趣味の漢詩と日本文学

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May 7, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】こやくしくそといひける人、ある人をよばひてをこせたりける、

隠れ沼(ぬ)の 底の下草 水隠(みがく)れて しられぬ恋は くるしかりけり

かへし、女

水隠れに 隠るばかりの 下草は ながからじとも 思ほゆるかな

このこやくしといひける人は、たけなむいと短かりける。
【注】
・こやくしくそ=未詳。小薬師くそ、か。「くそ」は、名の下に付ける呼称。
・隠れ沼の=「下」や「底」にかかる枕詞。『万葉集』の「こもりぬ」と読むべき「隠沼」という表記を「かくれぬ」と誤読した語。
・水隠る=水中に隠れる。『古今和歌集』紀友則「川の瀬になびく玉藻の水隠れて人に知られぬ恋もするかな」。

【訳】こやくしといった人が、ある人に対して求婚して、作って寄越した歌、

草に覆い隠されている沼の、底の下草が水面下に隠れて、人に気づかれない鯉と同様、私のあなたに気づかれない恋は、苦しいものだなあ。

それに対する返歌として、女が作った歌

水中に隠れる程度の下草は、丈が長くないだろうとも、思われるなあ(それと同じように、あなたの私への思いも、長くは続かないだろうから頼りにできないでしょうよ)。

この、こやくしといった人は、背丈が非常に短かかったとさ。








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Last updated  May 7, 2011 08:18:10 PM
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