法律なんて怖くない!

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2008年04月15日
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カテゴリ: 倒産法




1詐害行為否認

今までは,破産手続開始決定時の破産者の財産がどう扱われるかということを前提にお話してきました。しかし,破産手続開始決定時の破産者の財産以外でも破産財団に組み込むべき場合があります。

例えば,破産手続開始決定直前に,誰かに不動産を譲渡した場合などです。
そういう場合は,債権者を害するので,譲渡の効果を認めないようにする必要があります。
これを「否認権」と呼びます。

そして,否認権とは,詐害行為否認(さがいこういひにん)・偏頗行為否認(へんぱこういひにん)に分けられます。

詐害行為否認とは,破産者が債権者を害することを知りながら,破産前にした行為(これを詐害行為といいます)で,受益者(相手方)も悪意である場合には否認できるとするものであります。
これは,破産財団を流出させるので,否認されます。

偏頗行為否認とは,破産者が支払不能後や破産申立前後の一定の時期において,債権者を害する行為をした場合,破産者がどう思っていようと,受益者の悪意だけで否認できるものです。
この場合は,必ずしも破産財団を流出させるものではありませんが,債権者の平等を害するので否認されます。

ではまず,詐害行為否認から見ていきましょう。

(破産債権者を害する行為の否認)
第百六十条  次に掲げる行為( 担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く 。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一  破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二  破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。


160条1項1号が詐害行為否認の典型的な条文です。
まず,柱書を見ていただければ分かりますとおり,「 担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く 」と有りますとおり,担保の供与や債務の消滅は160条1項には当てはまりません。
担保の供与は,例えば抵当権設定をいい,財産は流出していません。債務の消滅は,例えば弁済をいい,一見財産が流出したように見えますが,その分借金が減るので,結果的にプラスマイナス0で財産は流出していません。
ですから,詐害行為否認にはならないのです。(ですが,不公平に担保を設定したり,弁済したりすれば,後に申し上げる偏頗行為否認にはなりえます)

さて,債務の消滅行為が詐害行為否認にならないからといって,1000万円の債務に対して1500万円支払ったら,財産は流出したことになります。そこで,債務の額を上回った分については,詐害行為否認の対象となります。

第百六十条
2  破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、破産手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、破産財団のために否認することができる。


また,無償で何かをあげることは財産流出はなはだしいので,破産者・受益者の両方の意図に関係なく,否認されます。これを特に無償行為否認と呼びます。

第百六十条
3  破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。



ちなみに,「同視すべき有償行為」が含まれているのは,0円だと明らかに「無償行為」になるからといって,1円で売ったことにして160条3項の適用を免れて,脱法行為されるのを防ぐためだと思われます。

さて,不動産を無償や不当に安い価格で売ると160条3項の適用がありますが,適切な価格で売却する場合はどうなるのでしょうか。プラスマイナス0ではないかとお考えでしょうが,不動産を,消費隠匿しやすい現金に変える事は財産の減少行為として考えられてきたのです。
例えば,私が1000万円を隠せと言われたら,それなりのことは出来るかも知れませんが,1000万円の不動産を隠せと言われても,どうして良いか分かりません。

しかし,例えば経営に行き詰った会社が,遊んでいる不動産を売って資金にするということは別に責められる行為ではないですし,仮に一切ダメとなると本来立ち直れたはずの会社を破産に追い込むことになりかねません。
そこで,以下の条文があります。

(相当の対価を得てした財産の処分行為の否認)
第百六十一条  破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは、その行為は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一  当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第百六十八条第二項及び第三項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二  破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三  相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。


この3つの要件を満たさないならば,否認されないということです。








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【参考本】


新・破産から民法がみえる

この本は、破産法と民法との違いを、事例を交えて解説してくれる本です。






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最終更新日  2008年04月15日 12時12分29秒
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