬里)三江去り、当時(一作孤城)百戦の心。春風呉苑(一作草)緑にして、古木▲(セン)山に深し。千里滄波の上(一に「明日滄洲の路」に作る)、孤舟(一に「雲」に作る)尋ぬべからず。【注】○行軍張司馬 「行軍司馬」は、節度使の幕僚で軍政を掌り、権任はなはだ重かった。○末路 道の行く末。○当時 現在。○浮沈 栄枯。○百戦 何度もの戦い。○呉苑 蘇州。○▲(セン)山 浙江省■(「山」のみぎに「乘」。ジョウ)県の山。○滄波 深緑色の波。【訳】行軍司馬の張氏が使者としての任を終えて帰るのを見送る詩。(一に作「張扈司直の越中に帰るを送る」に作る)。不穏な時勢に身を賭して敵に向かい、万事の成り行きは天運に任せる。任務をおえて三江へと帰られるが、今も事あらば百たびでも戦おうとの心意気をお持ち。春風ふくこの時期は蘇州のあたりも新緑がみごとで、▲(セン)山のあたりには古木が深く情緒たっぷりでございましょう。これから青い波の上を船で千里も離れた地までお帰りになるわけですが、ここでお別れしたらもうお尋ねする機会もないかと思うとお名残りおしいことでございます。
January 10, 2006
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尋白石山真禪師舊草堂 惆悵雲山暮、■(「門のなかに「月」。カン)門獨不開。何時飛杖錫、終日閉蒼苔。隔嶺春猶在、無人燕亦來。誰堪暝投處、空復一猿哀。【韻字】開・苔・來・哀(平声、灰韻)。【訓読文】白石山に真禅師の旧草堂を尋ぬ。惆悵す雲山の暮べ、■(カン)門独り開かず。何れの時か杖錫を飛ばし、終日蒼苔閉づる。嶺を隔てて春猶ほ在り、人無くして燕亦た来たる。誰か堪へんや暝投の処、空しく復た一猿の哀しむに。【注】○白石山 この名の山は各地にあるが、ここでは、江蘇省句容県の東北にある山か。○真禅師 劉長卿の知人の僧らしいが、未詳。○草堂 草葺きの家。○惆悵 がっかりしたようす。○杖錫 錫杖。僧が用いるつえで、頭部にすずの輪があり、突くと音がでる。○蒼苔 青いこけ。【訳】白石山に真禅師の旧草堂を尋ねた時の詩。雲のかかる白石山に夕暮れどき禅師の草堂をおたずねしたが、ひっそりとした門は閉じられたままで、お会い出来ずにとても残念。いったいいつ行脚に出られ、終日蒼苔が道をふさぐことになったのでございましょうか。嶺のこちら側はまだ春のけはい、主人の禅師はお留守で燕だけがかつてのように今年もやって来て巣くっております。禅師のお留守の草堂に一夜の宿をお借りすることとなりましたが、当の禅師にお会いできず、おまけにサルの悲しい鳴き声が聞こえてきては、わたしの心もさびしいかぎり。
January 9, 2006
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松江獨宿 劉長卿洞庭初下葉、孤客不勝愁。明月天涯夜、青山江上秋。一官成白首、萬里寄滄洲。久被浮名繋、能無愧海■(「區」のみぎに「鳥」。オウ)。【韻字】愁・秋・洲・■(オウ)(平声、尤韻)。【訓読文】松江に独り宿す。洞庭初めて葉を下(お)とし、孤客愁へに勝(た)へず。明月天涯の夜、青山江上の秋。一官白首と成り、万里滄洲に寄る。久しく浮名に繋がれ、能く海鴎に愧づる無からんや。【注】○松江 江蘇省の太湖から流れ出る呉淞江。江蘇省呉県城の南郊に松江駅がある。○独宿 ただ一人で泊まる。○洞庭 ここでは江蘇省呉県の西南の太湖のなかにある洞庭西山。包山。○孤客 ひとりぼっちの旅人。○天涯 天の果て。遥か遠くの地。○白首 しらがあたま。白髪の老人。○滄洲 いなかの水辺。○浮名 うわべの名声。【訳】松江に独りで泊まったときの詩。洞庭山の木々も秋になってやっと葉を落とし、一人旅の私は愁いにたえぬ。天の果てかと思われるほど都から遠い地で迎える夜空には明るい月、川べりの秋の景色のなか青い山が向こうにそびえる。宮仕えして白髪の老人となり、故郷から万里も離れた田舎の水辺の町に身を寄せている。長い間名誉欲にとらわれて、海の上で波に揺られ悠々自適のカモメにひきかえ、我が身はおはずかしいありさま。
