ミーコワールド

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その頃の子供達の様子はというと、悲惨なものでした。

気がついた親は塾をやめさせるのですがそれでも問題はありました。

子供達は教室で泣き叫びます。

塾生の殆どが幼児でした。

火がついたように泣き叫ぶので私は教室を覗きに行きました。

Sが棒を手に持って泣きながら何かをつぶやいています。

教室の外からだし子供達の泣き叫ぶ声でSが何を言っているのか

私には聞き取れませんでした。

時々、手にした棒で教壇を力任せにバンバンと叩きます。

その度に子供達は一瞬黙るのですがまた一斉に「ヒー」と言う声を

出して泣き叫びます。

私が外でじっと見ているのを見て取った助手が出て来ました。

私は彼女が口を開く前に低い声で「いいかげんにしなさいよ!」と

言い残して帰ってきました。 

うちにいたお客様は「どうだった?」と言いました。

私は言い残して帰って来た事を伝えました。

この日の事はそのお客様によって警察に通報されました。

でも、その頃はまだまだ「児童虐待」など社会でも取り沙汰されて

いなかったのでただ通報されただけでした。

しかし、教育改革が叫ばれている今、教師の虐待は大きく扱われて

います。 

その日からしばらくして見知らぬ人がお土産を持って見えました。

「ちょっと・・・、教えて欲しい事があるのですが・・・」

「うちの子供が帰りの車の中で変な事をいうので家に帰ってから

夫とふたりで聞き出しました」と話始めました。

 「先生が怖い!」

何もしていないのに突然振り向いて泣いて

「あなた達はねぇ!」「あなた達はねぇ!」と

言って机を叩いて怒る。

「あなた達のようなバカが!」「あなた達のような者が!」と

言って大声を出して泣き叫ぶ。

その顔が恐ろしい。

と言って震えて泣いた。

という事でした。 

そして、次から塾へ行く時間になったら「お腹が痛い」

「頭が痛い」と言って嫌がるので休ませている、

とその母親は言いました。

夫も「しばらく様子を見てみよう」と言ったのだが子供の

ただならぬ様子に「お前、となりへ聞きに行ってこい」と指示を

したという事でした。

私は「お嬢ちゃんのお話は本当ですよ」と前置きをして

一部始終を話ました。

母親はかなりショックだったようです。

入塾してわずか半月くらいの頃の事でした。

その頃、入塾には教材費やなんだかんだで「50万円」くらいは

みんな払っていたようでした。

授業料は1年分先払いでした。

それに入塾料、教材費、維持費などいろんな項目で

取っていました。

でも返金して貰った人はいなかったようです。

新学期と称する春と秋は教室に入りきれないほどの生徒がいたにも

かかわらず、一ヶ月もすると閑散としてしまうのです。


子供が嫌がる時はただのわがままか、理由があるのか、

熱でもあるのか、しっかり見極めなければならないでしょう。

そして、叱ったり、無理を強いたりしてはならないでしょう。

子供は心を開いて話さなくなります。
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