星の髪飾り

星の髪飾り

2006/01/29
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たとえば港町。 小樽はいい、加奈子は神戸や長崎より好きだ。

華やかさこそないが、どことなく色褪せた街並みや港の臭い、せわしさのない街の

灯りは癒される。

たとえば山間の小さな民家の灯り。 都会からどんどん遠ざかって行く夜汽車の

窓から見える平穏と郷愁。 その灯りの下でどんな人が暮らしているのだろう?

 ベイブリッジは丸いボンボリが穏やかな曲線を描き、恋人達の心を魅了する。

「橋で結ばれた、あっちとこっち。 人と人、男と女・・」

加奈子が言った。 



めりはりのついた顔ではないが、睫毛が長く美しい目をしている。 28歳に

なっても尚、幼さが残る顔立ち。 

「カーコ!」

「ん?」 あいつはカーコと呼んだ。 ごく自然に。 悪い響きではなかった。

「帰りに美味しいピザ食べようか?」 (いきなり現実)

「うん!」

「返事早いな」

「私、図々しいの? 根は謙虚なんだけど」

「俺、その謙虚っていうの信じられない」 二人はじゃれ合いながら笑った。

車内で加奈子はポツリと言った。

「・・逢いたくなくて逢わなかったんじゃない」



二人はストレートに告げてしまった言葉を噛み締めながら、横浜の街を走った。

「どうしてこんなに近くなったんだろう」

「どうしてかな」

「ただ・・」

「ただ?」



「抜けてるから? 幼いから? ひっちゃかめっちゃかだから?ねえ!」

「今言った全部」

「えー、それじゃまるでボランティアみたい!」 加奈子はあいつを肘で押す。

「じゃあ、カーコはどうして?」

加奈子は心の奏で言葉にする事ができなかった。 あいつは少し偉そうに

加奈子を見た。自然体の加奈子と自分を見せまいとするあいつ。

 それは一年前から変わらない。 

「鳩みたいだよ」 あいつはそう言う事を時々平気で言う。

「鳩?」

「公園で少ない餌を慌てて追ってる、そちこち動きながら、他の鳩に

持って行かれて、それで一羽だけ別の所に飛んで行ってしまう」

「何それ。白鳥の間違えじゃないの?」

「白鳥が気の毒」 怒るなよー!とあいつは微笑む。 すぐにむきになる加奈子

があいつは可愛い。 始めて仕事でペアーを組んだ時に感じた不思議さ。

2度目からは興味が湧き食事して少し惹かれた。見た目ほど強くなくガラス細工

のように脆い一面と健気さ、だんだんもう一人の加奈子が見えてきた。 そして

気がついたら身近な存在になって大切な人になった。「俺、どうしたんだよ!?」

と・・加奈子には聞こえないあいつの思いだった。

 加奈子も恋を必死に探していたわけでもない。むしろそういう時は良い出会い

は無い。 仕事柄、多くの男性と関わるがこんな事は始めてだった。

あいつは心の何処かでこのまま終わらぬいい関係でいることをカーコが望んで

いる事を知っていた。

・・が二人の感情は磁石のように吸い寄せられ、それを許さなかった。

横浜を後に車は走り続けた。 微妙な時は、外の夜景のように流れて行った。

「着いたよ」車が止まった。 帰りは早い、楽しい時ほど帰りの秒針はズルイ!

「・・うん、着いちゃった」

「ずっと寄り添っていたい」とあいつの口からその言葉が出た瞬間、あいつは

助手席の加奈子を強く引き寄せた。

あいつの唇が加奈子の柔らかな唇に重なった。加奈子は突然のアクションに

始めは戸惑い体に力が入ったが、やがてあいつの唇と腕の中で溶けていった。

                             続く





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最終更新日  2006/05/09 03:59:34 PMコメント(0) | コメントを書く


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