January 8, 2006
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送路少府使東京便應制舉(時梁宋初失守。一題作送駱三少府西山應制) 故人西奉使、胡騎正紛紛(一作汀洲芳草緑、日暮更氛●(「气」に「温」のみぎ。ウン)。舊國無來信、春江獨送君。五言凌白雪、六■(「鬲」のみぎに「羽」。カク)向青雲。誰念滄州吏(一作史)、忘機▲(「區」のみぎに「鳥」。オウ)鳥群(一作自是無機者、沙▲(オウ)巳可群。又作空自無機事、沙▲(オウ)已可群)。【韻字】紛・君・雲・群(平声、文韻)。【訓読文】路少府の東京に使ひし便ち制挙に応ずるを送る。故人西のかた使ひを奉じ、胡騎正に紛紛たり(一に「汀洲芳草緑にして、日暮更に氛●(ウン)たり」に作る)。旧国来信無く、春江独り君を送る。五言白雪を凌ぎ、六■(カク)青雲に向かふ。誰か念はん滄州の吏(一に「史」に作る)の、機を忘れて鴎鳥の群れんとは(一に「自からは是れ機無き者なれば、沙▲(オウ)已に群るべし」に作る。又た「空しく自ら機無き事なれば、沙▲(オウ)已に群るべし」に作る)。【注】○路少府 劉長卿の友人らしいが、未詳。「少府」は、宮中の衣類・食事・財政などを掌る官。○東京 洛陽。○制挙 勅命によって招いた者に天子みずから出題して官吏に採用する制度。○梁宋 河南省開封市。○故人 旧友。○胡騎 匈奴・突厥などの騎兵。○紛紛 多くてわずらわしいさま。○旧国 ふるさと。○来信 寄せられる手紙。○白雪 陽春白雪。楚の歌曲で高尚な詞曲。『楚辞』に見える。○青雲 青空。○滄州 田舎の水辺。○忘機 心の働きを捨て去る。利欲がなくなること。漁師がいつもカモメとたわむれていたが、父親にペットにするから捕まえて持ち帰れと言われて出掛けたところカモメが近寄ってこなかったという話。『列子』に見える。【訳】路少府が公務で洛陽に行き官吏登用試験を受けるのを見送る詩。むかしなじみの君は今度、公務で西方に行かれるが、途中北方のえびすの騎馬が大勢うろついていようから十分気をつけたまえ(一に「水辺には香りの良い草花が青々と茂り、日暮れどきにはますます靄がたちこめる」に作る)。故郷からは便りもなく、春のかわっぷちで独り君を見送る。君の五言詩はほとんど和するものがいなかったという古の白雪という作品にも勝り、六度も羽ばたけば天にも届こうというほど才能豊か。君が去ってしまったら、いったい誰が心におもってくれよう、田舎の水辺暮らしの役人が、俗念を捨ててカモメとあそぶ隠者のような生活を送っていようとは(あるテキストには「私はもはや雑念が無いから、砂浜のカモメたちも安心して近づいてくるのであろう」とある。また、あるテキストには「もはや私の心はからっぽで私欲がないから、カモメたちも群がってくるのであろう」とある)。
January 7, 2006
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送李侍御貶■(「郤」の「谷」を「番」に換えた字。ハ)陽(此公近由此州使迴) 劉長卿迴車仍昨日、謫去已秋風。干越知何處、雲山只向東。暮天江色裏、田鶴稻花中。卻見■(ハ)陽吏、猶應舊馬▲(「聰」の「耳」を「馬」に換えた字。ソウ)。【韻字】風・東・中・▲(ソウ)(平声、東韻)。【訓読文】李侍御の■(ハ)陽に貶せらるるを送る。(此の公、近く此の州より使ひして迴る)車を迴らせしは仍(なほ)昨日、謫せられて去るは已に秋風。干越知んぬ何れの処ぞ、雲山只東に向かふ。暮天江色の裏、田鶴稲花の中。卻つて■(ハ)陽の吏を見れば、猶ほ応に旧馬▲(ソウ)なるべし。【注】○李侍御 劉長卿の友人らしいが、未詳。「侍御」は、侍御史。 ○貶 官位を落として地方へ流される。○■(ハ)陽 江西省の北境にある■(ハ)陽湖の東岸の県。○迴車 車をめぐらせる。○干越 干越亭。江西省余干県城の東南にあり。○馬▲(「聰」の「耳」を「馬」に換えた字。ソウ) 青黒い色と白色の毛の混じった馬。あしげの馬。【訳】李侍御が左遷されて■(ハ)陽に行くのを見送る。君が車をめぐらしてこの地に赴任したのはつい昨日のよう、左遷されて去りゆくときにはもう秋風の吹く季節。君が今度行く干越の地はどのあたりかしら、雲のかかる高い山々をこえてひたすら東に向かっての旅。川べりの景色の中の夕暮れ空、田んぼの稲穂のなかにはツルが餌をあさっている。あべこべに■(ハ)陽の役人として出向かれる君を見れば、乗っているのは以前とかわらぬ見覚えのある葦毛の馬にちがいない。
