料理研究家・宮成なみの【 夢叶 】~胸に希望を 台所から愛を~

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指定席のチケット




梅ちゃんという管理栄養士のお友達がいる。

梅ちゃんは、去年まででっかい病院の栄養士さんをしていた。

子供に食事を作る仕事をしたい、と言っていた梅ちゃんは、
この春から、夢をかなえて、今、保育園で給食を作っている。


梅ちゃんとは、食育の講演会のあとのお食事で知り合った。
ある大学の研究室に梅ちゃんはいた。
卒業生だった。

歳が近い梅ちゃんとすぐに仲良くなって、
いろんな話をした。

食べ物のこと、栄養のこと、食育のこと。恋愛のこと。
将来のこと。夢のこと。いろんな話をして、一緒に笑った。

『夢ってね、舞台の指定席と同じなんだって』

梅ちゃんの勤める病院の寮のお部屋に泊まりに行ったとき、女子高生みたいに、夜遅くまで話をした。


『何月何日のいついつに、○○というお芝居を見る、と決めて指定席を買えば、そのお芝居をみることができるんだって。

指定席は、自由席に比べて少し高いけど、
決して手の届かない値段でもない。

ちょっと頑張れば手が届くの。

○○と言うお芝居を見る、と決めるまではいつまでたっても見れないし、
何月何日と予定をたてないと、見れないし、
ちょっとの努力と決断で、手を伸ばせば指定席は手に入れることができる。

手に入れた指定席で、感動のドラマを見ることができる。
席は誰にでも予約ができて、買うことができる。
買うと決めたひとになら誰でも買うことができる。

人生は舞台の指定席なんだって』

私は、この話を聞いて、指定席が欲しいと思った。
お料理研究家の指定席。

どんな感動のドラマがみれるのだろう?
どんなドラマが待ってるんだろう?

そう思ったら、多少高い値がついても、その指定席を手に入れたい、と思った。


そんな話をした翌年、

梅ちゃんは、福岡に来ていた。
遊びにではない。
引越しをして、福岡にきた。

ずっとずっと尊敬していた園長先生のいる保育園に、
雇ってください、と直談判して、
テストを受け、見事に合格して保育園の給食を作る仕事に就いた。

彼女は指定席を手に入れたんだ。



先日、彼女が、結婚のお祝いをしてくれた。

近況報告などを話した。
病状のことも話した。
高カリウム血しょうになってしまったことも話した。

そして翌日、彼女からメールが届いた。


RE:なみちゃんへ。

もし嫌じゃなかったら、薬の名前教えてくれないかな


RE:RE:
教えてくれてありがとう。

自分なりに調べてみるね。

ちょっと時間をくださいな。

一緒に考えて、学んで、楽しみながら
悩みながら、目標に向かって歩いていこうね。


       梅ちゃん


管理栄養士という仕事は、お医者様が出した処方箋と、
検査結果を見ながら、食事指導をしていく仕事だ。

梅ちゃんは、電話で言った。

『特別疾患も、結節性動脈周囲炎も、私は指導したことないし、
腎臓病の食事療法は難しいと思うけど、
私も一緒に勉強しなおして、
いっしょに考えていくから
頑張ろうね』

次に会った時、彼女のかばんに分厚い薬の辞典みたいなのが入っていた。


あたしの次の夢が旦那の子供を産むことであることも、
子供が産めるくらい元気な体になることが目標であることも、彼女は知っている。

現代の医学では治らないといわれている結節性動脈周囲炎でも元気に過ごせる食事、
難しいことなんていらなくて、誰にでも簡単にできる食事療法があるはず。
その方法を探したい。

ずっとずっと言い続けている夢。
いまやあたしの目標。

指定席のチケット。
手が届くかな。



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