松木幸夫 ギタリスト的思考

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choco.yukio @ Re:曲の性格(11/27) remain-iihamaさん。 素晴らしいコメント…
remain-iihama@ 曲の性格  いつも楽しく読ませていただき  示唆…
choco.yukio @ Re:音楽(とギター)の見え方(10/30) remain-iihamaさん。 > ただ、最近の課…
remain-iihama@ 音楽(とギター)の見え方  私も全く同感です。  自身もかつては…
choco.yukio @ Re[1]:リサイタルの音源(10/07) ぽん太夫さん。 笑っていただけてよかっ…
ぽん太夫 @ Re:リサイタルの音源(10/07) >自分の演奏を聴くのは、とても大胆にま…
choco.yukio @ Re[1]:息が合わないと云うこと(09/15) あやさん。 コメントありがとうございま…

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Dec 9, 2009
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カテゴリ: 音楽
 アルファベット順に並べている楽譜の棚のあちこちに少しずつ隙間ができて、楽譜の小さな束が隣の楽譜の塊に寄り添うようにもたれ掛かっていて、なんともみっともなく見え始めたので、床に山のように積み上げられた一見塵置き場の中身を改めようと思い、塊の一番上の端っこをちょこんと押してみた。

 塊は静かに崩れ、なだらかな傾斜を伴った形に変容をとげた。

 上から眺めると、何冊かの曲集の背表紙を認めることができた。

 だが、そこにある程度の楽譜の数は、到底本棚にできた隙間をすべて埋めることができる数ではない。

 では、残りの楽譜はどこにあるのか、僕はクローゼットの扉を開けてみた。そこには、床の上にあった塊よりもさらに増殖した大きさのものが不安定なバランスを保ちながら段ボール箱の上に置かれていた。

 何度かに分けてそれらを床の上に広げてみると、何冊もの楽譜が現れてきた。僕はそれらをひとつひとつ本棚に戻し、製本されていない手書きの楽譜などは、作曲家の名前の書かれた封筒にしまい、それ専用の本棚に戻した。

 後ろを振り返った。

 津波に襲われた被災地のような景色がそこにあった。

 玄関のチャイムが鳴った。



 「今、あの、ちょっと部屋がエラいことになっているので、5分程待ってもらえますか?」などと云う言葉を考えながら生徒に挨拶すると、実は仕事の都合で今日のレッスンを休みますと云い終えると一礼して去って行ったのだ。

 僕は精一杯に考えた言い訳を飲み込み、また部屋の修羅場を見られなかったことを喜び、しばらくそこに立ち尽くしていた。

 あ、そうだ。

 ついでにあの楽譜を探さなくては、僕は少し落ち着きを取り戻しながら静かにレッスン室に戻った。

 部屋は相変わらず修羅場だった。





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Last updated  Dec 9, 2009 08:07:53 PM


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