ｍｉｃｈｉ草。

DAY２

長い時間あそこで過ごす事がいかに楽しいかを知った私達は、昨日より少しだけ早起
きして一本早い電車で向かう。まだ8時台なのに勝田駅はすでにシャトルバスの長い
列。でももう動じないのだ。今日の私達は一味違う。駅のマツキヨでお茶を買って、
スムーズにシャトルの列へ進む。帰りの電車の切符もちゃんと日立駅で購入済。シャ
トルチケットも明日の分まで購入済。いい加減、知恵もつく。

ほぼ開場と同時に入場。まずはグラスに一直線でいつもの位置に基地を作成。早く行
けば空いてるかと思いきや、皆同じ気持ちらしくほとんどの人が開場と同時に入るの
であんま意味なし。皆楽しむ気マンマンだなぁ、なんて嬉しくなる。

仲間と連絡とりあいながら、それぞれ基地を整えた後は湊屋で集合。朝食会＆朝から
呑み会。昨日のメンツに加えてさとちゃん、スズキさんと出会い御挨拶。まぁ私とゆ
かりちゃん以外は馴染みのメンバーらしく、紹介などしてもらいつつ、そのうちおた
まも合流し、既に誰が誰の知り合いなのかかなり曖昧な状況のまま（挨拶だけして消
えてった数名もいるので一層混乱）次々運ばれてくる旨いもの（コレがホント何でも
旨い）をほおばりつつ、朝からすでに幸せいっぱい。「なんかもうずっとここでまっ
たりしてられる気がしてきた」とゆかりちゃん。ほんとだよ。

今日はレイクのゴーイングでスタート。
居心地がよすぎて気がつくとすでに兵庫さんの前説が始まっていた。
素生くんの登場と同時くらいにスタンディングゾーンに到着し、そのままライブにな
だれ込んだ。

晴れた空に、今日という祭りのはじまりに　ふさわしいキラキラした音をうけとめ
る。

体がもたん、と一端引いたアベとはっつぁんと別れて
そのままきょことゆかりちゃんと共に続けてレイクでフジファブリック。
なんか今年は雨降る気がしないな
ふと、いつもの日常のこの時間て何してんだっけ、と考えた
いつもの日常過ごしてるみんなのこと、考えた。

気温がどんどん上がっていた
フジファブリックの音はいつものように　そのひょろりとした風貌とは裏腹に獰猛で
変態だった。
夏の野外が、似合わない気がする人らほど、ミスマッチ故の妙をみせてくれたりする
よな
「陽炎」は今年も聴きたかった曲のひとつ

ところで今日は人身事故の影響で千葉方面の電車が止まったりしていた。
ゴーイングに間に合うはずだったやぶが、フジファブリックを終えた頃にやっと到
着。
こちらも冬の日のネズミー以来。
それにしてもみんな会った瞬間に距離を忘れる。
ふと見ると、歳の差も会ってからの時間も飛び越えてきょことゆかりちゃんが楽しそ
うに話したりしてる
音楽の力かな。それともフェスの力かな。多分どっちもで
誰とでも仲良くなるのがたやすい。
白玉寒天あんみつ（←激お気に入りのひとつ。）買ったら、まだあったかいゆで卵く
れた。
通りかかったびっちにまでもう一個。
「だってけんかになっちゃうでしょ」って
お店のオバちゃんやオジちゃんの茨城弁が耳にやさしい。

今年はじめてできた三つ目のステージ、SOUND　OF　FOREST。
去年まで閉鎖されてた空間に出現した、森のステージ。
奥まってはいるけど、なだらかな傾斜が自然のスロープを描く。見易い。
芝生に腰を降ろして、やぶとつらつら語ったりしながらsalyuを待った。

ここは木がたくさんあって、日陰も多く、私達はとても楽なのだけど、ステージの方
向が他と違うので多分ステージにたってるのが一番暑くて眩しいはず。日焼けした歌
姫は、それでもとても嬉しそうに楽しそうに姿をあらわした。クールガイの代表小林
武史氏も。
風にひらめく木々の葉を見ながら聴くsalyuの声は、森の精霊のようだったな。
言葉もなくして、私はただじっと耳を澄ましていた。ものすごい満ち足りた気分で、
かつ胸が痛むほどの唄だった。「toU」で涙が出た。
ポロッと　とかでなく、つつつ、と　でも結構な量の塩水が溢れた。

そのあとはグラスに戻った。何を見るかは全くの気分だ。どのステージだって気にな
るのやってんだ。選べというのに無理があるのだから。

影の伸びてきた基地にやぶを招いて、だらだらしながらウルフルズを見た。
あっちこっちからみんなが走ってきて踊り出す「バカサバイバー」に、一瞬駆けて行
きたい衝動にも駆られたが、それを爆笑しながら見てるのも幸せな気分だった。トー
タス兄さんは今日もめちゃくちゃにオトコマエでソウルフルだ。そのピタピタで艶の
ある赤いスパッツは何なんですか兄さん！この観衆相手に話すのがトイレについてっ
てのもどうなんですか兄さん！（しかも長い。）　でもって存在と表情だけでツボで
すチョッパー兄さん…。5回くらい、「あぁ…好き。」と呟いてしまった。「暴れだ
す」ではちょっと泣きそうだったな。寝転がってる私の横で、やぶはパンフに書きこ
みをしてくれてた。
フェスで会うのは4回目なのに、こんなにゆっくり一緒に過ごしたのは今年くらいだ
よね。なんか嬉しかった。

