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★みっちーずらいふ
野良猫問題 TNRについて
野良猫問題の最も人道的と言われる解決法、
TNR( Trap-Neuter-Return Program )について一考察です。
TNRとは。
これは、野良猫を「捕獲」して「避妊去勢手術」をして元いた場所に「返す」
という意味を持つ略語です。
地域猫と呼ばれる野良猫達には避妊去勢手術をして餌を与えるなどの世話をしています。
このTNRについて未熟ながら説明しつつ考えてみたいと思います。
~処分と避妊去勢手術~
野良猫が増え過ぎて社会問題となった時それを解決するには
どんな方法が考えられるでしょう。
こんな話があります。
ある地域で増えすぎた野良猫を捕獲して処分していたのですが、
一時的には減ったように見えても
その地域の野良猫は減らなかったのだそうです。
減らす事が本来の目的
であったはずなのに、
捕獲して「処分」する事では
野良猫の数には意味を持たない
のです。
何故か。
野良猫が排除された地域には
別の猫達がすぐ、新たな自分のテリトリーとして入ってきて繁殖をし
処分される前と同じ状況に戻るからです。
捕獲・処分の後に取られたのは、避妊去勢手術を行なうという方法でした。
一見不思議な気もしますがこれに効果があり、
社会問題として捕獲され「処分」されても減らなかった猫達が
「避妊去勢手術」を行ない、その生涯を見守ってあげるだけで
結果的に減少したのだそうです。
猫はテリトリー意識が強く、繁殖能力の高い生き物です。
捕獲して処分するよりも避妊去勢手術をした方が
問題の解決方法として効果があったのです。
このような経緯から、現在では野良猫問題への対策として
Trap-Neuter-Return Programが推奨されるようになっています。
倫理的に考えても、捕獲して処分されるよりも
避妊去勢手術を行う事の方が慈悲深い事は明白ですね。
~避妊去勢手術~
野良猫に対して避妊去勢手術を行なうという事はどんな事であるか。
外で暮らす野良猫の環境とはどういうものでしょう。
野良猫は飼い猫とは全く違った様子をみせます。
喧嘩などによる致死的な感染症や怪我。
病気や事故の危険に曝されながら食べ物を求めて動き、
過酷な環境の中で生活を送る。
このような状態で
命を削りながら
繁殖を繰り返しています。
野良猫にとっての避妊去勢手術は
野外での生活というただでさえ過酷な環境の中での
放浪や出産による負担を減らしてあげる事となります。
また同じ過酷な環境の中へと仔猫達が次々と生まれてくる事を防ぐのです。
TNRは最も人道的な野良猫問題の解決法であると言われながらも
この事について初めて聞いた時は、
私も「手術」に対し拒否感を感じた一人でした。
必然的に痛みを感じる事ですし、
それに対して可哀そうに思う事は当然の感情でしょう。
その他にもこの問題に対して考える時、
「人間に対しては避妊の目的で手術を行なわないのに、それを猫にしてもいいのか」
という壁にぶつかる事があります。
この事については
猫と人間は同じようなところも多いけれど
擬人化して考えるべきではないのかもしれません。
私自身は、猫は人間のようには繁殖行動と妊娠・出産との因果関係を理解していないと思っています。
例えば、「9週間前」にした悪戯を「今」発見したとして
その事を今叱ったとしてもその猫には
何を叱られているか理解する事は到底できないでしょう。
人間は周りからの情報などによってその未来を知る事ができますが、
猫は発情期に出会った相手と交配に至っても、本能に基づく行動であり
その9週間後に出産する事、させる事は考えていないのです。
~避妊去勢手術を受けていない猫とは~
避妊手術を受けていない場合
雌は生後半年もすれば妊娠が可能となります。
年に2~3回の発情期を迎え、相手さえいれば一度に数頭の仔猫を出産。
野良猫の場合、自然の成り行きとしてこれを何年も繰り返す事になります。
雌と比較して雄は
雌のように決まった発情期というものはないので雌の発情に感化されて
一年に何度でも繁殖行動を起こす事ができます。
同時に、去勢手術を受けていなければ
自分のテリトリーを広げるために危険を冒してまで行動範囲を広げます。
雌雄共に、発情期の繁殖に対する欲求は大変強いので、
身体的なストレスだけでなく精神的なストレスも非常に大きなものです。
飼っている猫が発情を迎えた事のある飼い主さんにはよく分かると思います。
この繁殖に関連する行動から病気や事故によって苦痛を受けたり
命を落としてしまう猫は相当数いるものと推定できます。
事実、事故や行方不明になる猫の多くは発情期の行動によると言われています。
~避妊去勢手術を受けた後の変化~
手術を受けた猫達にはどのような変化があるでしょうか。
繁殖ができないという事は、それに伴う行動の変化が見られます。
例えば行動範囲。
去勢手術を受けた雄は、繁殖行動が抑制されるわけですから
テリトリーへの意識が低くなります。
無理な放浪などによって交通事故に遭って大怪我をしたり、死んでしまったり
さらには別の猫との喧嘩による負傷や、それらに起因する感染症になる可能性なども低くなるのです。
繁殖行為・妊娠そのものが感染症や病気の原因になる事もあるのですから
当然それらによって病気に苦しむ可能性も低くなります。
雌は年に何回も数頭の仔猫を産み育てる事はなくなるので
体への負担の軽減は大きいでしょう。
実際に野良猫に対し避妊去勢手術を行なった場合
明らかに健康状態が改善されていく事は
TNRを実践している人間にはよく知られている事です。
室内飼いで大切に飼われている猫にも