January 6, 2006
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曲阿對月別岑況徐説 劉長卿金陵已蕪沒、函谷復煙塵。猶見南朝月、還隨上國人。白雲心自遠、滄海意相親。何事須成別、汀洲欲暮春。【韻字】塵・人・親・春(平声、真韻)。【訓読文】曲阿にて月に対して岑況・徐説に別る。金陵已に蕪沒し、函谷復(また)煙塵。猶ほ南朝の月を見、還つて上国の人に随ふ。白雲心自から遠く、滄海意相親しむ。何事か別れを成すを須(もちゐ)ん、汀洲暮春ならんと欲す。【注】○曲阿 いまの江蘇省丹陽県。○岑況 劉長卿の友人らしいが、未詳。○徐説 劉長卿の友人らしいが、未詳。○金陵 江蘇省南京市。六朝時代に都が置かれた、建業・建康の地。○蕪沒 雑草にうもれる。○函谷 戦国時代に秦が河南省霊宝県の南西に設け、漢の武帝が河南省新安県の北東に移した関所。○煙塵 戦場に巻き上がるつちぼこり。○南朝 建康に都を置いて江南地域を支配した宋・斉・梁・陳の四つの王朝(四二〇……五八九年)。○上国 王都に近い諸国。○滄海 あおうなばら。○汀洲 土砂が積もってできた水ぎわの陸地。【訳】曲阿で月を見ながら岑況と徐説に別れるにあたって詠んだ詩。南朝時代の金陵の都も荒れ果て、函谷関のあたりも戦塵にまみれている。南朝時代とかわらぬ月をながめながら、心は都に行かれるあなたがたについて行きたい。空にうかぶ白い雲を見て心は遠い故郷へ飛び、目の前の青海原をみては友と親しむ。どうして気の合う友と別れねばならぬのか、そうでなくてもこの水辺の地に春の終わりが近づいてさびしいのに。
January 5, 2006
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南湖送徐二十七西上 家在横塘曲、那能萬里違。門臨秋水掩(一作淹)、帆帶夕陽飛。傲俗宜紗帽、干時倚布衣。獨將湖上月、相逐去還歸。【韻字】違・飛・衣・歸(平声、微韻)。【訓読文】南湖にて徐二十七の西のかたに上るを送る。家は横塘の曲(くま)に在り、那(なんぞ)能(よく)万里に違(たが)ふ。門は秋水に臨みて掩(おほ)ひ、帆は夕陽を帯びて飛ぶ。俗を傲(いやし)み紗帽に宜しく、時を干(おか)して布衣に倚(よ)る。独り湖上の月と、相逐(お)ひて去つて還(また)帰る。【注】○南湖 ここでは浙江省紹興市の南にある鑑湖を指すのであろう。○徐二十七 劉長卿の友人らしいが、未詳。○横塘 浙江省海塩県の北にあり。○傲俗 俗にとらわれない。○紗帽 烏紗帽。隠者がかぶる黒いずきん。○干時 時勢にさからう。【訳】南湖で徐二十七が西方に川をさかのぼっていくのを見送る詩。家は土手が湾曲しているそば、どうして私を置いて万里も遠く去っていかれるのか。秋の川に面した家の門を閉じ、きみの乗った帆掛け船は夕日を浴びて飛ぶように去っていく。俗人を相手にしない隠者が被る黒頭巾が良くお似合い、時勢にそむいて官位のない庶民の服を着る。ただ湖上の月とともに、西に向かって帰っていかれる。
January 4, 2006