（ところで私のパンフには、落書き書きこみ寄せ書きを推奨致しております。フェス
ご参加の際はぜひ書きにいらして下さい。かしこ。）

私達は、みんなそれぞれが好きなように時間を過ごしていた。
バンアパとビークル見てた人もいたし、食事とりに行ってた人もいたし、私はという
とシートで寝転がってうつらうつらしたり、入って来たメールに答えたり、思いつく
まま落書きをしたりしてた。それぞれが何をしてたかも、それはあとから知った事
で、みんながどっかでそれぞれに楽しんでるのは判りきってたので、私も好き勝手に
楽しんでいた。あとからそれを聞いたひろりんが、新しい楽しみ方だね！って驚いた
んだけど、私はこれが当たり前だと思ってたから、逆に意外だったよ。一緒に見たい
のは一緒にみるし、でもしたいことがある人はそれをする。最初のフェスの時、私は
友達に（勝手に）気を使っていくつかのステージを諦めた。それでも充分楽しかった
けど、自分の選択ではずしたわけじゃないものは少し後悔したりもしたんだ。だから
同じ思いをしたくないしさせたくないし、そんで選んだ今のこのスタンスをとても楽
で自然だと思ってる。

ところで私はこの頃から無性にいてもたっても居られなくなっていた。
うまく表現できないのだけど、やたらそわそわして何も手につかない感じだった。
SINGER　SONGERが始まってるというのにどこか上の空でダメだった。（ごめんあっ
ちゃん。）岸田君がメガネしてたかしてないかさえ今思い出せないくらいだから相当
平常心でなかった。理由はひとつで、ミスチルのステージが近付いてきてたからだっ
た。

そのあまりの挙動不審さに、周りは「あぁミスチルが早くみたいんだね」的な誤解を
していた風だったけど、そんなのともちょっと違っていた。今の私はいわば小林武史
な訳よ、と意味不明の言葉を吐いて夕日に向かって溜息をついたりし、やけになって
はっつぁんのコーラを激振りして炭酸を飛ばしてやったりした。（←ものすごい迷惑
行為。）
好きなアーティストなんて他にいくらもいるんだけど、アウェイでやることに対して
こんなナーバスになってしまうあたり、私にはやっぱり凄くこの人達は特別なのか
な、と妙に自己分析したりもしていた。
つまり私は緊張していた。恐かった。別にミスチルみにきた訳じゃない人たちに、あ
の人達がどう勝負するのかが恐かった。ついさっきまでそれは楽しみだったのに、直
前になったら楽しさより緊張が上回ってた。見せつけてやれる気もしたし、すごいコ
ケる気もした。コケたとこで別に大して皆にはのこりゃしないてのも判ってるのに、
落ちつかなかった。好きなのに、信じきれないってどういうファン心理なんだろう。
いつまでたっても、自分の中でちゃんと折り合いつかないバンドなんだな、この人ら
は。ミスチルなんてたいしたことないよ、と言いながら、私は本当はいつも『私以外
の人にとっては』と心で思ってたし、ミスチルいいねと褒められると　そう？とクー
ルにいいながら内心やたら嬉しかったんだ。あまのじゃく。

そんなナーバススパイラルに落ちこんでいた私を、アベとはっつぁんが茶屋ヴィレッ
ジに連れ出した。少し前に誕生日を迎えた私に、チーズケーキを奢ってくれる。誕生
日には色んなケーキを頂いたが、特注のバースディケーキにも劣らぬ旨さのブルーベ
リーチーズケーキだった。会うのもたかだか3度目の私にこんなことしてくれてさ。
大好きだ、アベ。ウイスキーでほんのり茜色なはっつぁんに、照れ隠しに思わずまた
コーラを激振りした。（←ほんとにすごい迷惑。）そんな友情に救われて、私はやっ
と平常心になりつつあった。

とはいえ、やっぱり私はどっかでスタッフの一員のような気分でミスチルを見た。
みんなとはあえて少し離れて、知らない人達の反応が見える位置にいてしまった。勝
負が勝ちだったのかそうでなかったのか、選曲も出来もMCも含めて、きっと私が見た
ものはフラットではないから何も語らずに置こうと思う。褒めても批判しても、やっ
ぱりフラットじゃないから胸にしまおう。でも途中、モニターに映った健ちゃんの
ガッツポーズが、私の気持ちをほどいた。難しいこといいや、だって健ちゃんが笑っ
てるじゃん、ガッツポーズなんてしない人なのに、と思ったら、いつも寡黙でつまん
ないオヤジのくだらないしゃれを聞いたみたいに、無性に楽しくなった。
楽しんだもの勝ち。なんでアウェイだなんて思ったんだろう。桜井さんも私も、
ちょっと力入りすぎ。もっとゆるくていいんだよ。だってここはフェスだ。誰にとっ
ても、ホームなはずなんだ。
最後の「イノセントワールド」はほんとの意味で私は素直に聴けた。最後にこれを
持ってくるのが、やっぱり正解だと思った。これはきっと誰が解いてもマルのつく正
解。最後の答えがあってたから途中公式は色々でもかまわない。花火をみる時の私の
心はやたらすっきりしてた。

ステージが終わったらDJブースへ行く。これ常識。家に帰るまでがフェスです。まぁ
私には明日もあるのだけど。
明日はこれないアベとは今日でお別れ。思わず泣けてきて、周りを動揺させる。大丈
夫、また会えるよ、また会おうよ　と言い合いながら、そういう小さな約束が、出
会っては離れて行くのが当たり前の”道”を彩るのだなぁとしんみりした。
そだよね　
何度だって会おう。

疲れているであろうゆかりちゃんに気を使って、今日はちょっと早めに帰る？ときい
たけど
え？もう帰るの？との回答。…だよね。やっぱ無理だった。今日もクローズまで私達
は踊った。

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