趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

May 22, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】亭子の帝、川尻におはしましにけり。
【注】
・川尻=淀川河口の地名という。
・おはします=「行く」の尊敬語。
【訳】宇多天皇が川尻にお出ましになったとさ。

【本文】うかれめにしろといふものありけり。
【注】
・うかれめ=遊女。あそびめ。宴席で舞いを踊ったり歌をうたったり芸能を見せて人を楽しませ女。
【訳】遊女にシロという者がいたとさ。


【訳】彼女を呼びに人をやったところ、参上してひかえていた。

【本文】上達部・殿上人・みこたち、あまたさぶらひたまうければ、下に遠くさぶらふ。
【訳】三位以上の大貴族や五位以上の貴族・皇子たちが、大勢お仕えしていらっしゃったので、下座のほうに遠くひかえていた。

【本文】「かう遥かにさぶらふよし歌仕うまつれ」とおほせられければ、すなはちよみて奉りける、

 浜千鳥 飛びゆくかぎり ありければ 雲立つ山を あはとこそみれ

とよみたりければ、いとかしこくめで給うてかづけものたまふ。
【注】
・浜千鳥=海辺の千鳥。遊女自身のたとえ。
・雲立つ山=雲がわき起こる山。帝の玉座のたとえ。
・あはと=「阿波と」と「淡」との掛詞。
【訳】「このように遥か遠くで控えていることを歌にお作りいたせ」とお命じになったので、ただちに作って献上した歌、





【本文】命だに 心にかなふ ものならば 何か別れの 悲しからまし

といふ歌も、このしろがよみたる歌なりけり。
【訳】もしも、せめて寿命だけでも思い通りになるものならば、どうして別れが悲しいだろうか、(いつまででも生きられるならまた会うこともできるだろうから、悲しむこともないだろうに)
という歌も、このシロが作った歌だったとさ。






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Last updated  June 5, 2011 07:25:16 PM
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