星の髪飾り

星の髪飾り

2006/01/17
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             「奏でる時に・・」 


 前編=クラクション  1

「・・乗って!」
彼はそう言って、素早く助手席のドアを開ける。
加奈子は息を殺して、速やかに車に乗り込む。 彼はアクセルを踏み込む。
それから暫く彼は黙っている。 加奈子にも言葉はない。
その無言の一瞬に秘められた思いは二人にしかわからない。
だから、エンジンが止まって空間に入った時、二人は言葉もなく直ぐに強く抱き合う。彼は、細く少し熱い加奈子を強く抱きしめ、加奈子の体はその腕の中にすっぽり包まれてしまう。 加奈子の胸に彼の胸の鼓動が伝わるのにそう時間はかからない。


「・・うん・・」
加奈子は首を縦に振って、すぐ傍にある彼の瞳にすいこまれてしまう。
逢えなかったあの長いトンネル、あの寂しさが、この瞬間全て消え去る。
それが、たとえゴールの見えない恋であろうと・・その呵責と葛藤の波が何度も二人を襲うと、二人はもう引き返せない。

二人がふたりの束の間の時間から離れた後に来る胸の痛みと寂しさがピークに達した時、彼とは違い、若い加奈子は何度「もう、止めよう」と思ったことか。
それが、遊びや一時のアバンチュールだったらどんなに楽だろう。
加奈子の心にブレーキは効かなかった。
そんなくり返しで2年。 忘れるにはあまりに重い、深い、長い時を彼と過ごしてしまった。

が・・・自分が本気で愛した人を忘れまい。
悔やむまい。 そう、加奈子は春というにはあまりに寒いその朝、薄手のカーデ
ィガンを肩にひっかけ、数枚の写真と思い出の全てを燃やす為、いつものライターに火をつけた。

2年間の思い出が今、煙となって消えていく・・ 加奈子の肩は微かに震え、白く美しい手が、強くぎゅっと握り締められた。 枯れたはずの涙が再び溢れた。
いつの日か、この煙のように、加奈子の心も彼への思いも、遠い空の彼方へ消え去っていくのだろうか・・?
      さようなら......
                             つづく







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最終更新日  2006/05/09 04:07:38 PMコメント(0) | コメントを書く


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