星の髪飾り

星の髪飾り

2006/01/26
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送別会には30人ほど出席するらしい。 加奈子は3人の同僚とその店に

向かった。 幾分の緊張感があった。 牧島と話を弾ませていた石田敦子が

加奈子に話かけた。

「そういえば、加奈子さんってお寿司とか苦手だったような・・・ねえ?」

そんなふうに聞こえた。 

 奥の座敷では、すでに集まった仲間で盛り上げっているらしい。 

牧島が「遅れてすみませーん!」 と言うと「待ってました!」という言葉が返って

来た。 一番・・らしき席にあいつがいた。 加奈子は目を反らした。



古い付き合いのあいつの所に挨拶に行った。

 加奈子は、ワイシャツの腕を捲り、厳しい表情で仕事に向かうあいつの姿や

試験勉強の時のあいつとの時間、共にしたランチ、言い合い、

そして電話の声を思い出しながら、そのざわめきを遠くに感じ、寂しい思いに

暮れていた。

しばらくすると、あいつが加奈子の所にやって来た。

・・「来てくれたんだ?!」

「来ちゃった・・」

「はい、これ!寿司は卵しか駄目なんだよなあ」

あいつはそう言って、卵ばかりがこんもりと並べた皿を置いた。

二人は、微笑んだ。



「あなたも」

「傍に居ないからって、手を抜くんじゃないぞ」

「うん」

「また、逢えるといいな」

「・・・・・・・・・・・・・・」



「覚えていたんた?」

 加奈子は時折周囲を気にしながら、あいつと話した。

 二次会はカラオケで盛り上がった。 加奈子も場を考え、一曲だけ歌った。

(どうぞこのまま)
それは、馬鹿げた憧れか、気まぐれな恋だとしても
雨はずっと降り続く
曇りガラスを伝わる雨の滴のように
ただ、一筋に
ただ、ひたむきに

まともに歌える歌はこれしかない。 どこで覚えるのか沢山のを歌を上手に歌う

周りには感心する。持ち歌が少ないとこんな時困る。その一曲に注目が集まる

からだ。 

 送別会は終わった。

悲しかった。あいつの声が好きだった。 涼しい目も、あさ黒い肌も、がっちりし

た肩も、図面をひく綺麗な手も、あいつの口から出る一言ひとことも・・・・・

 あいつは細い路地の集団から離れると、皆に最後の挨拶をして軽く手を振り

「じゃ!」と言って背中を向けた。 小雨がパラつく路地は光ったいた。 その

路地に、辺りのネオンが映され、夜の街の気だるさが漂っていた。

後姿のあいつに加奈子は強くひかれた。 出来る事なら追って行って後ろから

そのしなやかな両手であいつをしっかり抱きしめたい衝動に駆られた。

すると、まるで加奈子の気持ちに応えるかのように、あいつはもう一度

振り返った。

そして、加奈子を見た。

「・・・」 二人はほんの一瞬見つめあった。 男の目だった。 そう、限りなく

男の・・・・。

やがて、あいつはその冬の冷たい雨の中を去って行った。


   続く          





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最終更新日  2006/05/09 03:57:12 PM コメント(1) | コメントを書く


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Re:スクリーン  9  もう一度振りかえって(01/26)  
ひまわり さん
情景が浮かんできます。行間に流れる二人の想いに胸がキュンとします。次はどうなるの?? (2006/01/27 09:56:14 AM)

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