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海鹽官舍早春 劉長卿小邑滄洲吏、新年白首翁。一官如遠客、萬事極飄蓬。柳色孤城裏、鶯聲細雨中。羈心早已亂、何事更春風。【韻字】翁・蓬・中・風(平声、東韻)。【訓読文】海塩官舎の早春。小邑滄洲の吏、新年白首の翁。一官遠客の如く、万事飄蓬を極む。柳色孤城の裏、鴬声細雨の中。羈心早(つと)に已(すで)に乱れ、何事か更に春風あらん。【注】○海塩 浙江省海塩県。○官舎 役所の建物。○小邑 地方の小さい村や町。○滄洲 田舎の水辺。○白首 しらがあたま。○飄蓬 秋の末に枯れて根から抜け、風に吹かれてころがる蓬。流浪する者のたとえ。○羈心 故郷を離れて他所の土地にとどまっている者の思い。【訳】海塩官舎の早春を詠んだ詩。わたしゃ海辺のちいさな町の小役人、新年を迎えたがまたひとつ歳をとって白髪がふえただけ。ちっぽけな役職について故郷を遠く離れ、風に転がりあちこち転々とする枯れた蓬のよう。こんな田舎の町で、わずかに春らしさを感じさせるものは、ぽつんとある城下の柳、こまかな春雨のなかに聞こえてくるチョウセンウグイスの鳴き声くらい。前々から故郷へ帰りたいという思いに駆られて心がみだれているのに、春風よどうしてこのうえ望郷の思いをかきたてるのか。
January 3, 2006
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送袁明府之任 劉長卿既有親人術、還逢試吏年。蓬蒿千里閉、村樹幾家全。雪覆淮南道、春生潁谷煙。何時當■(クサカンムリのしたに「位」。リ)政、相府待聞天。【韻字】年・全・煙・天(平声、先韻)。【訓読文】袁明府の任に之くを送る。既にして人に親しんずる術有り、還つて吏に試みらるる年に逢ふ。蓬蒿千里を閉ぢ、村樹幾れの家か全き。雪は覆ふ淮南の道、春は生ず潁谷の煙。何れの時にか当に政に■(リ)(のぞ)み、相府に天に聞くを待つべき。【注】○袁明府 劉長卿の友人らしいが、未詳。「明府」は、地方長官。○蓬蒿 蓬の生えた草むら。○淮南 江蘇省揚州市。○潁谷 河南省登封県の西にあり。○■(クサカンムリのしたに「位」。リ)政 政治をとりおこなう。○相府 宰相が政務をとる役所。【訳】袁明府が赴任なさるのを見送った詩。もう民を大事にするやりかたは身につけておられるが、あべこべに官吏登用試験をお受けになった。赴任先は千里のかなたまで雑草が生い茂り、村々の樹々がのびほうだいで何軒の家が昔通りであろうか。雪は淮南へと向かう道を覆い尽くし、春のけはいは潁谷のもやに感じ取れるくらい。いったいいつになれば君のような有能な政治家が行政し、宰相に出世して民の声を聞き、善政をしいて国家が安泰になるのであろうか。
January 2, 2006
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送李補闕之上都 劉長卿獨歸西掖去、難接後塵遊。向日三千里、朝天十二樓。路看新柳夕、家對舊山秋。惆悵離心遠、滄江空自流。【韻字】遊・樓・秋・流(平声、尤韻)。【訓読文】李補闕の上都に之(ゆ)くを送る。独り西掖に帰り去り、後塵に接して遊ぶこと難し。日に向ふこと三千里、天に朝す十二楼。路に新柳の夕べを看、家は旧山の秋に対す。惆悵す離心遠く、滄江空しく自から流るるを。【注】○李補闕 広徳二年に左補闕に任ぜられた李■(「糸」のみぎに「予」。ジョ)か。字は仲舒。趙州(今の河北省趙県)の人。(七三一……七九二年)。○西掖 中書省。宮殿の西側にあったのでいう。○後塵 車馬が立ち去ったあとに舞い上がる土埃。○朝天 天子に拝謁する。○旧山 ふるさと。故郷。○惆悵 恨み嘆く。残念がる。○離心 別れの気持ち。○滄江 深緑色に見える広々とした川。【訳】李補闕が長安に行くのを見送る詩。君は単身西掖に帰られることになったが、君の後について行くわけにもいかぬ。天子のおられる長安は西へ三千里、十二もの高殿のそびえる宮中で天子へご挨拶なさることになる。道路のわきには新たに葉を出した柳が夕日に照らされ、家は故郷の山の秋景色のなかにぽつんと建っている。君が去っていくのはなんとも残念だ、ただ青い川だけはそんな私のさびしい気もしらずにひっそりと流れている。
January 1, 2006
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