趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

February 26, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】大膳(だいぜん)の大夫(かみ)公平(きむひら)のむすめども、県(あがた)の井戸といふ所に住みけり。
【注】
・大膳の大夫=宮中の食事のことを司る大膳職の長官。
・公平=「きむひら」は、きむひこ」の誤写で、従五位上、大膳の大夫をつとめた
橘公彦のことかという。文章博士、広相(ひろみ)の子。
・県の井戸=一条の北東、洞院の西角の地。
【訳】大膳の大夫公平(橘公彦?)のむすめ達が、県の井戸という所に住んでいたとさ。

【本文】おほいごは、后の宮に、少將の御といひてさぶらひけり。
【注】

・后の宮=醍醐天皇の皇后で、藤原基経の娘。(885……954年)。
【訳】長女は、穏子皇后に、少将の御という名でお仕えしていたとさ。

【本文】三にあたりけるは、備後守さねあきら、まだ若男なりける時になむ、初の男にしたりける。すまざりければ、よみてやりける、

この世には かくてもやみぬ 別れ路の 淵瀬に誰を とひてわたらむ

となむありける。
【注】
・備後守さねあきら=源信明。公忠の子。(947……970年)まで備後の守をつとめた。
【訳】三女に当たっていた娘は、備後守さねあきらが、まだ若者であった時に、初めての夫としていたとさ。その夫が、通って来なくなったので、作って贈った歌、

はなないこの世においては、こんなふうに一方的に相手が来なくなっても、夫婦関係が終わってしまうものなのですねえ。女は死後、最初に関係した男に手を引いてもらって三途の川を渡ると俗に言いますが、わたしは川の淵や浅瀬を誰にたずねて渡ればいいのかしら。






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Last updated  February 26, 2011 12:03:37 PM
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