避妊去勢手術を必ずすべきとは思っていませんが
野良猫達には上記のような理由から避妊去勢手術は必要だと思っています。
以前、野良猫に餌をあげていらっしゃるんだろうな、という方から
「餌をあげるのなら避妊去勢手術もするべき」という考え方に対し、
「餌をあげる事と、手術をする事とを同じには考えられない」
という意見をいただいた事がありました。
この「餌やり」と「手術」は関連づけて考えにくい事なのかもしれませんね。
~野良猫に餌だけを与えていくという事~
野良猫に餌を与えるという行為はその場限りの事でしょうか。
自分は一回限りのつもり、時々のつもりであったとしても
そのような人間が集まればそれは継続されているという事になります。
人間が餌を与え食餌に満たされている猫は繁殖しやすい環境にいるという事です。
ある野良猫に出会い餌を与えるとします。
目の前で餌を食べている時は一匹であったとしても
当然、その猫が生活の中で発情期を迎え交配をすれば仔猫を産むでしょう。
自分の世話をしている野良猫が仔猫を産んで
その仔猫達「家族」にもさらに、ずっと餌をあげていくとします。
餌を与えている「その瞬間」にはその家族の未来を考える事ができなくても
一頭の母猫が数匹の仔猫を産み、半年後にはまたそれぞれの仔猫が数匹ずつ。
そしてまた半年後には・・・それぞれの猫が親となりますよね。
(猫は授乳中であったとしても次の発情期を迎える事ができるので
仔猫が大人になる前に、母猫はまた次の仔猫を産む事さえできます。)
自分が出会った「ある猫」に餌を与え、
ずっと世話をするつもりであったとしても
発情のたびに次々と産まれてくる仔猫達全てにまで
その生涯、世話をし続ける事はできるでしょうか。
自分が餌を与えて繁殖しやすい環境を与えた猫達。
その猫達が野良猫の生活の成り行きとして
病気や事故で淘汰されていく事を「野良猫だから仕方がない」と
言えるでしょうか。
「可哀そうに思って餌を与える」という行動が、結果的に「可哀そうな猫達を増やす」事になるのです。
一匹の親となる猫にだけ餌を与え
一緒にいるその猫の家族達には何もしないという事は
猫好きにとって難しい事でしょう。
そして、いずれそのような行動は破綻すると思うのです。
もう一つ考え方を変えてみます。
もしその猫が自分の家の飼い猫だとして
年に2~3回「我が家で」数頭の仔猫を産むとしたらどうでしょう。
その仔猫達を全て育てたとしても、また仔猫が大人になり
その猫がまた仔猫を産みます。
数年を待たずに「我が家で」次々と猫達が増えていくのです。
前述のように、交配や繁殖行動、妊娠などによって
致死的な疾患に罹患してしまう事もあります。
そうなると、手術をしないまでも
「妊娠しないように」何らかの対策を講じるのではないでしょうか。
猫は発情期がくれば、本能のみに突き動かされて繁殖行動を取ります。
根本的に人間とは違う生き物である事への理解が必要です。
妊娠を避ける方法として、また不幸な猫達を増やさない方法として
野良猫にとって避妊去勢手術は、最も効果的な方法だと言えるのです。
たくさん生まれてたくさん死んでいくという悪循環を絶ってあげる事が
必要な事もあるのです。
終生餌をあげるつもりのお金を避妊去勢手術に使うという考え方もあるかと思います。
仔猫に責任が持てないのなら避妊去勢手術をすべきなのは
自分が世話をしている野良猫も飼い猫も同じなのです。
餌をあげている事を非難しているのではありません。
私自身も過去にそうであったように
飢えている事を可哀そうに思う善意の気持ちからである事は
充分に理解しているつもりです。
餌をあげる事と、避妊去勢手術行なう事を同時に考えてみましょうという提案です。
その事が結果として野良猫を救う事になるのだから。
食べ残しの後片付けや糞便の始末、
その他、その地域に住む住民に迷惑をかけない事なども
飼い猫に世話をするように、飼えないまでも世話をしている猫にも同じように必要で、責任が生じると思っています。
TNRは猫が好きな人のためだけなく、
猫が嫌いな人にとっても利点がある方法と言えます。
猫が嫌いな人にとっては
猫の数が増えない。
発情期の声による騒音がなくなる。
糞尿による悪臭などの被害が緩和される(スプレー行為がなくなるなど)
行動範囲が狭まる。
猫が好きな人にとっては
猫の数が増えない(=不幸な猫も増えない)。
健康状態が良くなる(病気の感染の危険性も減る)。
怪我や事故が減る。
性格が穏やかになる など。
家を持たない猫達を可哀そうには思っても、
可哀そうな猫達全てを我が家に迎えて幸せにしてあげる事は到底できません。
個人が不幸な猫達全てを助けてあげる事はできません。
それでも、私はあの猫達の幸せを心から願っています。
行政が野良猫を捕獲して処分するのはいまのところ日本では一般的ではありませんが
地域住民からの苦情などによっては行なわれる事があります。
とても残念な事です。
「処分しても根本的な解決にはならない」という事実が
過去の事例や猫の習性などによって分かっているのなら
処分という結果にならないための打開策を講じるべきではないでしょうか。
その方法として「TNR」について知って欲しいのです。
ご参考まで。
Trap-Neuter-Release programについて、私よりももっと分かりやすく実践的に書かれているページがたくさんあると思います。
Trap-Neuter-Release program
でそのまま検索すると英文のページがたくさん出てきますので
TNR 猫
もしくは
TNR 地域猫
などで探してみて下さい。
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